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Microscope optical principle - Microscope performance (Japanese text only)

顕微鏡の光学原理 ~顕微鏡の能力~ 


3.顕微鏡の能力
3-1.分解能と開口数

顕微鏡の性能は、標本を見やすい大きさに拡大できるかだけでなく、標本の細部を正しく見分けることができるかが重要なポイントである。これは、顕微鏡の分解能と開口数に大きく左右される。


分解能(Resolving Power)

顕微鏡の目的は、標本を細部に渡って十分に識別し、肉眼で見えるように拡大することである。このとき、微小な2点を見分けることのできる最小の距離を「分解能」と呼び、この距離が近いほど高分解能ということになる。
顕微鏡の分解能が不十分だと、見たい部分がぼやけて見えてしまうため、正しい観察ができなくなってしまう。


開口数(NA:Numerical Aperture)

それでは、十分な分解能を得るためには何が必要かを考えてみよう。
顕微鏡で標本の細部まで見分けるためには、十分な明るさが必要である。そのためには、顕微鏡の光路に多くの光を取り入れることが必要になってくる。つまり、対物レンズがいかに多くの光を取り入れられるかが、十分な分解能を得るための条件となる。
対物レンズが光を集められる範囲を「開口数」という。開口数が大きいほど広範囲の光を集めることができるため、分解能も向上することになる。

図1 開口数と分解能の関係
図1 開口数と分解能の関係


レベルアップ:開口数と分解能の求め方

  • 開口数(NA)は、対物レンズの仕様値の1つである。対物レンズは、液浸系と乾燥系に分類できる顕微鏡の構成と仕様 ~対物レンズ~ 2-1.基本仕様参照)。液浸系対物レンズでは、開口数を求める場合、標本とレンズの間にある水やオイル(媒質)の屈折率(n)も考慮する必要がある。液浸系対物レンズでは、開口数を求める場合、標本とレンズの間にある水やオイル(媒質)の屈折率(n)も考慮する必要がある。
  • 主な媒質の屈折率
    空気:1.0
    油浸オイル:1.52
    水:1.33
    図2 乾燥系対物レンズの開口数
    図2 乾燥系対物レンズの開口数
    図3 液浸系対物レンズの開口数
    図3 液浸系対物レンズの開口数
  • 分解能
    分解能(δ)は、下式から示されるとおり、開口数と波長にのみ依存する値である。
    分解能 式
    λ:波長(目視観察では550nmを使用)

コラム:いろいろな分解能

一般的に分解能とは、「違いを認識できる最小単位」のことを指す。したがって、機器によって分解能の定義は異なる。
たとえば体重計の場合、100g単位で計測できる機器であれば分解能は100gということになり、10g単位で計測できる機器ならば10gとなる。また、温度計であれば、分解能は1℃や0.1℃ということになる。
ただし、分解能は対象となる物体をどこまで細かく見分けられるかということなので、測定の正確さとは異なることに注意しよう。
視力検査に用いられるランドルト環(C字型の環)は、目から所定の距離だけ離れた位置にある物体に対する、眼の分解能を測る目安にもなる。すなわち、見分けられるC字の欠けている部分の幅が、その距離における眼の分解能とも言える。


倍率

倍率(M:Magnification)とは、顕微鏡で見る像が実際の標本よりもどれだけ拡大されているかを示す比率のことである。
一般に倍率が高いほど、小さいものをより大きくして観察することができる。しかし、顕微鏡において注意しなければならないのは、単純に、倍率が高ければ標 本がはっきりと(高分解能で)見えるわけではないということである。分解能が不十分であれば、いくら拡大しても標本の細部までは見えない。つまり、分解能 が十分に得られている状態が確保できてはじめて、倍率が有効に機能するのである。

図4 同じ倍率による分解能の違い
図4 同じ倍率による分解能の違い


レベルアップ:顕微鏡の有効倍率の範囲

有効倍率とは、標本を正しく観察できる倍率の目安であり、開口数(NA)と顕微鏡の総合倍率(M)から下式の範囲が有効とされている(目視観察の有効倍率)。
目視観察の有効倍率
なお、「1000NA」を超える倍率は、見分けるために十分な倍率を超えてしまうので、「無効倍率」または「バカ倍率」と呼ばれている。


3-3.コントラスト

顕微鏡の能力を語る上でもう1つ重要な要素がコントラストである。
顕微鏡観察では、標本が明暗や色の差ではっきり見えることが必要である。この明度や彩度の差をコントラストという。
像を観察するには、分解能や倍率だけでは見えず、適度なコントラストが必要である。
照明系の開口数を変えると、対物レンズの開口数が一定値であってもコントラストを変えることができる。

図5 明視野観察における分解能とコントラスト(珪藻)
図5 明視野観察における分解能とコントラスト(珪藻)

a:コンデンサの開口数≧対物レンズの開口数
b:コンデンサの開口数=対物レンズの開口数×0.7~0.8
c:コンデンサの開口数≪対物レンズの開口数

図6 コンデンサの開口数と対物レンズの開口数の比較
図6 コンデンサの開口数と対物レンズの開口数の比較

図7 観察法とコントラスト
図7 観察法とコントラスト


3-4.焦点深度

焦点深度(DOF:Depth of Field)とは、顕微鏡で標本上のある1点にピントを合わせたときに、同時にピントが合って見える範囲のことである。焦点深度が深いと、厚みのある標本でも全体にピントが合って、はっきり見える。
逆に焦点深度が浅いと、ピントの合う範囲が狭いため、標本にピントを合わせるのが難しくなる。
 


レベルアップ:焦点深度の求め方

焦点深度は対物レンズの開口数(NA)と総合倍率(M)に逆比例する。つまり、開口数と倍率が大きくなると、焦点深度が浅くなる。
肉眼で観察する場合の焦点深度は下式で表される。
焦点深度
n:媒質の屈折率
250000:明視距離
ω:眼の分解能(5’=0.0014)
λ:波長(目視観察では550nmを使用)


3-5.像の明るさ

10倍の対物レンズでちょうどよい明るさ(Brightness)に見えた像が、40倍や50倍の対物レンズに切換えると暗くなり、逆に40倍や50倍でちょうどよい明るさの像が、10倍に切換えると明るすぎて観察しにくいということが起こる。
これは、対物レンズによって、ちょうどよい明るさというものが存在するためである。
一般には、高倍率の対物レンズほど、像は暗くなる。


レベルアップ:像の明るさの求め方

像の明るさは開口数(NA)の2乗に比例し、総合倍率(M)の2乗に逆比例する。
つまり、開口数が大きいほど像は明るくなり、倍率が高いほど像は暗くなる。
像の明るさ(K:定数)


チェックポイント

  • 顕微鏡の能力を決める要素には「分解能(=開口数)」「倍率」「コントラスト」がある
    ・分解能は違いがわかる最小の距離で、開口数に依存する
    ・コントラストは明暗や色の差である
    ・倍率は標本を眼で見える大きさまで拡大したときの物体の大きさと像の大きさの比率である
  • 開口数の大きな高倍率の対物レンズを使うと、分解能は向上するが、像が暗くなると共に、焦点深度が浅くなり、ピント合わせが難しくなる

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