顕微鏡観察では、試料にどのように光を当てて観察するかで、その見え方は大きく変わる。
光がどのような道を通るのかを知り、試料特性に合わせて最適な方法で光を当てるには、どのような照明法を使えばよいのかを学習する。
顕微鏡の照明は、対物レンズの性能を十分に発揮でき、見えの調整ができる照明が理想的な照明といえる。次の4項目が挙げられる。
クリティカル照明(Critical Illumination)
クリティカル照明は、光源像を試料面上に投影させる照明法である。レンズの配置によって試料面上に光源の像が作られ、最大輝度で試料を照明することができる。
しかし、光源像が直接試料面に投影されるため、光源像の濃淡が試料面に重なって照明ムラが生じ、均一な照明が得られない。特に、光源がハロゲンランプの場合は、試料面が光源の形状に明るくなる。
現在、ほとんどの顕微鏡で次項で説明するケーラー照明が採用されており、クリティカル照明は、特殊な用途にのみ使用されている。
図1 クリティカル照明
ケーラー照明(Köhler Illumination)
ケーラー照明は、1893年にドイツのケーラー(Köhler)が考案した照明法である。その特徴は、下記の3点である。
図2 ケーラー照明
光源はコレクタレンズを通り、光源像を開口絞り(=前側瞳、コンデンサの前側焦点)の位置に作る。コンデンサを通った光が平行光線になり、試料を均一に照明する。試料を透過した光は、対物レンズの後側焦点位置(=対物レンズの瞳)で像を作る。一方、視野絞りの像は、試料面に作られる。
開口絞りを絞ると照明の開口数が小さくなるため、対物レンズの開口数に合わせた調整ができる。照明する範囲を変えずに、明るさだけを変えることが可能である。また、試料への照明光の入射角が変わるため、像のコントラストや分解能、焦点深度が変わる。
視野絞りを絞ると、開口数に関係なく照明される範囲が狭くなる。実視野より広い光の入射をカットすることができ、像をより鮮明にさせることができる。
ケーラー照明には、試料を透過した光を観察する透過型と、試料から反射した光を観察する落射型がある。落射ケーラー照明では、対物レンズがコンデンサの働きを兼ねる。対物レンズには開口絞りがないので、投光管の中に開口絞りを設けている。
コラム:なぜフィラメントから出た光で均一に照明できるのか
図2をよく見ると、フィラメント上の1点から出た光が試料面上で平行光線になっている。つまり光源がコイル状になっていても、その表面の各点から出た光の全てが試料面上で平行光線になるため試料面はあらゆる角度から平行光線で照らされることになる。その結果、試料面の1点にあたる光線の数は試料面上のどの場所でも全て同じになる。
位相差法や微分干渉法が出現する前に、無染色の透明な試料を観察する方法として使われた。コンデンサの絞りを絞って、光軸から外れた位置にセットする。回折光の一方を遮断するような光の当て方をするため正確な分解能は得られないが、ビデオ画像化することで微分干渉像に近い効果が得られると言われている。
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