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より高速で高感度のSARS-CoV-2検出でCOVID-19のまん延を抑える

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オーストリアのウィーン工科大学(TU Wien)で細胞チップ研究チーム長を務めるPeter Ertl教授からお話を伺い、lab-on-a-chip(ラボオンチップ)技術の研究についていくつかの興味深い事実を知りました。この小さな自立型の装置を使って、抗がん剤の毒性から血液脳関門の浸透性まで、あらゆることを研究できます。現在、この技術はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の診断検査の開発に用いられていて、正確な結果をわずか数分で提供する可能性があります。

Ertl教授から見ると、現行のCOVID-19診断法は、現在のパンデミックに正しく対処するために必要なスピード、感度、信頼性に欠けています。「PCR検査はすべてを検出できる一方で、拡張性がなく、結果の取得に最大24時間かかるのが一般的です。結果が実際に有効なのは数日間だけなので、長期滞在する会議などのイベントには行けないことを意味します。ラテラルフローや抗原検査など、現在ある別の方法は、単純に感度が十分ではありません。ウイルス量が多く症状のある人の結果の判定は優れているかもしれませんが、知らないうちに感染を広げるおそれのある無症状患者を検出することは同じように重要です。」

データストリーミング対応バイオチップを使用した効果的で効率的なCOVID-19診断ツールの開発

この問題に真正面から取り組んだErtl教授とチームメンバーは、わずか3~5個のウイルス粒子をたった数分で確実に検出しながら偽陰性も排除するバイオチップ技術を開発しました。その結果、無症状患者を明確に診断して自主隔離が可能になるので、COVID-19のまん延を抑えることができます。

バイオチップは、独自の電源、ディスプレイユニット、無線によるデータ転送機能を有する設計になっています(図1)。結果は必要な疫学センターに直接すぐに送られます。このデータ収集の合理化は、正確な感染者数や急増の報告に大いに役立ちます。

COVID-19バイオチップ検査の仕組みを示す図

図1:COVID-19バイオチップの仕組みを示す図。バイオチップ技術では、マイクロ流体チャンバーに固定した抗体を使用します。これがサンプル内に存在する対象ウイルスを結合します。この例では、COVID-19の原因となるSARS-CoV 2ウイルスです。その後、ナノゴールド標識された二次抗体が、結合ウイルス粒子に結合します。この段階で銀溶液を加えると、銀が金に反応して導電性ナノブリッジを生成します。次に、電流が流れてLEDを有効にしたり、内蔵通信機器とリンクしてデータを無線で転送したりできます。

COVID-19バイオチップ検査判定における当社IXplore™ライブセルイメージングプラットフォームの役割

この技術が正しく機能するには、抗体の品質と、抗体がマイクロ流体チャンバーの表面にしっかりと固定され、遮断される導線の間隔が適切であることが条件になります。この条件を最適にするため、Ertl教授と細胞チップ研究チームはさまざまな固定方法をテストしました。オリンパスIXplore™ Live顕微鏡システムと蛍光標識した二次抗体を使用して、抗体の密度、配向、配列など、バイオチップの成功にとって重要なパラメーターを評価できました(図2を参照)。

IXploreライブセルイメージングシステムで観察された蛍光標識二次抗体

図2:基板上でヤギ-ラットIgG抗体の固定密度を倍率4倍で測定するために、オリンパスIXplore Live顕微鏡と蛍光標識二次抗体を使用。画像は、抗体濃度レベルの低下(左から右)が蛍光輝度レベルの低下と一致する様子を示しています。

Ertl教授は次のように話しました。「IXplore Liveシステムはチップ開発の拡大に実に役立っています。画像解像度と価格に関して、私たちの望み通りのものを提供してくれます。COVID-19のほかでも、研究室の真の戦力になっていて、organ-on-a-chipプロジェクトでいつも使用されています。特に、優れた解像度、低酸素チャンバー、そして共焦点イメージングへのシステムアップグレードが可能なことは、私たちの研究に大変役立ちました。」

がんやパーキンソン病などその他の病気のアプリケーション

ウイルス診断プラットフォーム以外に、バイオチップ技術はさまざまな面白いアプリケーションに利用されています。Ertl教授の研究室では、organ-on-a-chipやtissue-on-a-chipと呼ばれる組織や臓器の複雑な三次元構造を複製可能な、先進のマイクロ流体細胞培養システムを研究しています。これらのバイオチップは、組織の構造や機能を調べるための生物モデルとして使用されるだけでなく、病気(がん、自己免疫疾患、神経変性疾患など)の発症や進行への洞察も与えてくれます。

IXplore Live顕微鏡システムを使用して取得されたGFPおよびDAPI標識サンプル。画像提供:TU Weinの研究チーム

図3:TU Weinの研究チームがオリンパスIXplore Live顕微鏡を使用して取得した画像。左から右へ向かって以下を示しています。(1) TRITCデキストランかん流とGFP標識HUVEC(20倍) (2) GFP標識HUVEC(4倍) (3) DAPI標識F-アクチンおよびVE-Cadherin(20倍)。

Ertl教授は、IXplore Live顕微鏡がorgan-on-a-chip研究にとって重要なツールになっていると話してくれました。3D細胞の構造が本物の人間の組織構造を確実に模倣していることを評価するには、高い解像度が欠かせません。例えば、TU WienのチームはIXplore Live顕微鏡を使用して、リンパ液/血液界面の進行や、チッププラットフォーム上でのセンサー統合パーキンソン病の進行を観察しました。後者のプロジェクトでは、神経突起伸長とカルシウムのイメージング研究において、IXplore Live顕微鏡が中心的な役割を果たしました。これがパーキンソン病の神経発達面への理解を深める、個々の人間の中脳モデルにつながることを研究チームは願っています。

さらに言及されたのは、IXplore Live顕微鏡と低酸素チャンバーを組み合わせられるのが、研究チームにとって重要な選択だったということでした。研究室がほぼすべてのマイクロ流体装置の開発に関わっているからです。Ertl教授の研究チームの一員であるSarah Spitz氏は次のように述べています。「低酸素チャンバーは主に、マイクロ流体装置の製造用にさまざまな材料の酸素透過性を研究するために使用しています。酸素透過性は成長する細胞の酸素可用性に影響することから、重要なパラメーターの1つです。このセットアップとチップ内蔵の酸素センサーを使用することで、これらの特有の特性を非常に簡単に判別できます。」

COVID-19以外に期待されるバイオチップ技術の可能性

バイオチップでのウイルス検査は、進行中のパンデミックをモニタリングするための高速で信頼性の高いツールとなり得るだけでなく、プラットフォームへの投資が他の病気の診断にも有益である可能性があります。電源内蔵式でポータブルなこの技術は、パキスタンのB型肝炎やアフリカのエボラなど、遠隔地やワクチン不足が問題になっている地域で利用されるかもしれません。それと同時に、organ-on-a-chip技術の未来は可能性にあふれ、多くの病気の治療に大きな進展が期待されます。COVID-19検査に関して、Ertl教授は数か月以内に最初の産業試作品を開発したいと話しています。

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プロダクトマーケティングマネージャー

Kristina Mayer氏は、EvidentのEuropean Product Marketingチームで倒立顕微鏡のプロダクトマーケティングマネージャーを務めています。10年以上にわたりEvidentに勤務し、IXplore™ 倒立顕微鏡シリーズを担当して、EMEA地域でリサーチイメージング(全反射照明検鏡法(TIRF)やスピニングディスク型共焦点顕微鏡など)をサポートしています。ヤーコプス大学ブレーメンで細胞生物学の博士号を取得しています。

2021年12月16日
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