Evident LogoOlympus Logo

その機能、使っていますか? 〜位相差観察編〜

その機能、使っていますか? 〜位相差観察編〜

光軸と絞り調整に加えて、位相差観察や微分干渉観察では、それぞれの観察法に応じた調整が必要になってきます。
今回は、位相差観察法に焦点を当て、その仕組みと調整法をご紹介します。


位相差観察とは・・・

位相差観察は、無色透明のサンプルや生きている細胞などに適した観察方法です。
通常の明視野観察では、無染色のサンプルは無色透明のため、明暗や色の情報がなく目で見ることができません。一方、位相差観察では、サンプルを通過する照明光の「回折光」と「直進光」との光路の差(位相のずれ)を利用します。これにより、サンプルに明暗のコントラストが付くため透明なサンプルでも観察をすることができるのです。

PtK2細胞

PtK2細胞

それでは、この「位相差観察」とは、どのような仕組みなのでしょうか。
下の図1は、位相差観察時の顕微鏡光路を模式的に示したものです。位相差観察の光路には、「リングスリット」と「位相板」が配置されています。リングスリットは、サンプルより光源側にあり、照明光をリング状にする働きを持っています。一方、リング状の位相板は対物レンズに内蔵されており、サンプルを通過した光の位相をずらす働きを持ちます。

もし、光路上にサンプルがなかった場合、全ての光が位相板を通るため位相のずれは発生しないため、観察視野は全体が均一な明るさで見えます(図1 A)。

しかし、光路上にサンプルがある場合は、「回折」という現象が起こります。回折によって、光がサンプルを通過する際に、「そのまま直進する光(=直進光 0次回折光)」と、「進行方向が変わった光(=回折光 1次回折光)」の2本に分かれます(図1 B)。このとき回折光(1次回折光)は直進光(0次回折光)に比べ、1/4波長だけ遅れます。

図1 位相差観察の原理

図1 位相差観察の原理

位相差観察のポイントは、位相板によって直進光の位相を1/4波長進めたり、遅らせたり、操作することです。これにより、直進光と回折光の位相の差を1/2または0になるようにし、この干渉によって、通常では見えない位相の差を、光の明暗として観察できるようにするのです。

下の図を見てみましょう。
位相の差が1/2のときには、直進光と回折光は弱め合い、サンプルが暗く、背景が明るくなります。これをポジティブコントラストまたはダークコントラストと呼びます(図2)。
一方、位相の差が0のときは、直進光と回折光は強め合い、サンプルが明るく、背景が暗くなります。これをネガティブコントラストまたはブライトコントラストと呼びます(図3)。


位相の差が1/2のとき

図2 ポジティブコントラストまたはダークコントラスト(逆位相)

図2 ポジティブコントラストまたはダークコントラスト(逆位相)
(明るい背景の中でサンプルが暗く見えるもの)


位相の差が0のとき

図3 ネガティブコントラストまたはブライトコントラスト(同位相)

図3 ネガティブコントラストまたはブライトコントラスト(同位相)
(暗い背景の中でサンプルが明るく見えるもの)

このように、位相差観察では「直進光だけ位相板を通る」ようにするために、位相板を内蔵した専用の対物レンズと、リングスリットの入った専用のコンデンサが必要です。位相差観察を行う際は、これらの調整がきちんとできていないと正確な観察ができません。それではこれから調整法の詳細を見ていきましょう。


位相差観察での調整:リングスリットの心出し(2つのリングの中心合わせ)

位相差観察では、「リングスリット」と「位相板」の軸を揃え、直進光がきちんと位相板を通るように調整する「心出し」が重要となります。それでは、実際に位相差顕微鏡を使う際の「心出し」の手順を見てみましょう。


