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汎用性の高いイメージングソリューションが神経科学分野のホールスライドスキャンとハイコンテントスクリーニングを支える

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Evident IXplore顕微鏡システム

スペインのトレドにあるHospital Nacional de Parapléjicos(HNP)は、脊髄損傷専門のスペイン国立リファレンスセンターです。HNPは、脊椎損傷患者への包括的な健康およびリハビリテーションサービスの提供、有資格者のトレーニング、神経科学分野における科学的研究の実施を目的として設立されました。

神経科学研究を支援するため、HNPのイメージング共通機器施設では、顕微鏡観察および画像解析、フローサイトメトリー、プロテオミクス、小動物向け核磁気共鳴(NMR)、動物飼育を扱っています。顕微鏡観察および画像解析の施設には、1台の顕微鏡でホールスライドスキャンとハイコンテントスクリーニング(HCS)に対応する、高性能で汎用性の高いイメージングソリューションが活躍しています。

このソリューションは、IXplore™ Proフル電動・多次元イメージングシステムに、scanRハイコンテントスクリーニングソフトウェア*とcellSens™イメージングソフトウェアを組み合わせたものです。TruAI™ディープラーニングテクノロジーを使用した高度な画像解析など、幅広い用途とイメージング手法に適応できます。

スペインのトレドにあるHospital Nacional de Parapléjicos

図1:スペインのトレドにあるHospital Nacional de Parapléjicosの全景。写真提供:Juan Carlos Monroy。

Hospital Nacional de Parapléjicosのイメージング共通機器施設Microscopy and Image Analysisは、José Ángel Rodríguez Alfaro先生とJavier Mazarío先生が運営しています。今回、両先生にお会いして、同施設の中心的サービスにIXplore ProシステムとscanRおよびcellSensソフトウェアを使用していることについて、詳しくお話を伺いました。

Q:IXploreイメージングシステムとscanRソフトウェア導入された理由をお聞かせいただけますか?

A:私たちの施設には、自動式の共焦点レーザー走査型顕微鏡からマニュアル式の安価な顕微鏡まで、さまざまな光学顕微鏡があります。以前は密閉式ハイコンテント解析(HCA)システムを使っていましたが、10年使ったところで壊れてしまったので、交換する必要がありました。

そのときに私たちが探していたのは、HCAシステムで取得した測定データでより精密なゲート解析を実施するために、取得データをフローサイトメトリー解析ソフトウェアにエクスポートする方法でした。

scanRシステムで私たちがまず注目したのは、このようなサイトメトリーゲート解析が既にソフトウェアに内蔵されていたことでした。このタイプの解析を実行できるHCAシステムは、他に見たことがありません。これがIXploreシステムとscanRソフトウェアに気持ちが傾いた主な理由の1つでした。

Q:このシステムでその他に気に入っている機能を教えてください。

A:密封式システムでない点と、cellSensソフトウェアが含まれているところ、それにスライドスキャンが可能な広視野顕微鏡も備えているところです。1台で2つの機能を持つこのシステムは、施設で提供するサービスの幅を広げ、私たちにとって完璧でした。

このシステムのモジュール性はとても便利です。このおかげで、生細胞研究に培養器を組み込むなど、必要なときに機能を追加することができます。

もう1つの重要な点は、私たちのシステムラインアップにTruAIのような最新式の人工知能画像解析技術を組み込めたことです。TruAIはcellSens画像、scanR画像の両方と連動するだけでなく、他の顕微鏡システムで取得した画像とも連動します。

Q:施設にIXploreシステムを導入した後にどのような影響・変化がありましたか?

