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こだわりの対物レンズ選び ~収差にこだわる~

こだわりの対物レンズ選び ~収差にこだわる~ 

顕微鏡観察をしていて「見たいものがうまく見えない!」という場合、「光の性質」と、「レンズ性能」という2つの要素を考える必要があります。
これまでご紹介した「開口数」と「浸液」は、「光の性質」に由来する分解能の限界値や媒質による屈折率の違いを考慮して、適切なレンズを選ぶというものでした。
今回はこだわりの対物レンズ選びの3回目。「収差」についてご紹介します。

収差とは、光が「レンズ」を通過して結像するときに、像がボケる現象のことです。
レンズを使って集光するということ自体から原理的に生まれてしまう、エラーともいえるものです。このエラーを最小にするため、素材や光学設計が改良された様々な種類の対物レンズが開発されてきました。これらの対物レンズの特徴や収差の特性を理解することで、サンプルの状態を適切に反映した蛍光像を得ることができます。


その端、通るべからず? ~ザイデル収差~

19世紀の科学者ルートヴィヒ・ザイデルによって分析された「ザイデル収差」は、レンズの中心を通る場合と周辺部を通る場合とでズレが生まれ、像のエラーが起こるというものです。単一波長の光でも起こることから「単色収差」とも呼ばれ、以下のように大きく5つに分類することができます。

  1. 球面収差

  2. コマ収差

  3. 非点収差

  4. 像面湾曲

  5. 歪曲収差

これらが複合して像にボケやズレをもたらします。

実際の対物レンズでは、複数の凸レンズと凹レンズを組み合わせることでこれらの収差を除去しています。
ここで、解像に効く「1.球面収差」は全ての対物レンズで補正がされています。さらに、プラン(PlanもしくはPL)と記載されている対物レンズでは、「視野中心から離れるほど大きくなる収差」(2.コマ収差、3.非点収差、4.像面湾曲、5.歪曲収差)に対しても補正がされています。

現在生産されている対物レンズのほとんどはこのプラン対物レンズですが、昔の対物レンズの中にはプランとして補正されていないものもあります。機会がありましたら一度お手元のレンズをチェックしてみてください。

下の写真は、培養細胞(PtK2)の微小管を「補正済の対物レンズ(Plan)」とそうでない対物レンズで撮り比べたものです。ご覧いただくと、Plan補正がかかっている右の写真の方が、画面の端までシャープな画像になっているのがおわかりいただけると思います。

培養細胞(PtK2)の微小管

培養細胞(PtK2)の微小管


色が変われば屈折率も変わる ~色収差~

つぎに、多重染色によって蛍光イメージングを行う際に意識した方が良い収差が、「色収差」です。色収差とは、光の波長(色)の違いによって屈折率が異なり、結像位置も異なってくる現象のことです。具体的には波長が短い光の方が、レンズを通過した光の結像位置は短くなります。(下図参照)

単レンズによる色収差

単レンズによる色収差

こうした「色収差」も、特性が異なる凸レンズや凹レンズを組み合わせることで補正ができます。
本シリーズの第1回「こだわりの対物レンズ選び ~開口数にこだわる~」で紹介した対物レンズの性能のうち、「対物レンズの種類」と表現した「UPlanSApo」の「Apo」は、この色収差の補正度合いを意味しています。

アポクロマートレンズによる色収差の補正

アポクロマートレンズによる色収差の補正

この色収差の補正度合いは、目的に応じていくつかのタイプがあります。赤(656.3nm)と青(486.1nm)の2色の光について補正しているレンズをアクロマート(Achromat)、これらに加えて紫(435.8nm)についても補正しているレンズをアポクロマート(Apochromat)、そして紫の光について、アクロマートとアポクロマートの中間程度の補正をしているレンズをフルオリート(Fluoriteまたはセミアポクロマート)と呼んでいます。

波長ごとの合焦位置

波長ごとの合焦位置

例えば、対物レンズにApo(APO)と記載が入っていたらアポクロマート、FLとあったらフルオリート、Ach(ACH)とあるか又は記載がない場合はアクロマートレンズ、ということになります。対物レンズ選びの際の参考にしてみてください。

この色収差がしっかり補正されていると、広帯域にわたる蛍光試薬を使ったマルチカラー観察においても、各色でピントズレのないシャープな蛍光像を得ることができます。


対物レンズは進歩する

オリンパスでは常に最高性能を目指してレンズ素材の見直しや、光学設計の改良を続け、収差が起こりにくいレンズを開発し続けています。
2004年に発売した「UIS2」シリーズは、それまでのレンズと比較し、より広い波長範囲での色収差を抑え、サンプル状態をより正確に反映した蛍光像が得られるようになりました。

UPLSAPOシリーズの色収差

UPLSAPOシリーズの色収差

上の図は、色収差による焦点面のズレを当社のUIS2シリーズと旧シリーズで比較したものです。旧シリーズに比べ、UIS2シリーズでは短波長、長波長での焦点ズレを少なく抑えています。
その結果、これまでは大きな色収差が生まれていた近赤外蛍光の観察においても、焦点ズレが小さく、明るい蛍光像を得られるようになりました。
下の写真は、培養細胞(PtK2)の微小管を緑色の蛍光色素Alexa488と、767nmの近赤外蛍光を発するCy7とで染色し、観察した蛍光像です。

培養細胞(PtK2)の微小管

培養細胞(PtK2)の微小管

このほかにも、「UIS2」シリーズは以下の点で従来のレンズから進化しました。

  1. 環境への負荷を低減したエコガラスを使用

  2. 幅広い波長域で透過率を向上

  3. 自家蛍光の低減(ノイズ低減)

このように時代と共により扱いやすく、サンプルの状態をより正確に観察できる対物レンズが開発されています。もしお持ちの顕微鏡で鮮明な像が得られない場合は、最新の対物レンズを試してみることで解決できるかもしれません。


本記事で紹介されている製品の関連情報はこちら

UPlanSApo対物レンズ(UPLSAPO)

UIS2対物レンズシリーズ

蛍光顕微鏡


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