位相差顕微鏡の各部の名称

位相差顕微鏡の各部の名称


リングスリットの心出し方法

(1)使用する対物レンズ(位相差観察用)を光路に入れます。

(2)次に、位相差観察用コンデンサ(以下、位相差コンデンサと呼ぶ)の「Ph」表示を、先ほど光路に入れた対物レンズの「Ph」表示と同じに合わせます。
例:対物レンズがPh1ならば、位相差コンデンサもPh1の数字が表示窓に表われるようにコンデンサターレットを回して合わせます。

コンデンサターレットのPh合わせ

(3)サンプルをセットし、だいたいのピントを合わせます。

(4)どちらか片方の接眼レンズを外し、「心出し望遠鏡(CT)」を差し込みます。

心出し望遠鏡の差し込み

(5)この「心出し望遠鏡」の上部には、ピント合わせ用のフォーカスつまみがついています。
そこを回転させて、「心出し望遠鏡」を覗きながら、視野内の明るい輪(リングスリット)と暗い輪(位相板:対物レンズのフェーズプレート)が、はっきり見えるようにピントを合わせます。

心出し望遠鏡でのピント合わせ

(6)続いて、位相差コンデンサの「リングスリット心出しつまみ(2コ)※」を押込みながらゆっくり回し、「心出し望遠鏡」の明るい輪が暗い輪と同心円上に重なるように調節します。
うまく重なれば、リングスリットを通して見える光が薄暗くなるはずです。この作業で、心出しが完了します。

リングスリット心出しつまみでの調節


【※ワンポイント!】

リングスリット心出しつまみは、コンデンサの後方についています。前方に付いている2本のつまみはコンデンサ心出しつまみなので、間違えないように注意しましょう。

位相差コンデンサ

(7)他の対物レンズも同様に、それぞれのリングスリットで心出しを行います(上記(1)~(3)、(5)、(6))。
なお、対物レンズが10×、20×共にPh1表示のときは、10×で行い、20×での心出しは不要です。ただし、写真撮影などでは対物レンズごとに心出しを行ってください。

(8)最後に、「心出し望遠鏡」を外し、接眼レンズに交換します。
あとは、使用する対物レンズを光路に入れ、対物レンズのPh表示と位相差コンデンサのPh表示を合わせれば、位相差観察が可能になります。

リングスリットの心出し方法は以上です。


注意点

  1. リングスリットの心出しが不十分だと、位相板からリングスリットの光が漏れ、直進光の位相を変える効果が薄れてしまい、コントラストが悪くなる(位相差効果がなくなるか、小さくなる)

  2. 心出し調整後は、心出し望遠鏡を外し、接眼レンズに付け直す

  3. プレパラートの状態によっては、サンプルを交換する度に、リングスリットの心出し調整が必要な場合がある


解説

  • 回折とは
    「回折」は、波が遮蔽物のかげに回り込む現象である。光を波と考えれば、光の進行方向に遮蔽物があると、光の一部は直進せず、遮蔽物に回り込んで進むことを示している。
    回折を理解するには、遮蔽物を防波堤、光波を防波堤に打ち寄せる波に置換えるとわかりやすい。波は、防波堤全体に均一に打ち寄せるが、防波堤の端では、防波堤の陰に波が回り込んでいる現象が見られるだろう。
    顕微鏡では、「照明光が標本(遮蔽物)によって回折する」という現象になる。スリットが狭いほど回折は大きく、広ければ小さく回折する。より広い範囲の回折光が生じれば、その光からより多くの情報を得る可能性があるといえる。
     
  • 干渉とは
    「干渉」は、2つの波が重なることにより、合成波が大きくなったり、小さくなったりする現象である。光においては、2つの光が重なるとき、光の山と山が重なって強め合い、明るくなる。光の山と谷が重なると波を打ち消し合い暗くなる。また、波長の違いによって色付きが生じる。
    顕微鏡では位相差、微分干渉、偏光などの観察で、無染色のサンプルの像に明暗や色のコントラストを付けるために、この性質を利用している。

このページはお住まいの地域ではご覧いただくことはできません。

このページはお住まいの地域ではご覧いただくことはできません。