A:IXploreシステムとscanRソフトウェアの組み合わせは、急速に施設内で最も使われる顕微鏡になりました。その使用時間は、かつて施設の「スター」だった共焦点顕微鏡の使用時間の2倍を上回ります。

落射蛍光顕微鏡ではありますが、研究の一部で共焦点イメージングからの切り替えを考えるには十分の画像解像度があります。特に、このシステムの高速性を考慮し、Z軸方向の解像度をそれほど必要としない場合に顕著です。以前は共焦点レーザー走査型顕微鏡でとても時間がかかっていた画像を短時間で取得できます。

高速性だけでなく、4スライドキャリアーとフォーカスマップを組み合わせて実験をセットし、定期的なモニタリング不要で夜通しの実行が可能なことも重要です。

scanRソフトウェアでデータを取得しながらオンザフライ解析を実行できるのも、以前のHCAシステムに比べて大きな改善点です。画像取得が終わるとすぐに解析結果が手に入り、次のサンプルに移れます。

TruAIディープラーニングテクノロジーもとても便利なツールとなっています。標準的なセグメンテーション技法と比べて、高密度細胞培養サンプルでの核検出が大幅に改善され、実験からより精密なデータを取得できます。

Q:施設でIXploreシステムとcellSensソフトウェアを使用した例を教えていただけますか?

A:私たちがよく取得するのは、マウス、ラット、さらにはブタの脊髄の横(水平)断面の高解像画像です。研究者たちは、脊髄損傷(SCI)後のグリア細胞集団、ニューロンの生存率、および各種マーカーの発現の変化や、損傷部位全体の軸索伸長を観察しています。

しかし、脊髄組織に限定しているわけではありません。脳切片の高解像スキャンも行っています。この例では、蛍光レポーター遺伝子mCherryの発現場所を探すため、微分干渉観察(DIC)を使用してマウス脳全体の断面をスキャンしました。

マウス脳のホールスライド画像

図2:DICと蛍光を使用したマウス脳のホールスライド画像。画像提供:HNPのExperimental Neurophysiology and Neural Circuits Group。14

マウス脳のクローズアップ画像

図3:上の画像のある領域をクローズアップした画像。画像提供:HNPのExperimental Neurophysiology and Neural Circuits Group。18

Q:施設でHCAにscanRソフトウェアを使用した例を教えていただけますか?

A:HCAは、さまざまな条件下での細胞の増殖、分化、移動の研究によく使用されます。私たちの施設でscanRソフトウェアを使用して最も頻繁に行うアッセイの1つは、各種治療におけるレポーター遺伝子(GFPとmCherry)の発現検出です。高密度細胞培養内の核のセグメンテーションにTruAIを使用したものに、ゲート解析を組み合わせて、集団内で単独および二重標識細胞の数を定量化し、各種治療法の効果を評価しています。

血液・精液サンプルにおける蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)の検出にも、このシステムを使用しました。この例では、TruAIを核のセグメンテーションに使用するだけでなく、核内のFISHスポットの検出にも使用しています。

ハイコンテントスクリーニングソフトウェア

図4:細胞と核のセグメンテーションの周りに散布図とヒストグラムが配置された、scanRソフトウェアのメインウィンドウ。2次元散布図では、各ドットはセグメント化された細胞を表しています。1次元ヒストグラムでは、各線はパラメーター値を表し、その値を持つ細胞の数に線の高さが対応しています。最初の散布図で、ゲート(R01)はサイズと形に応じて細胞の亜集団を選択し、それが次の解析プロットに送られます。R01以外の細胞は破棄されます。第2、第3の解析プロットにおいて、緑色の陽性細胞(R02)と赤色の陽性細胞(R03)のゲートが作成されます。最後の解析プロットでは、R01、R02、R03が組み合わさり、単独および二重陽性細胞のパーセンテージが取得されます。データ提供:HNPのMolecular Neurology Group。22

ハイコンテントスクリーニングソフトウェア

図5:scanRソフトウェアを使用すると、ゲート化された領域からギャラリーを作成できます。この例は、細胞集団のギャラリーを示しています。内訳は、二重陰性、単独陽性緑、単独陰性赤、二重陽性赤緑です。結果は、表にエクスポートすることも、ウェルプレートのヒートマップとして表示することもできます。データ提供:HNPのMolecular Neurology Group。

Q:独自のディープラーニングニューラルネットワークモデルの開発にもTruAIを使用されていますか?

