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アプリケーション

CM20を用いた培養細胞のアッセイ手法:スクラッチアッセイ


実験の概要

スクラッチアッセイはスクラッチ領域への細胞の遊走 (移動) や増殖を評価する手法であり、創傷治癒やがん研究において頻繁に行われる試験です。創傷治癒分野では、創傷部への細胞遊走を促進する薬剤の評価に用いられ、がん関連分野ではがん細胞の転移や浸潤を抑制する薬剤の評価に用いられます。このアッセイを行う上でもっともも重要かつ困難な点が、適切な遊走時間を設定することです。遊走時間が短すぎると薬剤の効果がはっきりせず、反対に遊走時間が長すぎるとスクラッチ領域が埋まってしまい、コントロールとの差がみられなくなります。また、従来は遊走前と遊走後の細胞写真を用いて、画像解析ソフトで別途遊走度を定量的なデータにする必要がありました。

本アプリケーションノートでは、CM20を用いてヒト乳がん細胞株MCF7細胞に対する抗がん剤Sorafenibの細胞遊走抑制効果を解析した事例をご紹介します。

実験の方法・条件

培地は10% FBS, 1%Penicillin-Streptomycin添加RPMI-1640を用い、Ibidi Culture Insert 2 well (ibidi, Cat. No. ib80209) を設置した24ウェルマルチウェルプレート (Sumitomo Bakelite, Cat. No. MS-80240) に、MCF7を10.5万細胞/70 μL/Insert chamberで播種しました。播種24時間後にIbidi Culture Insert 2 wellを除去してスクラッチを作成し、培地で3回洗浄した後、Sorafenib (10あるいは30 μM) を添加した培地に交換して処理をおこないました。コントールとしてSorafenib非処理群を設定しました。CM20を用いて、ウェル中央部の1視野をオートフォーカスで1時間おきに最長94時間撮影し、Confluencyを定量することで細胞遊走度を評価しました。

結果

図1 スクラッチアッセイ細胞像

上段:control、中央:Sorafenib 10 μM、下段:Sorafenib 30 μM。マスク領域はCM20で自動的に検出したconfluent領域

コントロールでは処理時間に比例してスクラッチ領域に細胞が遊走し、48時間処理の時点でスクラッチのほとんどの領域へ細胞が遊走しました。Sorafenib処理群ではSorafenib濃度に比例して細胞遊走が抑制され、48時間の段階ではスクラッチが埋まっていないことがわかります。

図2 スクラッチアッセイconfluency定量

上段:control、中央:Sorafenib 10 μM、下段:Sorafenib 30μM

CM20でのコンフルエンシー定量により、細胞観察結果とほぼ一致した結果が得られました。Controlでは48時間の時点でほぼ100% confluentであるのに対し、Sorafenib処理群ではSorafenib濃度に比例してconfluencyが低いことがわかります。

図3 スクラッチアッセイ細胞遊走度定量結果

Bar = Mean±SE, n=3

表1 スクラッチアッセイ細胞遊走度定量結果

CM20で評価することのメリット

CM20を用いたスクラッチアッセイにより、抗がん剤による細胞遊走抑制効果を明瞭に検出することができました。

スクラッチアッセイでは遊走時間の設定が重要です。もっとも細胞遊走が早い条件 (今回の解析ではControl) でスクラッチがちょうど埋まる時間で評価できると、薬剤の効果を明瞭に検出することができます。従来は、数時間おきに細胞を観察して遊走度を確認する必要がありましたが、CM20では自動で経時的に撮影することが可能です。また、オーバーナイトのインキュベート中にスクラッチが埋まってしまうといった心配もなく、あとから適切な時間で解析することが可能であり、作業効率が大きく改善されると期待できます。 オートフォーカスでの撮影も簡便かつ明瞭で、confluencyも自動で算出されているのでデータをすぐに取得することができました。

本アプリノートにご協力賜りました先生

株式会社エーセル 研究主幹 博士(農学)

山口 貴大 先生

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