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顕微鏡の構造

顕微鏡とは

顕微鏡は、小さな物体を拡大した視像または画像を生成するように設計された装置です。顕微鏡には3つの遂行するべきタスクがあります。拡大した像を作り出し、像の細部を見分け、細部を目やカメラで見えるようにすることです。この種の装置には、対物レンズとコンデンサーを備えた複レンズ顕微鏡と、拡大鏡のように手持ち式のものが多い単純な単レンズ装置があります。

ロバート・フックの顕微鏡を構成するパーツ

図1に示す顕微鏡は、1660年代にイギリスの科学者ロバート・フックが発明した複式顕微鏡です。

フックが使った顕微鏡の構造

フックの顕微鏡の各部

この顕微鏡は、対物レンズがサンプルの近くにあり、本体を回して対物レンズをサンプルに近づけたり遠ざけたりすることで、焦点を合わせます。接眼レンズは顕微鏡の最上部にはめ込まれ、多くの場合、視野を広げるために鏡筒内に内部視野レンズがあります。

ロバート・フックは、オイルランプと水の入った丸い容器(図1左側)を使用してサンプルに光を当てる工夫をしました。ランプからの光は容器を通るときに拡散し、容器に取り付けられたレンズでサンプルに集められます。この初期の顕微鏡は色(および球面)収差の作用を受けるので、白色光で見えるすべての像は、青色または赤色の「ハロー」の影響を受けていたと考えられています。

顕微鏡と目の関係

多くの顕微鏡ユーザーは接眼レンズを通して直接自身の目で観察を行うため、顕微鏡と目の関係を理解することは重要です。私たちの目は、スペクトルのうち目に見える部分の色を、紫から青、緑、黄、オレンジ、赤まで見分けることができます。しかし、ヒトの目で紫外線や赤外線を感知することはできません。

また、目は黒から白までの明るさ(輝度)と、その間のすべてのモノクロ階調を感知できます。したがって、ある画像が目で見えるには、その画像が可視スペクトルの色やさまざまな輝度で表されている必要があります。

目が色の感知に使用している受容体は錐体細胞といいます。色ではなく輝度の識別を行う細胞は桿状細胞です。これらの細胞は、目の奥の網膜にあります。目の手前側(図2を参照)にある虹彩、曲線状の角膜、レンズから光が入り、それが網膜に集まります。

ヒトの目の各部

画像がはっきりと見えるには、十分な視角で網膜に広がる必要があります。隣接しない網膜細胞列(像の拡大および拡張機能)に光が差し込まないかぎり、近接した細部を個々に見分ける(分解する)ことはできません。さらに、拡大・分解した画像を見るためには、近接する細部や背景に十分なコントラストがなければなりません。

ヒトの眼球

ヒトの眼球の網膜に像が作られる様子を見てみましょう。

目のレンズは形を変える能力が限られるため、目のとても近くにある物体を網膜上に焦点を合わせることができません。許容される標準視距離は10インチ(25センチメートル)です。

顕微鏡の歴史

初期の顕微鏡

500年以上前、単純なガラスの拡大鏡が凸レンズ(周辺より中心が厚い)の形で作られました。検体や物体は、物体と目の間に置かれた拡大鏡を使用して焦点を合わせることができました。これらの初期型顕微鏡は、網膜上の視角を広げて拡大することで、網膜上の像を拡大できました。

1600年代には、アントニ・ファン・レーウェンフックの手により、単レンズの光学顕微鏡(拡大鏡)が作製されました。彼は、自身で「微小動物(アニマルクル)」と名付けた単細胞生物を観察できたほか、大きなバクテリアまで、下の図3に示すような拡大鏡で見ることができました。

この拡大鏡を観察者の目に近づけて作られる像は、サンプルと同じ側のレンズ上にあるように見えます。目から10インチのところにあるように見える像は虚像と呼ばれ、フィルムに写すことはできません。

初期型顕微鏡(拡大鏡)の各部

単純な顕微鏡の各部

複式顕微鏡

1600年代初め頃、オランダのヤンセン兄弟とイタリアのガリレオにより、複式顕微鏡が作られました(図4の顕微鏡を参照)。

複式顕微鏡の各部

複式顕微鏡の各部

それは複式顕微鏡の最も単純な形式をとり、2枚の凸レンズを並べて配置したものでした。対物レンズはサンプルまたは対象物の近くに、接眼レンズは観察者の目の近くに配置されました(サンプルと顕微鏡レンズの位置の調整機構付き)。対物レンズで拡大像を顕微鏡の鏡筒に投影し、それを接眼レンズでさらに拡大します。このように、複式顕微鏡は2段階の拡大を行います。

