Imaging method

顕微鏡の構造による分類 その2 ~結像方式による分類~


2.結像方式による分類

顕微鏡には、対物レンズが単独で像を有限な位置に作る「有限補正光学系」と、対物レンズの他に結像レンズを使って像を作る「無限遠補正光学系」がある。また、収差補正には、対物レンズと接眼レンズの組合わせで補正する方式(コンペンゼーション方式)と、対物レンズ、接眼レンズを個々に補正する方式(単独補正方式)がある。



2-1.有限補正光学系

有限補正光学系は、対物レンズが単独で像(中間像)を作る光学系である。対物レンズを通過した光は、接眼レンズにとっての物体になる位置で中間像を結ぶ。このため、対物レンズを切換えても中間像の位置と接眼レンズとの距離が所定の値(鏡筒の長さで規定)に決められている。

図1 有限補正光学系
図1 有限補正光学系

対物レンズ胴付きと接眼レンズ胴付きとの間隔で決まる寸法を、機械筒長という。この機械筒長は、JISで160mmと決められており、メーカーが異なっても対物レンズには互換性がある。ただし、後述するコンペンゼーション方式(ページ下 2-3.収差補正方式 参照)では、メーカーの異なる対物レンズと接眼レンズを組合わせると、収差が悪化することがある。

図2 機械筒長(有限補正光学系)
図2 機械筒長(有限補正光学系)
図3 無限遠補正光学系
図3 無限遠補正光学系

2-2.無限遠補正光学系

無限遠補正光学系は、対物レンズと接眼レンズの間に結像レンズを配置して、対物レンズを通過した光が平行光束になるように構成したものである。試料から対物レンズを経た光は対物レンズでは結像せずに、無限遠の平行光束として結像レンズに入り、結像レンズによって中間像を結ぶ。

図4 無限遠補正光学系
図4 無限遠補正光学系

鏡筒間に結像レンズを挿入して中間像を結ばせることで、機械筒長を気にすることなく顕微鏡システムを構築できるようになるため、ビームスプリッタやフィルタ等、いろいろな光学系を中間鏡筒として入れやすくなる。また、挿入部分が平行光束のため、中間像位置の移動(同焦点距離の変化)や二重像(ゴースト)、非点収差の悪化が起こらない利点がある。最新の顕微鏡では、この無限遠補正光学系が主流となっている。

図5 光学系の挿入による影響
図5 光学系の挿入による影響

一見、対物レンズと結像レンズの間隔はいくらでも拡げられるように見えるが、視野周辺に結像する光線は対物レンズを通過後、光軸に対して斜めの平行光束となって進むため、結像レンズがあまり離れ過ぎると一部の光が結像レンズに入らない。すなわち、結像レンズの口径によって、この間隔には上限がある。

図6 結像レンズの口径による間隔の上限
図6 結像レンズの口径による間隔の上限

図7 無限遠補正光学系
図7 無限遠補正光学系
図8 有限補正光学系
図8 有限補正光学系


コラム:同じ倍率の対物レンズでも、メーカーによって倍率が変わってしまう理由

有限補正光学系の対物レンズの倍率はL2/L1で求められるのに対して、無限遠補正光学系は、対物レンズの焦点距離と結像レンズの焦点距離の比、f2/f1で求められる。
有限補正光学系の場合、機械筒長が同じなら倍率は表示の通りになる。しかし、無限遠補正光学系の場合は結像レンズの焦点距離によって、同じ倍率表示の対物レンズでも像の倍率が変わってしまう。オリンパスは、結像レンズの焦点距離が180mm、同焦点距離が45mmの無限遠補正光学系を採用している。

図9 結像方式別の倍率の考え方

図9 結像方式別の倍率の考え方


2-3.収差補正方式

収差補正方式には、対物レンズと接眼レンズの組合わせによって補正する「コンペンゼーション方式」と、それぞれのレンズを単独で補正する「単独補正方式」がある。


コンペンゼーション方式

コンペンゼーション方式は、対物レンズと接眼レンズで収差補正を分担する方式で、対物レンズで+の収差を残し、接眼レンズの-収差で打ち消すという考え方である。有限補正光学系で多く採用されていたが、無限遠光学系でもこの方式のものがある。対物レンズで若干の収差を残し、接眼レンズで残した収差を補正するという組合わせで全体の収差補正をするため、対物レンズでできる中間像には倍率の色収差(視野の外側の縁全周が黄色に見えたりする)が残っていることがある。


単独補正方式(コンペンゼーションフリー)

単独補正方式は、多くの無限遠補正光学系で採用されており、対物レンズ、接眼レンズそれぞれが個々に収差補正を行う方式である。独立して収差補正をするため、単独補正によりレンズ自身の性能を発揮でき、いろいろな用途で高性能を発揮できる。


参考

【試料を上下しても大きさが変わらない顕微鏡の作り(テレセントリック光学系の話)─顕微鏡の特徴】

すべての主光線が「試料側」「像側」の空間で、光軸に平行(無限遠)となる光学系を「テレセントリック光学系」という。
これを実現するためのレンズがテレセントリックレンズである。

図10 像側が無限遠のテレセントリック光学系
図10 像側が無限遠のテレセントリック光学系

図10は、開口絞りをテレセントリックレンズの物体側に置いた図である。光線は絞りを通り、レンズを出た後、像側で光軸と平行になる(像側テレセントリック)。このため、像を作る位置が前後しても像の大きさは変わらない。

図11 試料側が無限遠のテレセントリック光学系
図11 試料側が無限遠のテレセントリック光学系

図11は、テレセントリックレンズの像側に絞りを置いた図である。光線は光軸に平行にレンズに入り、その他の光線は絞りによって遮られる。そのため物体の1点から出てレンズに入る光線は光軸と平行になる(物体側テレセントリック)。光軸に平行な光線だけが絞りを通過するため、物体を前後に動かしても像の大きさは変わらない。


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