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アプリケーション

スフェロイドのハイスループット三次元解析のための画像取得の最適化


要約

このアプリケーションノートでは、がんスフェロイドの3次元解析に必要な画質を備えた画像を高速で取得するための共焦点顕微鏡の最適な設定を決定しました。InSphero社の3D InSightマイクロティッシュのプレートを使用して、ハイスループットな薬効評価を実施しました。

・薬剤評価のワークフロー

薬剤評価のワークフロー

・イメージング条件の最適化

イメージング条件の最適化
 

利点

  • NoviSightによる3次元解析に必要な画質を備えた画像を高速で取得するために、顕微鏡FV3000RSの取得設定を最適化しました。 
  • NoviSightソフトウェアは、高いS/N比で核シグナルに基づいて認識された対象物からのシグナル情報を利用するので、低画質の対象物を解析することができます。 
     

序論

3次元がんスフェロイドを使用して薬剤の性能を評価することは重要です。なぜなら、スフェロイドはがんの複雑な生体内微小環境を再現するからです。これにより、研究者は、腫瘍の本来の環境により近い条件のもとで、薬剤の有効性を評価することができます。

しかし、多数のサンプルの三次元画像を取得するには多大な時間がかかることもあります。このワークフローを迅速化するため、我々は、NoviSightによる3次元解析に必要な画質を備えた高速画像を取得するためのFLUOVIEW共焦点顕微鏡FV3000RSの最適な画像取得設定を決定しました。

レンズ補正環、深さ方向のステップサイズ、平均化回数などの取得条件を最適化することによって、Akura 384ウェルプレート(InSphero社)に入れた3D InSightマイクロティッシュのサンプル252個の三次元画像を56分23秒で取得しました。NoviSightソフトウェアを使用することにより、共焦点顕微鏡FV3000RSが高速で取得した多数のサンプル画像を正確に解析することができました。

方法

サンプルの作製

Akura 384ウェルプレートに入れた3D InSight tumor microtissueはInSphero社から提供されました。緑色蛍光タンパク質でタグ付けした細胞株HCT-116(ヒト大腸がん)をNIH3T3-RFP線維芽細胞と共に凝集させました。個々の化合物に関して、7日間の処理(0日目の投与と4日目の再投与)を行いました。図1にプレートのレイアウトと試験化合物の一覧を示します。薬剤処理後に、1X リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液でサンプルを3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液でサンプルを4°C(39.2°F)で一晩固定しました。続いて、サンプルを1X PBS溶液で洗浄し、0.1% Triton X-100溶液に入れた1 μMのTO-PRO-3(Thermo Fisher Scientific)で染色し、SCALEVIEW-S4透明化試薬を添加して37°C(98.6°F)で一晩処理しました。

Fig. 1 Plate layout and list of test compounds

図1 プレートのレイアウトと試験化合物の一覧

イメージングと解析

本実験では、RFPとTO-PRO-3のクロストークを防ぐため、(通常の2倍の時間を要する)連続モードで画像を取得しました。
解析では、すべての細胞(TO-PRO-3)からの蛍光シグナルによって、核を認識することができました。GFPと赤色蛍光タンパク質(RFP)のシグナルに基づいて、すべての細胞がHCT-116細胞またはNIH3T3細胞に分類されました。
 

結果

対物レンズ補正環の最適化

最初に、高解像度で高コントラストの3次元画像を取得するために、対物レンズの補正環(CC)を最適化しました。イメージングには、長作動距離と高開口数(NA)を備えたUCPLFLN20X対物レンズを使用しました。ダイヤルを下限から少しずつ動かすことによって最適なコントラストが得られる位置に調整して、CC=0.17が最適な状態であることが分かりました(図2)。このため、CCを0.17に調整して、UCPLFLN20X対物レンズを使ってAkura 384ウェルプレートを観察しました。

CC: lower end

CC: 0

CC: 0.17

CC: 1

図2 対物レンズ補正環の最適化(スケールバー=100 μm)

