生殖補助技術を用いた研究をトータルサポート

オリンパスは検卵や卵子凍結、融解時の観察に使用する実体顕微鏡から、精子観察を行う正立顕微鏡、顕微授精・レーザーを用いた胚のマニピュレーションやその研究をサポートする倒立顕微鏡に至るまで、さまざまな顕微鏡を提供し各工程に貢献しています。

精子観察

精子の観察は、正立顕微鏡下で位相差観察を用い、サンプルに明暗のコントラストをつけて行います。精子の運動性を確認する際、従来の顕微鏡では光源の明るさが足りず、クリアに観えないという課題がありました。オリンパスのシステム生物顕微鏡BX53は、独自の発熱の少ない高輝度LEDを採用しており、精子へのダメージを抑えてクリアな観察を実現します。さらに長時間に及ぶ観察時の疲労を軽減するエルゴノミック鏡筒、より明確な精子観察を行うためのネガティブ位相差対物レンズ^※1が、快適な顕微鏡操作を可能にします。
エントリーモデルの生物顕微鏡CX43は、低ステージ設計で、机に手をついたまま顕微鏡観察が可能なため、作業時の疲労を軽減できます。フットプリントの小さいコンパクトモデルで、ラボ内の省スペース化にも貢献します。

※1 受注生産品です

加藤レディスクリニックからのコメント

BX53は主に精子のカウントや形態観察に使用しています。SMAS(sperm motility analysis system)による位相差観察で精子のカウントを行いますが、オリンパスの正立顕微鏡は光量に余裕があり、計測に支障を来たしません。精子の形態評価は、当院独自の手法により未染色標本を作製し、ドライ600倍で観察を行っています。精子の輪郭が鮮明であり、頭部の濃淡などコントラスト調整により染色標本と同程度の観察および評価が出来ています。さらに微分干渉観察を組み入れることで精子観察における鮮明さが増し、精子形態判定精度の向上が望めます。

本アプリケーションノートの研究内容に関してコメントをいただいた先生：
加藤レディスクリニック　内山　一男先生
 

ICSI/IMSI

ICSI実施時は、卵細胞の膜の状態を観察します。また紡錘体の発現を観察することで成熟卵細胞となる減数分裂MII期 であることを確認し、紡錘体の位置を避けてICSIを実施すると効果的です。倒立顕微鏡IX3シリーズでは、オリンパス独自のレリーフコントラスト装置を用いて、卵細胞の膜の状態を立体的に観察することができます。さらに独自の偏光技術により、紡錘体の発現を観察することも可能です。

これまでは、作業時に観察法や対物レンズの切り替えが多数発生するため、顕微鏡操作の煩雑さが作業者に不安や疲労感をもたらしていました。IX73 SL-ICSIはセミ電動機能とハンドスイッチを組み合わせることにより、ICSIにおける各作業にあった観察方法、倍率の切り替え作業をボタン操作で瞬時に行えます。短時間での作業が求められるICSIの顕微鏡操作のステップの省略につながり、作業時間を短縮することができるため、より繊細な作業を必要とするマニピュレーターの操作に集中できます。また、ボタン操作では顕微鏡ステージの上下に位置するコンデンサーや対物レンズに直接触って操作する必要がないので、ピペットやディッシュに誤って触れる心配がありません。

さらに、形態的特徴により選別された精子を卵細胞へ注入するIMSIでは、精子頭部の空胞の形・大きさ・数を高倍率で確認しますが、IX3シリーズでの微分干渉観察を用いることにより、この作業もサポートすることができます。

加藤レディスクリニックからのコメント

強拡大微分干渉観察によりICSIに用いる精子を形態学的に選別する（IMSI）際、従来の200倍または400倍での観察に比べて正常形態精子選定の確率が上がりました。正常形態精子を選ぶことはDNA断片化率の低下をもたらし流産率の低下など安全性にも寄与すると示唆されます。偏光観察による紡錘体の可視化はICSIのタイミングを計るうえで有効です。第1極体放出卵子であっても紡錘体不可視の状態でICSIを行ってもほとんど受精しませんが、紡錘体の可視化システムを用いたICSIにより受精率は有意に上昇しました。オリンパス倒立顕微鏡IX83は微分干渉・偏光・レリーフコントラスト、IX73セミ電動モデルは偏光・レリーフコントラストによる一連の観察をボタン操作１つでシームレスに行うことができ、作業者にとって使いやすい装置となっています。
 

レーザーを用いた胚のマニピュレーション

受精後のプロセスとして、近年アシステッドハッチングや着床前胚染色体異数性検査（PGT-A）を行うなど、胚を詳細に検査する用途が増加しています。オリンパスIX3シリーズは、レーザーシステムと組み合わせ^※3、クリアな観えと快適な操作性を実現します。

※2 製造元：Cooper Surgical Inc.
※3 顕微鏡との組み合わせや構成は各メーカーにより異なります。  

画像提供元：Cooper Surgical Inc.
 

卵子・胚の経過観察

検卵作業、卵子成熟度・胚グレード確認、卵子凍結融解時の観察は実体顕微鏡下で行いますが、卵子が見えづらいために見つける作業や成熟度の判断作業に時間がかかり、長時間の観察は作業者に多くの疲労をもたらします。

オリンパスの実体顕微鏡SZXシリーズは、アイポイントが調整可能なエルゴノミック設計に加え、眼疲労を軽減するための輻輳角付き鏡筒を採用しています。また本体と接眼レンズの取付位置が通常より長く、クリーンベンチ組み込みに適した設計の鏡筒など、エルゴノミックアイテムを多数ご用意しております。

さらに、透過照明架台SZX2-ILLTQ/Sは適切なコントラストと低倍率から高倍率まで均一な照明を提供可能なため、卵子・胚の状態を素早く確認することができ、作業効率の改善につながります。また、サンプルの種類や観察者の好みに応じて、適切な観察方法やコントラストを9種類のカートリッジからお選びいただけます。オリンパスの実体顕微鏡SZXシリーズは快適な顕微鏡作業空間を提供し、作業者の疲労軽減・作業効率改善に貢献します。

加藤レディスクリニックからのコメント

実体顕微鏡は検卵、卵子裸化処理、卵子,胚の観察、凍結融解など広い用途で用いられ、作業目的や状況により明視野、偏射および暗視野照明観察を使い分けています。0.7から11.5倍の観察領域すべてで焦点が合った状態のまま素早い切り換えが可能で、作業全体において効率改善に繋がりました。また、斜光切り替えが３段階でしかも微調整が可能なことからコントラストを最適化し胚や卵子の観察が従来に比べし易くなりました。0.8倍の対物レンズを使用し、エルゴノミック三眼鏡筒（SZX2-LTTR）に中間倍率1.25倍を組み合わせることで、対物レンズ下でのワーキングスペースの広さを確保できます。それにより検卵や胚の凍結融解作業など卵子や胚を扱う作業効率が向上しました。また、光源がLEDを使用しているため光源の劣化が起こり難く、メンテナンスフリーな点も高評価のポイントです。