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ハロゲンランプに代わる、高輝度高演色を実現したTrue Color LED

近年の顕微鏡の多くは、明視野観察にLED光源を使用しています。技術の進歩により、現在のLED顕微鏡は、昼光と同様のスペクトルを持つ光源を備え、色温度の範囲は5000K〜7000Kとなっています。 しかし、長年にわたり、光源の演色性が標本の観察結果に大きな影響を及ぼす病理研究等の顕微鏡の分野では、カラーフィルターを備えたハロゲンランプが使用されてきました。このような分野の研究者たちにLED光源に切り替えてもらうには、適切な色温度のニーズを満たすことが必要でした。1つの波長を除いてすべてがハロゲンランプと同じように観測できる場合でも、その1つの色が重大な見落としや誤判断につながる可能性があるからです。 ディスカッションやトレーニング時には、大人数で標本の観察を行います。 LED光源でもこれを可能にするためには、ハロゲンランプと同等以上の明るさを実現しなければなりません。オリンパスはフィルターを備えたハロゲンランプと同等以上の色再現性と明るさのLED光源の開発を目指しました。

図1:ハロゲンランプ(左)とTrue Color LED(右)

図1:ハロゲンランプ(左)とTrue Color LED(右)
 

高い色再現性を目指して

より環境に優しいLEDでハロゲンランプと同等の演色性を実現することは容易ではありませんでした。まず、研究者の協力によって提供された評価を定量化することから始めました。 LEDとハロゲンランプでの観察を比較したとき、「色の濃淡が異なる」、「サンプルが以前より青みがかって見える」、「少し赤みが必要である」というコメントがありました。色みの定量化には、JIS(日本工業規格)などの国際規格で定められたカラーチャートを用いた標準的な方法がありますが、このカラーチャートの色は、顕微鏡で観察されるサンプルの色と正確に一致していなかったため、「実際に観察された色」のデータをまとめる必要がありました。そこで、研究者とのやりとりを繰り返し、顕微鏡で定期的に観察する標本の色を測定しました。このようにしてオリンパスの評価色と標準値の定義に使用した色を比較し、微妙な色の違いを定量化することに成功しました。可視光線のハロゲンランプは滑らかで連続的な特性を持っていますが、一般的な白色LEDの光強度は400〜430 nmと600〜700 nmと振れ幅があります。強度の弱い波長範囲を補正するために、さまざまな種類のLEDを組み合わせて使用することを試みました。しかし、この方法では色再現性を保つことが困難になります。従来の光源に近い色みを実現する色補正フィルターも試しましたが、十分な効果を得ることはできませんでした。

波長(NM)

波長(NM)

一般的なLED
一般的なLED
ハロゲンランプ + フィルター
ハロゲンランプ + フィルター

図2:フィルター付きハロゲンランプと一般的なLEDとのスペクトル分布比較
 

これらの失敗を受け、さまざまなタイプのLEDにおいて可視範囲の波長不在を減らすための方法を調べました。その結果、私たちは405 nmの励起RGB蛍光体システムを備えたLEDを開発することにしました。

複数の蛍光体を組み合わせて白色を達成

複数の蛍光体を組み合わせて白色を達成

複数の蛍光体を組み合わせて白色を達成

図3: 複数の蛍光体を用いた近紫外線LEDの光スペクトル分布
 

病理研究に携わる研究者の方々に、新しいLEDのプロトタイプで標本の観察行い、下記の質問に回答して頂きました。

-ハロゲンランプと比較して、色味に違いはありますか?
-もしあるとしたら、その違いは観察結果に影響を及ぼしますか?
-本来、色味はどのように見えているべきですか?

研究者の方々とのこれらの質問に関するやりとりを経て、新しいLEDランプはオリンパスのオリジナルの評価色として定義した標準値に達し、フィルター照明付きハロゲンランプと同等の色みを達成することができました。

ハロゲンランプ + フィルターと一般的なLEDとの比較
ハロゲンランプ + フィルターと一般的なLEDとの比較
ハロゲンランプ + フィルターとTrue Color LEDとの比較
ハロゲンランプ + フィルターとTrue Color LEDとの比較

図4:フィルター付きハロゲンランプと一般的なLEDおよびTrue Color LEDとの比較
 

使いやすさを追求した高輝度化

高演色白色LEDがハロゲンランプと同等以上の輝度を実現するには、電流をあげる必要があります。ただし、LEDにながす電流を大きくすると熱を発し、寿命が短くなってしまいます。 LEDの寿命を縮めることなく明るさを改善するためには、照明効率を最適化しなければなりません。この方法においてポイントとなるのはつや消しディフューザーです。つや消しディフューザーは、均一な照明を実現するために効果的な装置ですが、輝度は低下してしまいます。これらのフィルターの拡散角度は、ハロゲンランプに比べてLEDの方が小さくなります。これは、均一な照明を維持しながら、より高い輝度を実現できることを意味します。

図5:ハロゲンランプ(左)とTrue Color LED(右)との拡散比較

図5:ハロゲンランプ(左)とTrue Color LED(右)との拡散比較
 

こうした困難な条件を克服し、目的の明るさを得るために、光出力の効率の向上、LEDランプの形状、および拡散板の散乱特性を考慮した光学シミュレーションを使用して最適化を検討しました。光学、機械、および電気の開発チームが協力して、照明システム全体をコンパクトにすることができる機械レイアウトと放熱構造を設計しました。私たちの目標は、光源の平均寿命を50,000時間以上にすることでした。それを達成するため、時間の経過に伴う光強度の変化、放熱構造、色再現、および消費電力に関連するパラメーターを評価する研究を繰り返し行い、オリンパスが現在提供している長寿命な高輝度高演色の白色LED光源を開発することができました。

まとめ

オリンパスの取り組みにより、ハロゲンランプと同等以上の演色性と輝度を提供するTrue Color LEDが生まれました。このLEDランプを備えたBX53顕微鏡は、明視野観察やその他の観察方法に有用です。輝度レベルは、同時観察のためのマルチディスカッションで使用するのに十分な強度であり、信頼できる標本観察に必要とする色再現性を提供します。

図6:26名用マルチヘッドシステム(左)と観察画像(右)図6:26名用マルチヘッドシステム(左)と観察画像(右)

図6:26名用マルチヘッドシステム(左)と観察画像(右)

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