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自己蛍光の美学:2020年IOTYグローバル最優秀賞受賞者の紹介

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オリンパスIOTY 2020グローバル最優秀賞受賞者Werner Zuschratterさんが顕微鏡で捉えたラット全胚

オリンパスのImage of the Year(IOTY)Global Life Science Light Microscopy Awardでは、毎年、ライフサイエンスイメージングの最高傑作を表彰します。 受賞画像の選考は、サイエンスとアート両分野の専門家からなる国際的な審査員によって慎重に行われます。

過去数か月にわたり、IOTY 2020コンテストの受賞画像の背後にあるストーリーを紹介することで、受賞を祝福しています。 米州アジア・パシフィックEMEAの3地域の最優秀賞受賞者にお話を伺ってきました。 今回は最後の1人、グローバル最優秀賞受賞者のインタビューを紹介します。

審査員がグローバル最優秀賞に選んだのは、ドイツのWerner Zuschratterさんによるラット全胚の共焦点画像です。 カラフルで印象的な画像では、2つのチャンネルが組織の異なる自己蛍光色を表し、3つ目のチャンネルはアリザリンレッドで染色した骨格を表しています。 Wernerさんにインタビューを行い、受賞作の詳細とサイエンス・アートへの想いについて伺いました。

Q:あなたの科学的バックグラウンドについて教えていただけますか?

A:私はダルムシュタット工科大学で神経生物学を中心に生物学を学びました。 1992年、マクデブルク(ドイツ)に移り、現在勤務するLeibniz Institute for Neurobiology(LIN)で電子顕微鏡とレーザー走査型顕微鏡の特別研究室の管理を引き受けました。 LINは、可塑性の構造的・機能的な関係をあらゆるレベル(分子や細胞レベルから小動物のイメージング、MRIによる人体イメージングまで)で探るために、イメージング技術を大いに必要とする学習と記憶の研究機関です。

さまざまなモダリティを橋渡しするため、数年前に包括的なコア施設Combinatorial NeuroImaging(CNI)Core Facilityを設立しました。 私は人体イメージング研究の仲間と共に、施設のまとめ役をしています。 CNIでは、年間およそ150人のユーザーに基盤設備とトレーニングを提供しています。 CNIの科学者たちは、独自の研究プロジェクトも行っています。

私の研究で重点を置いているのは、動的プロセスの高解像度イメージングと観察に加えて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)イメージングに時間分解蛍光寿命イメージング観察法(FLIM)を使用した、代謝プロセスの機能解析です。 目的のために、LINCamという超高感度量子検出器を開発しました。

Q:受賞画像は何を表していますか?

A:写真はラット胎児です。共焦点顕微鏡で個々の画像スタック(7 × 13スタック、各168焦点面)を記録した後、組み合わせて全体像を作りました。 オリジナルデータセットの合計メモリーは22.9 GBです。

個々の画像は異なるスペクトル領域(青、緑、赤)で連続して記録され、3チャンネルのうち2つは組織の自己蛍光を表し、3つ目のチャンネルはアリザリンレッドで染色した骨格を表しています。 このサンプルは元々、胚発生における薬剤の効果を探るために行われた、以前の研究プロジェクトで用意されたものでした。

私はサンプルを再利用して、(共焦点顕微鏡またはライトシート顕微鏡による)全身イメージングのクリアリング方法の品質をテストし、ラベルフリーイメージング実験を組織化学的染色と組み合わせて自己蛍光の情報を抽出したほか、高度なスペクトルおよび時間分解観察法(FLIMなど)によりさまざまな自己蛍光種を識別しました。

オリンパスIOTY 2020グローバル最優秀賞受賞者Werner Zuschratterさんが顕微鏡で捉えたラット全胚

IOTY 2020グローバル最優秀賞受賞者Werner Zuschratterさんは、固定された鮮明なラット全胚をとらえた、3チャンネルの大規模共焦点画像を撮影しました。

イメージング手順の技術的詳細は以下の通りです。

イメージング手順:

  • タイルスキャン:7 × 13スタック、各168焦点面、ステップサイズ20 µm
  • 倍率:5 × 0.15 NA対物レンズ
  • 濃淡値:12ビット
  • 画像サイズ:スタックあたり2329 µm × 2329 µm × 3360 µm
  • ピクセル解像度:タイルあたり512 × 512、ライン平均:3
  • メモリー要件:スタックあたり252 MB、 全スタックで22.9 GB
  • 励起:チャンネル1:405 nm、 チャンネル2:483 nm、 チャンネル3:568 nm
  • 検出:チャンネル1:430~470 nm、 チャンネル2:496~541、 チャンネル3:641~690 nm

後処理:

後処理(Z-投影、スタックのマージ、色/コントラストの調整など)のために、ImageJ/FijiとAdobe Photoshopソフトウェアを使用しました。

Q:この画像を選んだ理由は何ですか?

