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エビデント対物レンズの名称から光学性能を読み取る方法

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対物レンズ

対物レンズは顕微鏡システムの光学性能を決める重要な要素の1つです。エビデントでは、ライフサイエンス分野や産業分野などの幅広い分野向けに、合わせて200種類以上の対物レンズを取り扱っています。これだけ多くの対物レンズがあると、ご自身のアプリケーションにどの対物レンズが最適か、迷う方もいらっしゃるかもしれません。用途に合わせて正しい対物レンズを選択していただけるよう、今回のブログでは、対物レンズの名称から光学性能を読み取る方法を紹介していきます。

対物レンズの名称と光学性能

ライフサイエンス分野向け対物レンズと産業分野向け対物レンズでは、対物レンズの名称ルールが異なります。使用頻度の高い観察条件や観察法に絞って、分野ごとに、対物レンズの名称と光学性能を解説します。

ライフサイエンス分野向け対物レンズ

UPLXAPO100XOPHという対物レンズを例に説明します。対物レンズ名称を、(1)~(6)の6つの部分に分けて理解することができます。

Microscope objective specifications for life science

番号 何に関わる表示項目か 種類
1 観察条件 U:ユニバーサル
L:長作動距離
2 像面の平たん性 PL (or Plan)
3 色収差 ACH
FL
APO
SAPO
XAPO
4 対物レンズ倍率 1.25X–150X
5 浸液 なし
O
W
6 観察法 なし:明視野観察用
PH:位相差観察用

1. 観察条件に関わる表示項目

U: ユニバーサル対物レンズ

微分干渉性能とU励起が可能な蛍光性能の2つを、基本性能として高いレベルで両立させた対物レンズです。明視野観察やB励起・G励起による蛍光観察はもちろん、微分干渉観察やU励起による蛍光観察にお使いいただけます。エビデントの顕微鏡システムに合わせた瞳位置などの特徴により微分干渉観察を可能としています。また、U励起波長である365 nmで良好な透過率を持ち、低い自家蛍光を持つことで、U励起による蛍光観察を可能としています。

※微分干渉観察可否について、一部例外があります。

L: 長作動対物レンズ

作動距離(ピントを合わせたときの、対物レンズの先端から標本面までの距離)が長い対物レンズです。一般に、解像度と作動距離はトレードオフの関係にあります。対物レンズと試料との間に空間が欲しい場合や深部観察を目的とする場合には、解像度よりも作動距離を優先してお選びください。

2. 像面の平たん性に関わる表示項目

PLまたはPlanが付いている対物レンズは、視野周辺部の像面湾曲が補正されています。視野中心だけでなく周辺までピントが合い、平たんな像を得られるため、特に撮影に適しています。

3. 色収差

記号ごとに、色収差の補正範囲が異なります。ACH、FL、APO、SAPO、XAPOの順に、色収差がより良好になります。色収差が良好に補正されていると、広帯域にわたる蛍光試薬を使ったマルチカラー観察においても、各色でピントズレのないシャープな蛍光像を得ることができます。

ACH: アクロマート。2色(青・赤)の色収差を良好に補正
FL: セミアポクロマート。3色(青・緑・赤)の色収差を良好に補正
APO: アポクロマート。3色(青・緑・赤)の色収差をFLよりもさらに良好に補正
SAPO: スーパーアポクロマート。可視域から赤外域(435~1000 nm)で色収差を良好に補正
XAPO: エクステンディッドアポクロマート。可視域から赤外域(400~1000 nm)で色収差を良好に補正

※SAPOとXAPOは、色収差のグレードを表す、エビデント独自の名称です。ACH、FL、APOの詳細な定義はISO に記載がありますので、ISO19012-2をご覧ください。

4. 対物レンズ倍率

Xの前に記載された数字は、焦点距離180mmのエビデント結像レンズと組み合わせた場合における対物レンズの倍率を表します。エビデントでは、1.25倍から150倍の対物レンズを取り揃えています。

5. 浸液に関わる表示項目

浸液なしの観察に使用する乾燥系対物レンズ(ドライ)か、浸液を使用する観察用の液浸系対物レンズかを表します。液浸系対物レンズの場合には、使用する液体が記号であらわされます。

記号なし: 乾燥系対物レンズ
O: 油浸
W: 水浸

6. 観察法に関わる表示項目

どのような観察法に使用可能かを表します。

記号なし: 明視野観察
PH: 位相差観察

産業分野向け対物レンズ

MPLFLN100XBDという対物レンズを例に説明します。生物用対物レンズと共通の内容もありますが、対物レンズ名称を、(1)~(5)の5つの部分に分けて理解することができます。