A:はい。私たちがトレーニングしたモデルには、高密度細胞のセグメンテーション、精髄部位のニューロン検出、各種筋線維の分類、特定治療後の異常な核の識別を目的としたものがありました。

このソフトウェアの大好きなところの1つは、このシステムで取得した画像はもちろん、オリンパス/エビデント以外の顕微鏡で取得した画像からも簡単にニューラルネットワークモデルをトレーニングできることです。そして無償で使えるビューワーアプリのOlyVIAを使えば、研究室の自席や自宅からでも画像に注釈付けできるので、さらに便利です。

図6:左の画像は、マウスの脊髄断面のニューロンマーカーNeuN(緑色)を示しています。右の画像は、同じ断面にNeuN陽性細胞(ピンク色)のTruAI検出を示す層を重ねています。画像提供:HNPのMolecular Neuroprotection Group。28

Q:このシステムで一番気に入った点は何ですか?

A:先ほども触れましたが、このシステムで気に入っているところはたくさんあります。おそらく、その中でも最も注目すべきことは、cellSensとscanRのソフトウェアの組み合わせです。そのおかげで、1台の顕微鏡システムでホールスライドスキャンからHCAまで対応できるのです。1台で2つの機能を持つこのシステムは、施設のリソースを効率化する上で最適です。そしてもちろん、TruAIはこの2つのシステムに完全に対応しています。どちらのソフトウェアをトレーニングに使用したかに関係なく、どちらでもニューラルネットワークモデルを使用できます。

IXploreイメージングシステムの詳細

IXploreシリーズは、さまざまなライフサイエンス研究アプリケーションに合わせて設計された倒立顕微鏡です。IXplore Proイメージングシステムには、明視野、マルチチャンネル蛍光、Zスタック、貼り合わせの各機能があります。

IXploreシステムの制御には、オリンパス/エビデントの顕微鏡用プラットフォームであるcellSensソフトウェアを使用します。このソフトウェアは、広視野顕微鏡の幅広いアプリケーションとイメージング手法に適応できます。例えば、ルーチン検査、スピニングディスク型共焦点、超解像、全反射照明蛍光観察法(TIRF)、光退色後蛍光回復法(FRAP)があります。

選りすぐりのハードウェアを併用すれば同じIXploreイメージングシステムをscanRソフトウェアで制御することも可能です。このソフトウェアは、ウェルプレートやチェンバースライドを使用するハイコンテントスクリーニングアプリケーション専用に効率化されています。

先生のご紹介

今回のインタビューでは、José Ángel Rodríguez Alfaro先生とJavier Mazarío先生(Hospital Nacional de Parapléjicos(スペイン)の中核施設Microscopy and Image Analysisマネージャー)にご協力いただきました。施設の活動や研究の詳細については、microscopia.hnp@sescam.jccm.esまでお問い合わせください。

José Ángel Rodríguez Alfaro先生とJavier Mazarío先生

José Ángel Rodríguez Alfaro先生とJavier Mazarío先生(Hospital Nacional de Parapléjicos(スペイン)の中核施設Microscopy and Image Analysisマネージャー)

*scanRシステムは日本を含む一部地域で販売されていません(2023年2月時点)。

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ライフサイエンスリサーチ部門、アプリケーションスペシャリスト

Manoel Veiga氏は、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学(スペイン)でピコ秒およびフェムト秒時間分解分光法を研究し、物理化学の博士号を取得しました。マドリード・コンプルテンセ大学とミュンスター大学で2つのポスドク研究を行った後、PicoQuant社でシニアサイエンティストとして勤務し、時間分解分光法、蛍光寿命イメージング観察法(FLIM)、蛍光相関分光法(FCS)の分野で研究しました。現在はドイツのEvidentでグローバルアプリケーションスペシャリストとして、ハイコンテント解析(HCA)とディープラーニングを中心に業務に携わっています。

2022年11月30日
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