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アーティスト目線で見た自然界:2019年IOTY EMEA地域最優秀賞受賞者と会う

著者  -
マウスのヒゲ

オリンパスのImage of the Year(IOTY)コンテストに応募される顕微鏡画像は、どれも見ていてため息がでるほどすばらしいものです。受賞者の選出は私たちの尊敬すべき審査員にとっても困難な作業です。この作業を少しでもしやすくするために、コンテストは4つのカテゴリーに分けられており、グローバル最優秀賞受賞者と以下の各地域の最優秀賞受賞者が決められます。

  • 米州
  • アジア・パシフィック
  • 欧州・中東・アフリカ(EMEA)

 2019年のEMEAの受賞者は英国のアラン・プリスコット氏でした。受賞画像のタイトルは「マウスのヒゲ」です。 プリスコット氏はスコットランドのダンディーを拠点とする細胞生物学者で顕微鏡学者であり、このQ&Aでは、受賞画像の撮影について詳細を語っていただき、芸術的な顕微鏡イメージングへの情熱についてお話しいただきました。


 

2019年IOTY EMEA地域最優秀賞受賞者 アラン・プリスコット氏へのインタビュー

質問(以下、Q):いつどこで顕微鏡の使い方を最初に学ばれましたか。

プリスコット氏の回答(以下、A):私は博士課程中に電子顕微鏡学者として出発しましたが、それ以来、単純な実体顕微鏡から多光子共焦点顕微鏡までさまざまな顕微鏡を使用してきました。まさに、顕微鏡を使用することを生業にしています。

Q:顕微鏡について、何が最も魅力的だと思われますか。

A:芸術的観点から見ると、思いがけない所から興味深い画像を発見することです。倍率を変えると、物の見方を完全に変えることができます。私は興味深い画像に常に注目していて、毎日のイメージングで科学のためよりもむしろ芸術的な発表に適した風変わりな興味深い画像を得ようと試みています。

Q:この魅力はどこから来ているのでしょうか。

A:自然界への関心とそれを視覚化できる多くの方法です。

Q:いつから顕微鏡でアート作品を生み出してこられましたか。

A:30年以上前からです。
 

「すべての顕微鏡学者にある程度の芸術的な才能が必要」

Q:顕微鏡を使用してアート作品を生み出す着想を得たのはいつですか。

A:私は顕微鏡を扱うようになって以来、アーティスト、特にダンディーにある芸術大学であるダンカン・オブ・ジョーダンストーンの学生と共同で作業してきました。アーティストと協力することによって、彼らが作成する画像の異なる見方に目を向けるようになります。私は、良いバランス、構成などを持つ画像を作成するために、すべての顕微鏡学者にある程度の芸術的な才能が必要だと考えています。

Q:受賞した画像は何を表したものですか。

A:これは、発育中のmitoQCマウスの共焦点顕微鏡画像で、形成中のヒゲを表しています。mitoQCマウスは、マイトファジーによるミトコンドリア代謝をモニタリングするために使用されるマウスモデルです。リソソームにおけるミトコンドリアの分解とすべての組織における機能的ミトコンドリア組織化を示します。
 

パーキンソン病などの疾患研究にマイトファジーで貢献する方法を模索しています

Q:どのようにして画像を作成されたのですか。

A:眼におけるミトコンドリア代謝に関する論文のための画像の収集中に、16.5日胚のマウス頭部のクリオスタット切片を検討していて、鼻の近くのこの興味深い領域に気づきました。mitoQCマウスは、eGFPおよびmCherryの両方の蛍光タンパクを発現するミトコンドリアにタンデムレポーターを持っています。このモデルの巧みなところは、ミトコンドリアがマイトファジーによって代謝され、リソソームと融合すると、pHの低下によってeGFP蛍光が消失することです。したがって、組織における代謝の程度を測定するには、赤色のみの(mCherry)構造の数をカウントするだけで済みます。さらに、緑色(eGFP)蛍光はすべてのマウス組織においてミトコンドリアの組織化を示します。この画像は16.5日胚のmitoQCマウスの凍結切片から得られたものです。DAPIでDNAを対比染色し、64倍Plan APO対物レンズを使用して共焦点顕微鏡でイメージングを行いました。EGFPとmCherryがすべてのミトコンドリアで発現しているため、他の染色は必要ありませんでした。

Q:画像やテーマについて伝えたいメッセージはありますか。

A:このような画像によって、眼、心臓、筋肉、脳など多くの組織においてミトコンドリア代謝を検討することが可能になりました。私たちは、パーキンソン病などのヒト疾患の他のモデルにこのマウスを交差させ、このような疾患研究にマイトファジーが貢献することもできると考えています。

Q:オリンパスの顕微鏡について、どのような認識をお持ちですか。オリンパスの顕微鏡のご使用経験についてお話しいただけますか。

A:ダンディーの施設にオリンパスのシステムが数台あります。オリンパスのシステムは常に信頼性が高く、安心して目の前の課題に取り組むことができます。

プリスコット氏がご紹介された研究については、以下の論文をご参照ください。

A comparative map of macroautophagy and mitophagy in the vertebrate eye(脊椎動物の眼におけるマクロオートファジーとマイトファジーの比較マップ)

Phosphorylation of Parkin at serine 65 is essential for its activation in vivo(セリン65におけるパーキンのリン酸化はin vivoでのパーキンの活性化に不可欠)

オリンパスライフサイエンスはグローバルなImage of the Yearコンテストへの応募者の皆様に感謝し、2020年のコンテストにはどのような作品が登場するのか今からとても楽しみにしています。ぜひご注目ください!
 

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Staff Writer

Sarah Williams氏は、2013年にオリンパスのマーケティングコミュニケーション部に入る前、放送メディア産業で調査員兼コピーライターとして10年近く働いてきました。現在は、ライター、編集者としてのスキルを活かし、オリンパスの製品や専門技術に関連するトピックについて興味深く高品質な資料を作成しています。彼女が非破壊試験(nondestructive testing:NDT)技術について書いたものでは、超音波(UT)と渦電流試験(eddy current testing:ECT)、フェーズドアレイ(PA)、トータルフォーカシングメソッド(TFM)とフルマトリックキャプチャ(FMC)、および工業用顕微鏡とビデオスコープについて取り上げています。私達を取り巻く世界の品質と安全性の向上に対するオリンパス製品の貢献についても折りに触れ詳しく検証しています。ケベックシティのオフィスに勤務し、同じケベックシティ内に夫のDavidと3人の子供、Sophie、Anouk、Éloiと一緒に暮らしています。

2020年10月20日
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