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システマティックな細胞培養ワークフローが実験の成功を加速

細胞培養プロセスの発展と近代化によって標準化および正確な文書化を可能にする技術の需要が高まり、作業スピードの上昇および作業量の減少にもつながりました。ここでは、今後細胞の応用分野で活用が期待される最先端の光学とデジタル専門技術を組み合わせ、細胞培養ワークフローを全面的にサポートする最新の技術領域について説明します。

ポイント

  • ダウンストリーム実験の成功による質の高い細胞培養需要の高まり
  • 標準化および文書化を迅速に効率良く行う方法の獲得
  • 新規IVC光法による幹細胞コロニー観察の強化
  • 新規iPCによる位相差観察の簡素化
  • 細胞培養に特化した顕微鏡、集密度検査ソフトウェアおよび自動細胞カウンターなどの最新の細胞装置

細胞培養の作業スピード、精度、標準化

効率的な細胞培養プロセスは、幹細胞、癌の研究から再生医療に至るまで、ライフサイエンスおよび医薬品産業全体にわたり多くの応用領域で基礎を築いています。質と再現性を確保するためには、ワークフロー(図1)の段階ごとに培養の進行状況を把握するにあたり、生体外(ex-vivo)での生育、増殖、分化の段階に応じて細胞を明確に観察、文書化する能力が中核をなします。細胞生物学者は多くの基本的な状況を考慮しなければならず、彼らが個々の課題を管理する方法が頻繁に変化する一方で、現代の研究室では迅速で効率の良い標準化と正確な文書化を確実なものとするための方法が導入されています。

細胞培養ワークフロー

Figure 1: An Overview of the Cell Culture Workflow

図1:細胞培養ワークフローの概要
細胞を平板培地の上で培養すると、継代、保存、実験に使用するために液中で分離、カウントされるまで、培養の健全性および集密度が顕微鏡下でモニタされる。

  • 条件を標準化することによって実験の成功率が向上し、他と比較可能なサンプルが確実に取得できるようになります。細を変化しやすい条件下で培養すると増殖パターンが変化し、そのことで多くの細胞機能の遺伝子発現を変えてしまう可能性が非常に高くなります。
  • 結果を文書化することにより、経時的な細胞行動を正確に把握することができ、将来的な参考資料、審査、査読者からの問い合わせ、あるいは特許出願といった用途のためのトレーサビリティーが可能になります。
  • 作業のスピードアップと効率化は、細胞が最適条件外に置かれる時間を最小限に抑えることで培養の健全性を維持することができ、さらに作業がスピードアップされれば研究者が他の作業に集中できる時間も増えます。

これらの目標は、自動化されたセルカウンターとソフトウェアから専門用途化された細胞培養顕微鏡に至る、高度に最適化されたツールによって容易に達成することができます。同時に、良好な結果が得られる細胞培養プロセスがサポートされるので、信頼性、再現性、そして最終的にはダウンストリーム実験の信頼性も改善されます。

生物学的洞察力の強化

細胞培養における成功は、洞察力に満ちた観察とワークフローの効率性から生まれます。しかし、従来の光学顕微鏡システムには操作性と人間工学の点から見て制約があるため、細胞培養観察にも悪影響を及ぼしかねない、時間のかかる好ましくないワークフローが生じています。顕微鏡観察は長年にわたって進化し、細胞培養の観察と分析に特化したシステムにはこれらの解決困難な問題を克服するための、多数の機能が組み込まれてきました(図2)。これらの機能には、作業のスピードアップと全体的な効率を改善する、快適で便利な操作性が含まれています。例えば、クリーンベンチ内での作業に適した小型で軽量なUV耐性システムは、すべての観察を無菌環境下で行うことを可能にし、コンタミネーションのリスクを減らすことができます。フォーカスおよびサンプリングを自然に行える位置に手を置く人間工学的な操作によって細胞の処理速度が向上し、操作者だけでなく培養細胞自体にとっても有益です。細胞が最適培養条件外に置かれる余分な時間が長くなると、コンタミネーションのリスクが増加し、生理機能を変化させ、サンプル間のばらつきを生じさせるようなストレスの原因にもなります。操作上の考慮すべき点に加えて、用いられる光学的方法も、全体的なプロセスの効率に影響を及ぼします。

Figure 2: Modern Systems Enhance the Cell Culture Workflow

図2:最新システムは細胞培養ワークフローの強化
CKX53細胞培養顕微鏡、CKX-CCSW細胞集密度チェッカーソフトウェア、自動カウンターR1などのオリンパス細胞培養ソリューションは、標準化、効率化、文書化を可能にする。