17世紀と18世紀に作られた複式顕微鏡は、複数レンズの使用によって強まる光学的な収差(色と球面の両方)の影響を大きく受けました。このことから、当時の複式顕微鏡は単レンズ顕微鏡よりも実際の見え方では劣っていました。多くの場合、作られる像はぼやけ、色収差によるハローが発生することで、像の品質が低下し、分解能も阻害されました。

その後、1700年代半ばには複数のレンズメーカーが、色分散の異なるガラスでできた2枚のレンズを組み合わせると、ほとんどの色収差を低下または除去できることを発見しました。この発見が最初に実用化されたのは望遠鏡で、顕微鏡よりだいぶ大きなレンズが用いられました。複式顕微鏡で色収差レンズが一般的になるのは、1800年代に入ってからでした。

透過型顕微鏡の光路

透過型顕微鏡の基本的な光路を見てみましょう。

複式顕微鏡の進歩

18世紀と19世紀には、複式顕微鏡の機械的・光学的品質に大きな向上が見られました。工作機械の進歩によって、それまででは考えられないほど精密な部品が作れるようになったためです。1800年代半ばまで、高品質の顕微鏡の製造に選ばれていた合金は真鍮でした。

この時代には、イギリスとドイツでたくさんの顕微鏡メーカーが繫栄しました。設計や製造品質はさまざまでしたが、光学性質を定義する全体的な原理は比較的変わりありませんでした。下の図5に示す顕微鏡は、1850年頃にヒュー・パウエルとピーター・リーランドによって作られたものです。三脚の台座にしっかりと支えられたこの顕微鏡は、多くの人がこの時代の最先端だったと考えているものです。

パウエルとリーランドの顕微鏡を構成するパーツ

パウエルとリーランドの顕微鏡各部の図

19世紀の終わりには、顕微鏡メーカー各社が激しくしのぎを削り合いました。その結果、顕微鏡の開発・製造にかかる費用が重要視されるようになりました。顕微鏡メーカーが材料として選んでいた真鍮は、とても高価なものです。また、真鍮から顕微鏡本体やその他の部品を機械加工し、磨いて塗装する作業は、非常に時間がかかります。費用を削減するために、顕微鏡メーカーがまず始めたのは、顕微鏡本体、スタンド、ステージ、その他の非可動部の外部を塗装することでした。

20世紀の顕微鏡

20世紀初めの25年間に、多くの顕微鏡メーカーが顕微鏡本体とステージの真鍮を鋳鉄に置き換え始めました。鉄は真鍮よりはるかに安価で、黒く塗れば見分けがつきませんでした。また、重要な真鍮部品(ノブ、対物レンズ鏡胴、レボルバー、接眼レンズ、機械ステージ部など)の多くを電気めっきするようになりました。(下の図6を参照)。

これらの20世紀初めの顕微鏡にも、やはり共通した設計モチーフがありました。単眼式で、外部ランプとともにサブステージミラーを使用してサンプルを照らすタイプのものです。この時代に標準的だった顕微鏡の例は、図6に示すZeiss Laboratory製のものです。このタイプの顕微鏡は非常に機能的で、現在でも使用されているものが多くあります。

Zeiss Laboratory製顕微鏡の各部

Zeiss Laboratory製顕微鏡の各部

現代の顕微鏡

現代の顕微鏡は、1900年代半ばより前に作られた顕微鏡の設計仕様を大きく超えるものです。ガラス形成技術が大幅に向上し、光学収差をかつてないほど補正できるようになりました。合成アンチグレアレンズコーティングも、非常に進歩しています。また、集積回路技術のおかげで、顕微鏡スタンドにマイクロプロセッサーを内蔵した「スマート」顕微鏡を製造できるようになりました。さらに、光量のモニタリング、フィルム感度に応じた露出の計算、複雑な作業(ブラケット、多重露光、低速度撮影など)の自動実行を行うアタッチメントを使用すれば、顕微鏡撮影がより簡単に行えます。