Z軸ステップサイズの最適化

次に、Z軸ステップサイズが対象物の認識やNoviSightソフトウェアでの解析に及ぼす影響について調べました。その結果は、ステップサイズに比例して認識精度が低下することを示しています(図3)。対物レンズのZ軸分解能の半分である最小ステップサイズ(1.28 μm)を基準として比較しました。分類後のそれぞれの細胞数から、最小ステップサイズ(1.28 μm)と3 μmの間に有意差はないことが分かりました(スチューデントのt検定)。核の大きさは約10 μmであるため、このステップサイズを使用して核1個につき約3枚の画像を取得することができます。

図3 ステップサイズの最適化

図3 ステップサイズの最適化

アベレージング回数の最適化(レゾナントスキャンモード)

顕微鏡FV3000RSのレゾナントスキャンの画質は、平均化回数によって決まります。我々は、NoviSightによる解析に必要な画質を得るために、平均化回数を最適化しました。NoviSightソフトウェアは蛍光シグナルを利用して解析の対象物を認識するので、必ずしも高解像度画像を使う必要はありません。本実験では、対象物を認識するためにS/N比が高い核を使用します。そのため、他のチャンネル(GFP/RFP)の強度情報を得るだけで十分です。平均化処理が行われたレゾナントスキャン画像とガルバノスキャン画像の認識精度を比較したところ、平均化処理が行われなかった場合でも、認識精度は対照とほぼ同じでした(スチューデントのt検定)(図4)。本実験では、平均化処理が行われなくても画質はNoviSightによる解析に十分であることを証明しました。

図4 アベレージング回数の最適化

図4 平均化回数の最適化

最適化された条件下でのイメージング

上記の条件を最適化することにより(図5A)、Akura 384ウェルプレート(InSphero社)に入れた3D Insightマイクロティッシュのサンプル252個を56分23秒で取得することができました(図5B)。その結果は、各薬剤が用量反応的にスフェロイドの成長を阻害することを示しています。また、高濃度のスニチニブ、つまり、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を阻害する分子標的薬で処理すると、緑色蛍光タンパク質(GFP)の強度が大幅に低下しました。これは、スニチニブががん細胞(GFPでタグ付けしたHCT-116)のみに作用していることを示しています。

(A)

最適化された設定

最適条件

対物レンズ補正環

CC: 0.17

ステップサイズ

3.0 µm

アベレージング回数(レゾナントスキャン)

なし(1)

(B)

図5 最適な条件とイメージングの結果(スケールバー=100 μm)

図5 最適な条件とイメージングの結果(スケールバー=100 μm)

解析

細胞の検出後に(図6A)、NoviSightソフトウェアのヒートマップを使用して個々のスフェロイド内の細胞の総数を簡単に確認することができます(図6B)。分類後に、相対細胞数の割合(%)が算出されてプロットされました(図6C)。その解析結果から、スニチニブががん細胞の増殖に対して作用したことが分かりました(HCT-116、IC50=1.46 μM)。最適化された条件下でFV3000RSシステムを使用して高速イメージングを行うことにより、3次元薬剤評価を十分に実施することができました。

(A)

図6A

(B)

図6B

(C)
図6C

図6 3次元的な薬効評価

結論

ハイスループットイメージングのために最適化された条件下で共焦点顕微鏡FV3000RSを使用して、Akura 384ウェルプレート(InSphero社)に入れた3D Insightマイクロティッシュのサンプル252個のイメージングを行いました。本研究は、イメージングを1時間以内で完了できることと、NoviSightによる3次元解析を実施できることを実証しています。色素とサンプルサイズの組み合わせを調整することによって、スループットがさらに高まる可能性があります。

著者

Hiroya Ishihara, Biological Evaluation Technology 2, Research and Development
Takashi Sugiyama, Biological Evaluation Technology 2, Research and Development
 

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3次元細胞解析ソフトウェア

NoviSight

NoviSight 3D細胞解析ソフトウェアは、マイクロプレートベースの実験において、スフェロイドや3Dオブジェクトの統計データを提供します。3Dで細胞活性を定量化でき、まれな細胞事象の取得が容易になり、正確な細胞数の取得、検出感度の向上が実現します。NoviSightソフトウェアで処理可能なイメージング法は多岐にわたり、ポイントスキャン共焦点イメージング、2光子イメージング、スピニングディスク共焦点イメージング、超解像ライブセルイメージングなどがあります。

  • 構造体全体から細胞内機能まで高速に3D画像識別
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