次世代の観察

最新の光学レンズを用い、大きな視野数で視野を広げる特徴を持つ細胞培養顕微鏡は、スピーディーで効率的なスクリーニングを促進します。視野数22は視野数20より21%大きな像を作るので、特に2X対物レンズを使用したとき、より実物に近い、明確なサンプルの全体像を得ることができます。視野数が増えたことにより、複数のプレートの観察が容易になり、今では複数のプレートを単一の画像で観察することが可能になりました。

観察技術それ自体に関して見ると、標準的な光学顕微鏡は明視野イメージングに依存しています。しかし、この技術には1つの重大な、多くの場合細胞培養への応用を不適切なものにしてしまう制約があります。位相物体として知られる培養中の細胞のような、生きた、染色されていない細胞は光を吸収しないため、標準的な明視野顕微鏡では多くの構造を見ることはできません。それでも、光はこれらの透明なサンプルを通過するとき位相変化を受け、特化した照明方法(位相差法[1]およびホフマン変調コントラスト法[2]など)により、位相変化を光強度パターンに変換して像コントラストを拡張することが可能です。このような理由から、位相差は細胞生物学者の間で最も人気のある方法ですが、特に倍率を変える必要があるときには、異なる対象物を準備して視野の中心に配置するのは時間のかかる作業です。位相物体のスピーディーで高コントラストな観察を可能にするiPC(integrated Phase Contrast)技術なら、4Xから40Xまでの対物レンズを切り替える際にリングスリットを個々に変更する必要がなくなります。前述のとおり、より効率的なワークフローを可能にすることは、細胞の健全性維持に役立つはずです。

幹細胞顕微鏡の新しい段階

コントラストイメージング技術は標準的な細胞培養の検査には十分ですが、この方法にも限界があります。残念なことに、位相差法およびホフマン変調コントラスト法はどちらも、サンプルの構造の詳細な観察を妨げるアーチファクトを発生させるため、最適な像を得るには至っていません。位相差法の応用は対象物の縁部周辺がぼやけるハロー効果を生じさせ、ホフマン変調コントラスト法はハロー効果の代わりに設置された装置次第で決定される方向に陰影を生じさせます。
オリンパスは、これらの制約を克服するための最新の研究に注力し、インバージョンコントラスト(IVC)として知られる新しいコントラスト技術を開発しました。ボックス1で述べたように、この新規の方法は位相差法の照明技術を拡張して、強化された3D情報を持つ鮮明な像を作成し、サンプルから今まで以上のレベルの光学情報を引き出します。

IVC: Extending Phase Contrast

IVC:位相差法の拡張

他に類を見ないIVC構成では、ハローと陰影はどちらも排除されます。参考文献の中でさらに詳しく説明されています[3]。基本的に、環状開口部が光路中の、コンデンサーの前方焦平面に挿入されています(下図を参照)。開口部は標準的な位相差法で使用されているものより大きいので(外側スリットは瞳のサイズより10~20%大きく、内側スリットは瞳のサイズより1~10%小さい)、サンプルを通過した後の光線は対物レンズの瞳の縁部を照明します。

そのため、小さな角度でサンプルを通過した光のみが対物レンズを通過し、大きな角度の光は通過しません。サンプルに位相変化がある場合、サンプルを通過する光の方向が変化します。その結果、環状開口部の像は対物レンズの瞳の位置からわずかにシフトし、対物レンズを通過する光束の面積が増加します。

増加した光はハローのない像を形成し、さらに環状開口部と対物レンズが同心配置されているため装置の構成は位相変化とは無関係であり、方向性を持つ陰も排除されます。コントラストも焦平面全体にわたって反転され、被写界深度は減少するので、3D情報を持つ鮮明な像はiPS細胞コロニーの分析にとって理想的であると言えます。

IVC法は、iPS細胞コロニーなどの3D細胞の形態解析を著しく容易にします。iPS細胞コロニーを明確に観察することができるので、細胞の健全性または分化を示唆する形態構造の変化を判定することが可能になります。重要なことですが、明視野お
よび位相差と比較して、細胞の3D特性をキャプチャできることから、IVC法はマウスiPS細胞(iPS-MEF-Ng-20D-17、京都大学[4])の輪郭および構造の視覚化に応用されてきました(図3)。興味深いことに、IVCは、iPS細胞を、周囲を囲むフィーダー細胞から識別するのに理想的であることが判明しています。フィーダー細胞の形態はiPS細胞より平らなためフィーダー細胞のコントラストはiPS細胞より低く、背景に対してiPS細胞を目立たせることになります。

