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アプリケーション

光受容体(オプシン5)活性化の発光Ca2+イメージング(蛍光Ca2+イメージングとの比較)


光受容体に影響を与えずに、細胞内Ca2+動態のイメージングが可能

(本アプリケーションノートは旧・発光イメージングシステムLV200で取得したものです)
オプシンタンパク質は、外界からの光刺激を細胞内のシグナル伝達分子に伝える膜タンパク質であり、視覚系だけでなく、非視覚系においても光刺激に対する細胞応答に関わっていることがわかってきています。オプシンファミリーの中でオプシン5(OPN5)のホモログは、鳥類やヒトを含む哺乳類にも発現がみられ、鳥類での局在や生理機能などから非視覚系の光シグナル伝達を担っていると考えられています。また、ウズラのOPN5遺伝子をアフリカツメガエル卵細胞に発現させて光刺激を行うと、細胞内Ca2+濃度変化に応じた電気信号を得られることが示されています。一方、哺乳類のOPN5遺伝子については細胞内cAMP濃度の低下を引き起こすことが示されているが、Ca2+についてはいまだ報告がありません。そこで、まずは市販の蛍光Ca2+指示薬(Fluo-4)を用いて、OPN5遺伝子を強制発現させたHEK293細胞に光刺激を行った時のCa2+応答を観察しました。Fluo-4の蛍光像を得るため、470-490nmのバンドパスフィルターを通した励起光を減光フィルター(ND6)で減光して照射し、タイムラプスイメージングを行ったところ、一回目の励起により一過性のCa2+動員に対応する蛍光強度の変化が見られ、その後は蛍光強度が変化しなくなった(図1a)。蛍光強度が一定になったところで30秒間の光刺激を行ったが、Fluo-4の蛍光強度に変化は見られませんでした。したがって、蛍光観察を行う際の励起光により、OPN5遺伝子の光刺激によるCa2+動員に影響を及ぼすことが示唆されました。

次に、吸収波長の極大が549nmである蛍光Ca2+指示薬(Calcium Orange)を用いて、同様に光刺激による細胞のCa2+応答を観察しました。タイムラプスイメージングの結果、Calcium Orangeの蛍光観察のための励起光(520-550nmのバンドパスフィルターを通した光)でのCa2+動員は見られず、光刺激によるCalcium Orangeの蛍光強度の上昇が観察できたが、刺激に用いた光の強度(30mW/mm2)は、これまでに報告されているOPN5光受容体の感度よりも高いものであった(図1b)。また、この蛍光強度の上昇は観察時間中ずっと続いていた(10分以上)。

最後に、インジケータの検出に励起光を必要としない発光Ca2+インジケータを用いて細胞内のCa2+動態を観察しました。その結果、OPN5を発現するHEK293細胞を弱い光(0.1μW/mm2)で刺激した後に、一過性のCa2+応答が見られた(図2)。このときの光刺激の強度は、これまでに報告されているのと同程度であった。また、間欠的に数回の光刺激を与えたときにおいても、一過性のCa2+応答をすることが明らかとなりました。これらの結果より、OPN5遺伝子の活性化に伴って細胞内のCa2+動員がおこり、そのCa2+動員は蛍光観察時の励起光によって影響されることが示されました。

発光イメージングシステムLV200を用いたイメージングにより、光受容体を発現する細胞へ刺激光以外の光の影響を最小限にとどめて、細胞内シグナル分子の動態を検出することができました。

(a)

(a) Fluo-4

(a) Fluo-4

(b)

(b) Calcium Orange

(b) Calcium Orange

図1.蛍光Ca2+指示薬を用いたOPN5発現HEK293細胞の光刺激によるCa2+動態観察

(a)
Fluo-4を用いたCa2+のタイムラプスイメージングを行ったところ、1回目の励起により一過性の細胞内Ca2+濃度が上昇してFluo-4の蛍光強度が高くなっていく様子が観察されました。画像は1枚目の取り込み画像(image#1)と2枚目の取り込み画像(image#2)を示しています。下のトレースは、個々の細胞での蛍光強度変化をプロットしたものです。蛍光強度が一定になったところで、30秒の光刺激(425-445nmのバンドパスフィルターを通した光; トレース内の矢印)を行ったが、蛍光強度に変化は見られませんでした。

(b)
Calcium Orangeを用いたタイムラプスイメージングによる細胞内Ca2+の動態。画像は、光刺激前の蛍光画像(baseline)と光刺激したときの蛍光画像(stimulation)を示しています。下のトレースは、個々の細胞での蛍光強度変化をプロットしたものです。励起光によるCa2+濃度変化は見られず、光刺激(425-445nmのバンドパスフィルターを通した光; トレース内の矢印)を行ったところ、30mWの光強度で持続性のCa2+動員が観察されました。

図2.発光Ca2+インジケータによるOPN5発現HEK293細胞の光刺激によるCa2+動態観察

図2.発光Ca2+インジケータによるOPN5発現HEK293細胞の光刺激によるCa2+動態観察

図2.発光Ca2+インジケータによるOPN5発現HEK293細胞の光刺激によるCa2+動態観察

発光Ca2+インジケータを導入したOPN5発現HEK293細胞において、11-cis-レチナール(20μM)を一晩作用させた後にLV-200を用いて発光観察を行いました。画像は、光刺激前の発光画像(baseline)と光刺激したときの発光画像(stimulation)を示しています。下のトレースは、個々の細胞での発光強度変化をプロットしたものです。光刺激(425-445nmのバンドパスフィルターを通した光; トレース内の矢印)を行ったところ、0.1μW(灰色の矢印)または0.2μW(黒の矢印)の光強度で細胞へ光刺激した後に、一過性の細胞内Ca2+濃度変動を観察することができました。
 

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