オリンパスでは、絞り付き油浸対物レンズUPlanFL 60Xや100Xなどの高品質の暗視野用光学部品を提供しています。 オイルを使用した暗視野コンデンサとこれらの対物レンズを組み合わせることで、標準的な透過光観察と比べて、粒子検出力とSN比(SNR)が高くなります。 それでも、急速に広がるナノスケール研究イメージングのニーズによって、さらに優れた暗視野性能の需要が高まりをみせています。
強化暗視野照明法の概要
こうしたニーズに応えるため、CytoVivaは2005年に強化暗視野(EDF)照明法を導入しました(米国特許番号 7,542,203、7,564,623(2009))。 この技法によって、標準的な暗視野イメージング法と比べて、SNR性能が10倍も上がります。 その結果、ナノスケールエンティティの検出能力が大きく改善されます。
CytoViva EDF照明を使用すると、透明や半透明のさまざまなサンプル環境にあるナノスケールエンティティを、自然な状態、つまり標識(ラベル)やマーカーを使用せずに、すぐ簡単に観察できます。 下の図1は、この能力を表しています。 図に示されているのは、金ナノ粒子(AuNP)を含む低濃度脂質(LDL)に暴露されたマクロファージ細胞です。
図1a:マクロファージ細胞内LDL AuNPの強化暗視野画像(60X)
図1b:赤枠で示された部分の4xデジタルズーム
図1c:対照細胞
強化暗視野照明がナノスケールイメージングの新たな可能性を開く
この性能の向上によって、新たな可能性が開きました。 研究者たちはさまざまな半透明のサンプル基質のナノ構造体を、高い鮮明さと忠実さで光学イメージングできます。 以下に例を挙げます。
- プラズモン粒子(Au、Ag、P):10~20 nmまで
- 金属酸化物(TiO2、Fe2O3、ZnO2):20~40 nmまで
- ポリマー粒子:40~60 nmまで
- 脂質:80~100 nmまで
この技法は、単層および多層カーボンナノチューブなど、その他のナノスケール構造体のイメージングにも活用できます。 この場合も、イメージング前にラベリングやその他の特別なサンプル調製を行う必要はありません。 さらに、この技法は簡単に習得できます。 顕微鏡観察の経験がない人でも、高品質画像の取得方法を覚えるのに1時間もかかりません。
強化暗視野照明:技法の仕組み
性能が向上した理由は、顕微鏡の台座を通る通常の光路を迂回することにあります。 代わりに、密閉式システムと光路によって、照明をコンデンサに直接方向づけて、光源からコンデンサの入射スリットに向かう光路の形状を修正します(図2a)。 こうするとサンプル上の光子密度が最大になるので、SNRの高いイメージング性能が得られます。 この設計では、コンデンサの焦点をサンプルの結像面に狙いどおり合わせやすく、再現性も高くなります。
図2a:CytoViva強化暗視野照明を通る光路
EDF設計では、コンデンサに入射する光の調整も行います。 これによって迷光やバックグラウンドノイズが抑えられます。 市販の標準的な暗視野コンデンサと比較すると、SNR性能の高い最適な暗視野画像が得られます。 EDF照明は、オリンパスの各種正立顕微鏡および倒立顕微鏡に対応しています。
CytoVivaが開発したEDF照明は、出力範囲が400~2200 nmの各種光源とも併用できます。 これには蛍光イメージング用の光源も含まれます。
図2b:オリンパスの正立顕微鏡に装着されたCytoViva強化暗視野照明
強化暗視野照明法の応用範囲は、代替エネルギーから化粧品まで、ナノレベルを扱う幅広い分野に及びます。 その用途のすべてにおいて、固有の要件があります。 その上、各種の生物学的または非生物学的基質内にあるナノ構造体の形状、機能、位置を、非標識の自然な状態で観察したいという要求を担っています。 ご説明したように、CytoViva強化暗視野照明を高品質のオリンパス顕微鏡と組み合わせることが、難しい応用で成功する鍵となります。