正立、実体のいずれの顕微鏡も、科学教育で重要な役割を果たします。私たちの多くは、おそらく高校かそれ以前に顕微鏡または実体鏡を使っているでしょう。これらの器具により、平滑筋、細胞分裂または昆虫の細部などの、目に見えない非常に小さな構造の詳細を生徒が観察できるようになります。また、生徒はこれらの器具により、本やオンラインで画像をただ見るのではなく、実践的な経験を得ることができます。特に教育用顕微鏡は多くの生徒が使用し、ほとんどの生徒は顕微鏡を扱った経験がない場合が多いことから、教育用顕微鏡の購入を検討するにあたり、確認すべき機能がいくつかあります。
1. 顕微鏡の種類—実体顕微鏡か正立顕微鏡か
授業で生徒が何を観察するのかを理解することが重要です。サンプルが大きく、低倍率での観察が必要ならば、実体顕微鏡が一番の選択でしょう。実体顕微鏡は、生物学の解剖および昆虫や植物、骨、化石、石、鉱物、金属、その他多くの物質の観察に最適です。実体顕微鏡では、標本を良好な3次元視野で観察可能で、生徒はサンプルをより詳細に確認できます。また、作動距離が長く、サンプルを扱いやすいのも特徴です。
顕微鏡のサンプルを高い倍率で観察する場合は、正立顕微鏡が一番の選択です。これらのサンプルは、通常スライドガラスに載せ、固定し、染色します。しかし、(コントラストは低くなりがちですが)無染色のサンプルを、開口絞りを閉じてコントラストを上げ、明視野照明で観察することも可能です。正立顕微鏡は、細菌や菌類、カビ胞子、肌細胞、組織切片、植物切片、その他の生体サンプルの観察に最適です。高倍率により、生徒は肉眼では見えない対象を視認することができます。
実体顕微鏡 | 正立顕微鏡 |
2. サイズ—コンパクトで軽量な顕微鏡がおすすめ
顕微鏡または立体鏡の購入あるいは買い替えを検討する場合、特に頻繁に移動させる場合は、本体サイズへの考慮が重要です。さらに、使用していない時、どこに保管するかも考える必要があります。軽量で、解体することなく移動が可能な、小型ユニットが便利です。誤って落としたり、損傷したりすることがないように、選択する顕微鏡モデルが容易かつ気楽に持ち運べるかを確認するのが良いでしょう。落下や移動中の紛失を防ぐため、可動部品を顕微鏡に固定できるモデルもあります。接眼レンズ、対物レンズまたは電源コードの紛失は大きな不便を招きますが、システムに固定できる機能があれば問題は解決します。
固定接眼レンズ フォーカスロック ロックピン | 3. 教室での過酷な扱いに耐えられる耐久性考えるべきもう1つの特徴は、顕微鏡がいかに丈夫で耐久性があるかです。これらは教育環境で使用されるため、顕微鏡の使用経験が無いであろう多くの生徒が操作します。顕微鏡が、衝突、移動または落下など、ある程度の外力に耐えられるかを確認するのが良いでしょう。固定接眼レンズ、固定対物レンズ、ステージ固定ピンなどの組み込み安全機能は、顕微鏡が機能するために必要な部品が紛失するリスクを低減します。顕微鏡には鏡筒が取り外し可能なものが多く、移動中に落下するおそれがありますが、鏡筒をアームに固定する固定ピンがあれば、落下予防が可能です。また、観察中に発生する対物レンズの損傷を防ぐことも重要です。フォーカスロック機能があれば、生徒がサンプルに焦点を合わせ過ぎ、誤ってサンプルを対物レンズにぶつけてしまうことを予防できます。光源については、多くの顕微鏡メーカーがハロゲンから発光ダイオード(LED)に移行しています。LEDは耐久性が非常に高く、長持ちします。LEDは熱放射がほとんどなく、その寿命は顕微鏡の寿命よりも長いです。 |
4. 使いさすさが効果的な指導と学習の鍵
使いやすさは、教育用顕微鏡の最も重要な機能です。教育者のほとんどは、各生徒の顕微鏡を調節、最適化するよりも、授業やスライドの観察に時間を費やしたいと思うでしょう。一部の顕微鏡メーカーは、各顕微鏡でケーラー照明の設定を行う必要性を減らす固定式ケーラー照明を提供しています。ケーラー照明は、標本の照明を最適化するための、顕微鏡法における手法です。よりレベルの高い授業では、ケーラー照明の調節方法を指導する場合があるので、どちらも行える顕微鏡が良いでしょう。前述のように、使用する度に顕微鏡を組み立てる必要がなければ、教育者の時間が無駄になりません。生徒がただコンセントを差し込むだけで、電源が入り、接眼レンズが調節され、サンプルの観察が開始できる顕微鏡が理想的です。
5. 良好な光学系が質の高い顕微鏡法指導に貢献どのような顕微鏡においても、光学系はその中心をなします。光学系により、サンプルの細かな詳細でさえも視認できるため、顕微鏡に質の高い光学部品が備えられていることが重要です。学生がサンプルのより多くの部分を一度に観察でき、画像の焦点が領域全体に合うことから、広視野観察が行えてフラット画像を取得できる顕微鏡があると実に有用です。いくつかの倍率を備えた対物レンズがあると、柔軟性が向上します。これにより、生徒はサンプルの全体を観察(低倍率)できると同時に、関心のある部分はより大きく観察(高倍率)できます。最後に、光源が重要なポイントです。前述のように、ほとんどのメーカーがLEDを使用しています。LEDは、サンプル全体に照明を均一に当て、その演色により、サンプルの実際の色を引き立たせます。 |
6. 画像表示、画像共有で学習を促進 | |
教育用顕微鏡に備わっていると良いもう1つの機能は、簡単に画像の共有や表示ができるように、ワイヤレス(WLAN)で接続可能なカメラを取り付けられる機能です。ワイヤレス接続機能がもたらす柔軟性により、能率が上がり、教育者の時間を無駄にせず、費用を抑えることが可能です。場合によっては、教育者が素早くスライドで画像を生徒に見せることができ便利です。デジタルカメラでは、教育者がクラス全員と顕微鏡画像をリアルタイムで共有でき、生徒が1人ずつ前に出てサンプルを観察する必要がありません。生徒もデジタルカメラを使って自分のスライド画像を撮影し、後で参照したり、クラスメートと画像を共有したりすることもできます。 |
選択する顕微鏡が自分のニーズに合っていることを確認
顕微鏡は有用な指導ツールであり、生徒は実践的な経験を得ること、そして、より詳細に標本を観察することができます。教育用顕微鏡には多くの種類がありますので、この手引が、指導目的に合った、最適な顕微鏡選びのお手伝いになれば幸いです。