Figure 3: Mouse iPS Cell Colonies Documented with InVersion Contrast (IVC)

図3:逆転コントラスト(IVC)によって文書化されたマウスiPS細胞コロニー
(a) と、標準的な位相差法(b)との比較。新規のコントラスト技術により強化された3D情報(c)を得る。

観察と分析を可能に

細胞培養に有利なもう1つの特徴は、蛍光イメージングを行う機能です。細胞培養顕微鏡の有用性の幅が広がったので、蛍光イメージング機能により研究者はルーチン観察と実用的な研究を同一のシステムで行うことができるようになり、スペースとコストの節約につながります。単一のシステムを、シーディング、増殖、継代のモニタリングから、広範囲にわたる色素を使用する細胞分析の高コントラスト蛍光イメージングまで、細胞培養ワークフローのあらゆる段階で利用することが可能です。

正確な増殖のモニタリング

細胞培養を詳細に観察することにより、例えば培養物が分化しているか、さらなる分析のための準備ができているかといった、多くの重要な洞察を得ることができます。増殖を厳密にモニタリングするためには、培養を約2日ごとに観察することも推奨されています。細胞培養は3つの異なる段階を経て増殖しますが(図4)、培養を、増殖速度が低下する対数期の段階を超えて増殖させないことが重要です。実際的な問題として、培養は集密度が70~80%にあるときが培養の継代に適していますが、この判断はしばしば視覚的に行われるため、集密度が大きく変化してしまう可能性があります。ソフトウェア技術の進歩により、今では付着細胞の集密度測定にも精度と標準化が導入されています(図2)。このようなソフトウェアを細胞培養顕微鏡に利用することにより、定量化可能な細胞増殖データを素早く生成することができるので、細胞を常に正確なタイミングで確実に継代することができます(図5)。さらに、この機能により研究者は正確な増殖記録を作成することが可能になるので、例えば培養条件を最適化するために必要以上に分離と液中カウントを繰り返すといったことを回避することもできます。

細胞増殖段階

Figure 4: The Cell Growth Phase

図4:細胞の増殖段階
細胞増殖は誘導期に始まり、成育因子濃度が増加するにつれて急激に増殖する対数期に移行する。栄養分としての平板培地が消費され、増加した細胞密度により接触阻止現象が生じる。

細胞増殖のモニタリング

Figure 5: Monitoring Cell Growth Ensures a Standardized Process

図5:細胞増殖のモニタリングで標準化されたプロセスの確保
細胞増殖のプロセスをたどる適切なタイミングを選ぶことが非常に重要であり、飽和状態にならずに十分な収率での細胞増殖を確保する。

システマティックな処理

以下の理由から、継代、ダウンストリーム実験、保存、正確な液中細胞カウントのための細胞サンプルを準備できるかどうかが非常に重要です。

  • 継代 - シーディング密度が一貫しているということは、培養が同一の速度と健全性で増殖することを意味します。
  • ダウンストリーム実験 - 細胞カウントが正確であれば、比較可能な結果を容易に得ることができます。
  • 保存 - 細胞系統を復活させるとき、各バイアル中の細胞濃度と生存度を知ることが非常に重要です。

以前から、このカウントは血球計数器を使って手作業で行われています。しかし、この時間がかかる面倒な技術は、ヒューマンエラーによるばらつきの起因になります。これに変わる最新の方法は、自動化された細胞カウントシステムです。このシステムによって、ストリーミング、標準化、文書化用に保存と出力が行われ、正確な細胞カウントレポートをわずか15秒で作成することが可能です(図2)。

要約

細胞培養はライフサイエンス応用の基礎を形成し、質の高い結果には質の高い細胞培養プロセスが求められます。これは、多くのバラメーターを考慮し、利用可能な最新のラボラトリー技術を採用することによって可能になります。今後のための
記録として詳細に文書化され、ライフサイエンス実験および再生医療の応用で好結果を得るための高度に標準化されたスピーディーなワークフローを完成させようとする研究者をサポートします。

References

  1. F. A. Ross, Phase Contrast and Interference Microscopy for Cell Biologists (Edward Arnold, 1967)
  2. R. Hoffman, J. Microsc. 110, 205 (1977)
  3. Suzuki, Y., Kajitani, K. and Ohde, H. (2015). Method for observing phase objects without halos or directional shadows. Optics letters; Vol. 40, No. 5. pp 812-815
  4. K. Okita, T. Ichisaka, and S. Yamanaka, Nature 448, 313 (2007)

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