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アプリケーション

FV3000による未分化ES細胞タイムラプスイメージング:新しい蛍光プローブFucci(CA)による細胞周期解析に貢献


Fucci(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator: フーチ) は、生細胞の細胞周期の進行を細胞核の蛍光の色によって観察することが出来る蛍光プローブです。2017年に新規開発されたFucci(CA)は、従来のFucciと比較し、G1期においてmCherry(赤)が最初から強く光り、終了とともに減光する*ので、盛んに分裂する細胞の短いG1期を確実に捕らえることができます。また従来では難しかったS期とG2期も区別できるようになりました。

*mCherryを用いたプローブ、mCherry-hCdt1 (1/100) Cy (-)が激しく分解されるため

従来型Fucci(SA)

従来型Fucci(SA)

新型Fucci(CA)

新型Fucci(CA)

図1:Fucci(SA)と Fucci(CA)による細胞周期可視化

未分化ES細胞で光毒性の少ないタイムラプスを撮影

盛んに増殖する未分化ES細胞はとても繊細で、光ダメージを受けると増殖スピードが落ちてしまいます。未分化ES細胞の長時間の蛍光タイムラプスイメージングは簡単ではありません。そこでFV3000を使用することで高感度検出に伴うレーザーパワー低減を図ったところ、未分化ES細胞本来の細胞周期動態を解析することができました。57時間にわたるタイムラプス撮影において、最初の36時間に3回の細胞分裂を完全追跡することができました。

図2:Fucci(CA)2.1を発現したES細胞のタイムラプス撮影動画

撮影条件
サンプル:マウスES細胞 
対物レンズ:シリコーンオイル浸対物レンズUPLSAPO30XS
顕微鏡:FLUOVIEW FV3000
レーザー:445 nm(AmCyan、青), 594 nm(mCherry、マゼンダ)

短いG1期の時間を特定することに成功

Fucci(CA)を使うと、細胞核がG1期のはじめから明るく赤に光りG1期の終了とともに素早く消えるため、増殖が盛んな未分化ES細胞でも、その短いG1期を完全に追跡することができます。タイムラプス実験の結果から、マウスのES細胞の細胞周期一周がおよそ11時間であること、その中でG1期はわずか1時間程であることを一細胞レベルで確認することができました。

図3:Fucci(CA)2.1を発現する単一細胞核の蛍光強度の経時変化

図3:Fucci(CA)2.1を発現する単一細胞核の蛍光強度の経時変化

実験を可能にしたFV3000の技術

高感度なTruSpectral分光システムとGaAsP検出器

従来に比べ40%以上効率よく蛍光シグナルを回収できる透過型回折格子を採用した新分光システム「TruSpectral」を搭載。また、量子効率の高いGaAsP検出器により、微弱な蛍光シグナルを捕らえることが可能です。

3Dの長時間ライブイメージングに適したシリコーンオイル浸対物レンズ

生体標本と屈折率の近いシリコーンオイルを使用することで、長時間ゆがみのない鮮明な3次元画像の取得が可能です。特にUPLSAPO30XSは広視野、長作動(0.8mm)、高NA(1.05)のため、細胞塊・スフェロイドのイメージングに適しています。

阪上-沢野 朝子先生からのコメント

マウスのES細胞は未分化状態で3次元的に盛り上がるため、一連の増殖をモニターするためには、XYZTイメージングが必要です。光毒性の感受性が高いにも関らず、このイメージングのために何度もレーザーでスキャニングすることになり、結果として、正常な細胞周期を刻めないことになります。しかし、FV3000を使った撮影では、正常な状態を反映する画像取得ができました。増殖が盛んな未分化ES細胞の細胞周期においてG1期が約1時間であることがわかり、意義ある実験ができました。

アプリケーションノート制作にご協力賜りました先生:
理化学研究所 脳神経科学研究センター 細胞機能探索技術研究チーム

楊 正博先生

楊正博先生
(本イメージング実験を担当)

阪上-沢野 朝子先生

阪上-沢野朝子先生

宮脇 敦史先生

宮脇敦史先生
(チームリーダー)

上記研究内容の詳細は下記文献をご参照下さい。
論文:Molecular Cell
発表年:2017年
タイトル:Genetically Encoded Tools for Optical Dissection of the Mammalian Cell Cycle
著者:Asako Sakaue-Sawano, Masahiro Yo, Naoki Komatsu, Toru Hiratsuka, Takako Kogure, Tetsushi Hoshida, Naoki Goshima, Michiyuki Matsuda, Hiroyuki Miyoshi, and Atsushi Miyawaki.

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