顕微鏡組み立て

最新式顕微鏡がさまざまな部品から組み立てられる様子を、このチュートリアルでご覧ください。

図7に示す顕微鏡は、オリンパスProvis AX70研究用顕微鏡です。1990年代に発売されたこの顕微鏡は、複数の照明(落射型と透過型)、アナライザーとポラライザー、DICプリズム、蛍光アタッチメント、位相差観察機能を備えていました。顕微鏡撮影システムには、スポット測定、自動露光制御、ズーム倍率といった機能があり、柔軟なフレーミングが楽になりました。Y形の本体は人間工学に基づいて作られ、操作性が改善されました。現在も顕微鏡メーカーは、ユーザーの快適性・操作性を向上させ、新たな研究を支えるべく、新しい顕微鏡技術の開発を続けています。

オリンパスProvis AX 70顕微鏡の各部

オリンパスProvis AX 70顕微鏡の各部

顕微鏡の活用法

誰もが一度は、光学顕微鏡を通して世界を見たことがあるはずです。多くの人は高校や大学の生物の授業でそのような経験をすると思いますが、中には個人的に、あるいは科学実験キットの一部として、自分で顕微鏡を購入した科学者もいることでしょう。

顕微鏡は、物理科学や材料科学、半導体産業において、新しいハイテク材料や集積回路の表面特性を観察する必要性から、一般的なツールとなりました。また、毛髪、繊維、衣服、血痕、弾丸など、犯罪に関連するものを検査しなければならない法医学者にとっても、顕微鏡検査は有用であることが明らかです。蛍光染色やモノクローナル抗体技術の進歩は、生物医学的分析や細胞生物学における蛍光顕微鏡の使用を大きく前進させる道を切り開きました。

落射型顕微鏡の光路

落射型顕微鏡の基本的な光路を見てみましょう。

顕微鏡観察が人気ツールとなっているのは、物理科学と材料科学分野のほか、半導体産業です。新しいハイテク材料や集積回路の表面特性を観察する必要があるためです。また、髪の毛、繊維、布、血痕、銃弾、その他の犯罪に関連するものを調査する必要がある科学捜査官にも、顕微鏡観察は有用であることが証明されています。蛍光色素染色やモノクローナル抗体技術における近年の進歩は、生物医学解析と細胞生物学の双方で、蛍光観察の使用を大きく伸ばす道を開きました。

蛍光観察の光路

蛍光観察の落射光路とダイクロイックフィルターをご覧ください。

生物医学と材料の顕微鏡観察の違い

生物医学と材料の顕微鏡観察の基本的な違いとしては、顕微鏡によるサンプルへの光の当て方があります。標準的な生物顕微鏡では、光は非常に薄い標本を通り抜けて対物レンズで集束した後、接眼レンズへと入ります。

集積回路(現代のコンピューターの内部機構を構成)の表面を観察する場合、光は対物レンズを通り抜けてサンプル表面で反射し、対物レンズに戻ります。科学用語で、「透過型」と「落射型」顕微鏡はそれぞれ、「diascopic」と「episcopic」といいます。フォトギャラリーに掲載した顕微鏡写真は、透過型と落射型顕微鏡の両方で撮影された学術研究から得られたものです。

顕微鏡観察でよくある問題は、光が非常に薄い標本を透過した場合や、大きい反射角で表面から反射した場合に、生じるコントラストが弱いことです。コントラストの弱さを克服するためにさまざまな光学技法が開発された結果、コントラストが強化され、標本が多彩な色で示されるようになりました。こうした光学技法には以下のものがあります。

  • 偏光
  • 位相差イメージング
  • 微分干渉観察
  • 蛍光照明
  • 暗視野照明
  • ラインベルク照明
  • ホフマン変調コントラスト
  • 各種ゼラチン光学フィルターの使用

これらの光学技術に関する詳細な説明は、この入門資料の特殊な顕微鏡観察法セクションをご覧ください。便宜上、参考文献は従来の書誌形式とウェブサイトリンク形式の両方で記載します。これらの資料は、顕微鏡観察と顕微鏡撮影について学んだり、教育・実習を指導したりする上で役立つようにまとめたものです。ぜひご活用ください。

寄稿者

Mortimer Abramowitz - Olympus America, Inc., Two Corporate Center Drive., Melville, New York, 11747.

Michael W. Davidson - National High Magnetic Field Laboratory, 1800 East Paul Dirac Dr., The Florida State University, Tallahassee, Florida, 32310.

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