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1年間のライフサイエンス研究から得られた5つの人工知能に関する教訓

著者  -
ディープラーニング顕微鏡観察

昨年、ディープニューラルネットワークに基づいたオリンパスの画像解析技術のTruAIを、cellSens イメージングソフトウェアイメージングソフトウェアcellSensやscanR(日本未発売)に搭載しました。人工知能(AI)を用いたライフサイエンス研究から得られた知見をここで共有できることをうれしく思います。

deep learning workshop for cellular image analysis

2020年1月に欧州分子生物学研究所(EMBL)で開催されたオリンパス scanRディープラーニングユーザー向けワークショップの模様

研究プロジェクト成功の鍵となったAIに関する教訓を以下に紹介します。
 

1. あなたが見えるものは、TruAI技術でも見ることができます

解析における課題の中でなにがTruAI技術によって解決でき、なにができないかを確実に判断するためにはある程度の経験が必要ですが、その経験則は単純なものです。研究の専門家がある画像の関心部分を見つけることができるなら、TruAI技術でもそれを見つけることができます。

これは、すべての細胞や核、又はある種の組織を識別するような単純な作業だけでなく、異なる細胞の区別や、細胞状態、組織の種類を見分けるなどいった、より高度な作業にも当てはまります。

条件さえ揃えば、TruAI技術は人間の目では識別できないセグメンテーションや検出を行うことも可能です。

deep learning image segmentation

TruAIによって可能な解析モデル
 

2. イメージングの単純な課題に必要なのは単純なソリューションです

TruAI技術で対応することが比較的容易な画像解析作業では、簡単な準備をするだけで済みます。

例として、同一の顕微鏡で撮影された明視野画像の分裂中の細胞の検出が挙げられます。この場合、サンプルの調整が標準化されているため、画像が品質面で大きく異なることはありません。

また、クリアに見える蛍光画像のほとんどは、数枚の画像(すなわち、視野のいくつか)に単純な手作業による標識を行うだけです。このことからも、TruAIに十分な学習画像を提供し、様々な画像に即座に適用できるよう学習させることには大きな価値があります。

オリンパスのAIソフトウェアは、単純で直感的なユーザーインターフェースを提供し、教師画像に対する効率的な標識が容易となるため、学習が素早く開始できます。学習用の新規の解析は数分で設定が可能です。

標準化やデータの増強のような内部の最適化により、提供された例を学習で最適に利用することを確実にできます。その結果、標識のための労力が最小限で済む強固なAIモデルが実現されます

deep learning for cellular image analysis

TruAI技術を用いた分裂中の細胞の予測(緑)

こちらのアプリケーションノートでは、「TruAI」ディープラーニングを活用した高効率・高精度な画像解析に、関連する例を紹介しています。
 

3.イメージングの難しい課題には、高度なソリューションが必要です

顕微鏡の世界は複雑であり、顕微鏡画像も同じです。培養段階、やサンプルの由来、担体はサンプルごとに異なり、さらに異なる顕微鏡で撮影された画像は、その特徴が大幅に異なる可能性があります。

例えば、背景、コントラスト、密集度、標識、明るさの違いは、定量的解析に課題を生じさせます。

画像データにおけるこれらの違いに対し、TruAIが正確な解析を行うためのソリューション何でしょうか。それは、解析モデルの学習に様々な条件の例を含めることです。

オリンパスのAIソフトウェアは、優れた一般化特性を備えた非常に堅牢なモデルを簡単に学習するための生産的なアプローチを提供します。以下は、アプリケーションの一例です。

artificial intelligence software for microscopy

マウスの腎臓切片画像から糸球体の位置をTruAIで推論した結果

Deep learning for cellular image analysis

優れたロバスト性:明視野条件を意図的に悪条件に設定した場合であっても、明視野での細胞の検出は確実に機能します。
 

4. データは多いに越したことはありません。

TruAI技術に用いられている基本的なニューラルネットワークの学習能力は極めて大きなものです。これは、大量のサンプルの使用を可能にし、データの追加により、学習済みのモデルをさらに優れたものにできることを意味します。

したがって、学習済みの解析モデルについての難題や限界に直面した際には、モデルの改善のための最良の方法は、ほとんどの場合ここに帰結します。つまり、学習によりさらに多くのデータを与えることです。与えられたサンプルが、人間によって標識されている場合、ソフトウェアにより自動的にデータを増やし、標識されたそれぞれの目的物が学習のために複数のサンプルを提供するようにします。

自己学習ワークフローにより、より多くのサンプルを学習に含めることが可能になり、最終的に、解析モデルの感度と特異度がこれまでにないレベルになります。

Neutral network training

ニューラルネットワークの学習を示す概略図
 

5. 信頼性を確保するためのバリデーションの重要性

あらゆるニューラルネットワークはブラックボックスです。つまり、私達がサンプルを用いて学習させ、ニューラルネットワークはそれらのサンプルから学習し、解析を行い、優れた成果をもたらすのです。ここでの問題は、結果を出すために、ニューラルネットワークがどのような情報を使用しているのか、正確にわかっていないということです。

結果が盲目的に信頼される場合、この不確実性が予期しない結果を招く可能性があることは、科学メディアや論文ではよく知られた事実です。

あらゆるAI解析において信頼性を確立するためには、バリデーションが重要になります。ある画像内ですべての細胞を見つけるような単純なアプリケーションでは、いつ分割を間違ったかは一見して明らかになりますが、高度で自動化された解析においては、答えが見つかりにくい可能性があります。

この理由から、オリンパスでは、学習済みのTruAIモデルを検証するためのツールを作成しました。学習中、結果の品質が、クリーンなデータ(すなわち、学習そのものに使用されないデータ)に対して自動的に試験されることを確実にするためには、データの分割が役立ちます。

信頼性の高い解析のためにさらに重要なことは、様々なテストデータに対する独立した試験と検証の実施です。提供されるツールは、大規模データにおける予測信頼性の効率的な徹底分析及び偽陽性/偽陰性解析を容易にサポートします。

AI software for microscopy

異なる超微弱光レベルでのTruAIによるDNA染色細胞周期解析の検証により、信頼性の高さを明確に示します。
 

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EVIDENT Technology Center Europe、プロダクトマネージャー

Mike Woerdemann氏は、構造化ライトフィールドに基づく光ピンセット技術の博士号を取得しました。アプリケーションスペシャリストとして勤務し、ハイコンテントスクリーニングシステムを長年にわたりサポートする中で、この分野での実践的な知見を深めました。現在は、EVIDENT Technology Center Europeで開発されたハイコンテントスクリーニングステーションとディープラーニング製品のプロダクトマネージャーを務めています。

2020年10月21日
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