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2015年 4月 15日

理化学研究所と共同開発 超解像蛍光顕微鏡法の新技術~生きた細胞内の微細構造を高速で捉え、生命現象の解明促進に貢献~

オリンパス株式会社(社長:笹 宏行)は、科学事業の新技術として、国立研究開発法人理化学研究所と共同で、画像取得時間を大幅に短縮し生きた細胞内の微細構造の観察を可能にする、超解像蛍光顕微鏡法の新技術を開発しました。

顕微鏡を使った観察では、空間分解能(くうかんぶんかいのう)※1という対象物を細かく観察できる能力に限界があり、一般的な光学顕微鏡の空間分解能は最大で約200nm※2です。超解像顕微鏡とは、この限界を超え、より微細な構造を観察できる顕微鏡です。2014年のノーベル化学賞は、生命科学の研究を大きく進歩させる画期的な発明であるとして、超解像蛍光顕微鏡法の研究者らに贈られています。

今回開発した新技術は、超解像蛍光顕微鏡法の1つである「構造化照明法」※3と同等の約100nmの空間分解能を、100分の1秒の時間分解能(じかんぶんかいのう)※4で可能にします。これまでの超解像蛍光顕微鏡は、画像取得に約1秒~数分程度かかっていていましたが、本技術を用いることで、これまでは困難であった、生きた細胞内で活発に動き回る細胞内小器官※5の挙動を捉えることができるようになります。これにより、生命現象の理解が飛躍的に進むことが期待されます。

また、従来の共焦点顕微鏡※6の応用で実現可能である本技術は、従来の超解像蛍光顕微鏡と比較して装置導入が容易にできることが期待されます。

本技術は、米国細胞生物学会の学会誌『Molecular Biology of the Cell』(5月1日号)に掲載されるのに先立ち、速報版がオンライン(2月25日付け)で公開されました。

※1 2点間または2線間を見分ける能力。値が小さいほど空間分解能が高く、微細な画像の観測が可能
※2 1 nm(ナノメートル)は100万分の1ミリメートル
※3 縞状のパターンを投影した画像を9~25枚撮像し、そのモアレパターンを解析することにより従来比2倍の空間分解能を得る方法
※4 観測する画像に識別可能な変化を生じさせる最小の時間変化量。値が小さいほど時間分解能が高く、高速度で変化する画像の識別が可能
※5 細胞内に存在する、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアなど一定の構造と機能を持つ複合体
※6 標本に対し励起光を集光し、焦点以外の蛍光をカットすることで三次元撮像が可能な顕微鏡

(参考資料:研究概要)

<背景>
19世紀にドイツのエルンスト・アッベらによって、光学顕微鏡の空間分解能の限界は、用いる光の波長の半分程度(回折限界)であることが示されました。これにより、可視光を用いて観察する限りは、光学顕微鏡では200nmより細かい構造の観察はできないと長い間信じられてきました。しかし、回折限界を超えた空間分解能を目指す超解像蛍光顕微鏡の開発が2000年代から活発となり、100nmあるいはそれ以下の空間分解能が達成されてきています。ただし、従来の超解像顕微鏡はどれも撮像に時間がかかるため、生きたまま細胞を観察するライブセルイメージングには不向きでした。そこで、本研究ではライブセルイメージングを可能にする1/100秒の時間分解能をもつ超解像顕微鏡の技術開発を目指しました。

<技術内容>
従来の超解像蛍光顕微鏡法のひとつである構造化照明法に注目して解析を進めた結果、構造化照明法と共焦点顕微鏡の結像に理論的類似性があることが明らかになりました。そこで、弊社製のディスク走査型顕微鏡ユニット(DSU)を用いて検討し、回転円盤の縞模様などを工夫すれば構造化照明法と同等の超解像が得られることがわかりました。これを「スピニングディスク超解像顕微鏡法(SDSRM:Spinning Disk Super-Resolution Microscopy)」と名付けました(図1)。

次に、蛍光ビーズを用いた原理確認実験により、理論どおりに100nm程度の空間分解能が達成されることを確認しました(図2)。さらに、カメラと照明光源を高速撮影に適したものに交換することで、最高1/100秒のシャッター速度(時間分解能)で、生きた細胞内の微細構造を100nmの空間分解能で観察することに成功しました。

図1 スピニングディスク超解像顕微鏡法の模式図
左: 光路の模式図。照明光(青)と試料からの光(緑)は、円盤の同一箇所を往復するため、共焦点効果が得られる。
右: 円盤の縞模様の模式図。従来よりも細かい縞模様を刻むことにより超解像観察を可能にした。

図2 蛍光ビーズを用いた原理の確認実験
左: 従来の蛍光顕微鏡像
右: スピニングディスク超解像
顕微鏡による画像(スケールバーは500nm)

<成果>
スピニングディスク超解像顕微鏡法の開発により、生きた細胞の中の微細な構造が動く様子を観察することが可能となりました。本顕微鏡法は、スピニングディスク共焦点顕微鏡の応用であるため、これまでの超解像蛍光顕微鏡に比べて導入は容易です。また、本顕微鏡法の原理を発展させることで、他の共焦点顕微鏡への適用も原理的に可能と考えられます。

論文情報
<タイトル>Ultrafast superresolution fluorescence imaging with spinning disk confocal microscope optics
<著者名>Shinichi Hayashi and Yasushi Okada
<雑誌>Molecular Biology of the Cell
<DOI>10.1091/mbc.E14-08-1287 (速報版)

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