A:大きなサイズの透明なサンプル全体を、顕微鏡で立体的にとらえ、組織それぞれの(スペクトル分離または生存期間による)自己蛍光によって差別化するのは困難です。

元々は開発研究用に処理していた古いサンプルを再利用し、共焦点の時間分解ライトシート観察を使用してイメージングしました。 スキャンした結果は非常に美しく、研究魂を刺激する印象的な写真となりました。 そのうち1つの写真がコンテストに応募するのにふさわしいと判断しました。

Q:あなたにとって科学の芸術とは何ですか?

A:大きなサイズの透明なサンプル全体を、顕微鏡で立体的にとらえ、組織それぞれの(スペクトル分離または生存期間による)自己蛍光によって差別化するのは困難です。

この点については顕微鏡が創造力とひらめきを刺激し、新しいものを見る目を鋭くする機会を豊富に提供します。 例えば3年前、ユーザーが撮影した写真の展覧会をギャラリーで開催して、サイエンスとアートについて一般の方々と対話を始めました。 私たちの施設でも常設展示していて、訪れる人に鑑賞していただいています。

Q:あなたが初めて顕微鏡の使い方を習ったのはいつどこでですか?

A:私が顕微鏡画像に興味を持つようになったのは、ダルムシュタット工科大学で研究していた頃でした。 当時の実践講座では、顕微鏡の前に何日も座って接眼レンズから見えたものを描くのが一般的でした。今となってはデータ収集に適した方法とは思えませんが。 幸運にも、後に私の指導者となる方が、アナログカメラと自動測光機能の付いた研究用顕微鏡を使わせてくれました。

卒業論文と博士論文の執筆時に、電子顕微鏡の世界に導かれました。 1990年代に共焦点顕微鏡が登場し、蛍光染色が改良され、分子生物学的な標識法が導入されるようになると、私はライブセルイメージングで動的プロセスの強調を行う光学顕微鏡の世界に舞い戻りました。

機能的なライブセルイメージングでは、光毒性を最小限にするために光量を低くする必要があります。私たちの施設では、単一光子計測の原則に基づく超高感度イメージングプロセスの研究に力を注いでいます。 努力がついに実り、FLIM用の新しいカメラLINCamを開発できました。

Q:お仕事ではどの顕微鏡を使っていますか?オリンパスの顕微鏡についてどんなところが好きですか?

A:電子顕微鏡など、私の職場にはたくさんの蛍光顕微鏡があります。 さまざまなメーカーの共焦点顕微鏡、ライトシート顕微鏡、STED顕微鏡、そしてFLIM顕微鏡です。

オリンパスの顕微鏡で私が評価しているのは、モジュール式の構造と、透過性と品質に優れた光学系です。 こうした理由から、私たちはオリンパスのIX81倒立顕微鏡とTIRFをFLIMセットアップの1つに使用しています。 さらに、ライトシート顕微鏡の1つはオリンパスのMVX10ズーム顕微鏡をベースにしています。 先日、ドイツのハンブルクにあるオリンパスのヨーロッパ本社を訪ねたときに、LINCamをSpinSR10スピニングディスク型共焦点超解像システムでテストしたところ、すばらしい性能を発揮し、この組み合わせが3D FLIMアプリケーションへの可能性を開いているのがわかりました。

Q:感謝を伝えたい人はいますか?

A:まず、IOTYグローバル最優秀賞という高い評価を下さった審査員の皆様に感謝します。 CNI Core Facilityのチームの皆さんにも、すばらしい協力に感謝を伝えたいです。

最高の光学顕微鏡画像を追求

IOTYの受賞画像の背後にあるストーリーは、顕微鏡の下に広がる美を見たいという思いを私たちに抱かせ続けます。 シェアする顕微鏡画像をお持ちでしたら、最高の作品(3つまで)をIOTY 2021コンテストにぜひ応募してください。

そのページから、これまでのIOTY画像コレクションをダウンロードするのをお忘れなく。あなたの顕微鏡イメージングに役立つはずです。 オンライン会議のバーチャル背景を目立つ画像にし、スマホやデスクトップの壁紙を美しく彩りましょう。

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Staff Writer

Rebecca氏は、Olympus Scientific Solutionsのスタッフライターです。Endicott Collegeでジャーナリズムの学士号を取得し、科学および産業におけるトレンドとテクノロジーについて執筆しています。オリンパスのエンジニアや科学者と密接につながって仕事をし、最新のレーザー走査型、超解像、多光子、正立型、実体、倒立型の顕微鏡システムの他、最先端の光学系、カメラ、ソフトウェアについての記事を書いています。細胞学、病理学、教育など、数多くのアプリケーションにおけるオリンパスの最新の状況を知るためには、彼女の記事を読んでください。

2022年1月6日
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