Microscope objective specifications for life science

No. Categories Specifications
1 観察条件 M: 金属用(ノーカバー)
LM: 長作動距離金属用
SLM: 超長作動距離金属用
MX: 高NA・長作動距離金属用
2 像面の平たん性 PL (or Plan)
3 色収差 ACH
FL
APO
4 対物レンズ倍率 1.25X–150X
5 観察法

なし:明視野観察用
BD:暗視野観察用
IR:IR観察用

1. 観察条件に関わる表示項目

Mの記号は金属用という意味で、ノーカバー(カバーガラス無)観察用の対物レンズになります。そのほか、作動距離の長さや光学性能に応じて、以下の記号が使用されます。

M: 金属用
LM: 長作動距離金属用
SLM: 超長作動距離金属用
MX: 高NA・長作動距離金属用

2. 像面の平たん性に関わる表示項目

ライフサイエンス分野向け対物レンズの項目(2)と同様、PLまたはPlanが付いている対物レンズは、視野周辺部の像面湾曲が補正されています。視野中心だけでなく周辺までピントが合い、平たんな像を得られるため、特に撮影に適しています。

3. 色収差に関わる表示項目

記号ごとに、色収差の補正範囲が異なります。ACH、FL、APOの3種類があり、ライフサイエンス分野向け対物レンズの項目(3)と同様に色収差性能が定義されています。

ACH: アクロマート。2色(青・赤)の色収差を良好に補正
FL: セミアポクロマート。3色(青・緑・赤)の色収差を良好に補正
APO: アポクロマート。3色(青・緑・赤)の色収差をFLよりもさらに良好に補正

※ACH、FL、APOの詳細な定義はISO に記載がありますので、ISO19012-2をご覧ください。

4. 対物レンズ倍率に関わる表示項目

Xの前に記載された数字は、ライフサイエンス分野向け対物レンズの項目(4)と同様に対物レンズの倍率を表します。エビデントでは、1.25倍から150倍の対物レンズを取り揃えています。

5. 観察法に関わる表示項目

どのような観察法に使用可能かを表します。

記号なし: 明視野観察
BD: 暗視野観察
IR: IR観察

対物レンズの外観

対物レンズの外観には、対物レンズの名称のほか、開口数(NA)、カバーガラス厚、浸液、対物レンズ視野数に関する情報が記載されており、基本的な仕様を知ることができます。以下は、UPLXAPO100XOの例になります。

Microscope objective specifications

A 対物レンズの名称
B 開口数(NA)
C 浸液
D 対物レンズ視野数(OFN)
E 倍率
F カバーガラス厚

もっと詳しく知りたい方へ

エビデントのホームページには、様々な技術内容、製品情報について掲載されています。より詳しい技術的な内容を知りたい方は、内容に応じて以下のリンク先をご覧ください。

対物レンズセレクター

対物レンズの名称だけでは読み取れない、NAや瞳位置などに関する情報は、対物レンズセレクターで調べることができます。

https://www.olympus-lifescience.com/ja/objective-finder/

装置搭載用 顕微鏡コンポーネント

エビデントは、研究・検査・生産設備などのさまざまな装置組み込み用として豊富な顕微鏡ユニットを用意しています。

https://www.olympus-lifescience.com/ja/oem-components/

顕微鏡の構成や光学技術については、以下をご覧ください。

顕微鏡の構成と仕様 その1 ~観察系(対物レンズ)~

https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/03/047/

こだわりの対物レンズ選び ~収差にこだわる~

https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/04/016/

この記事では、対物レンズの名前から光学性能を読み解く方法について説明してきました。適切な対物レンズを選ぶことは、最高の画像品質を実現し、検査や研究を確実に進めるために非常に重要です。

対物レンズ選びにお悩みの方や疑問点がある場合はお気軽にエビデントのサポート窓口までお問い合わせください。サンプルの種類、イメージング手法、開口数、希望する倍率などの要素に基づいて、理想的な対物レンズの選択をご支援いたします。

光学エンジニア

2011年にオリンパス株式会社に入社し、12年間にわたって顕微鏡製品の開発を担当。現在は株式会社エビデント光学開発部門に所属し、対物レンズの光学設計やコンポーネント製品の開発、製品性能の測定技術開発などに取り組む。東北大学で理学修士号を取得。

2024年1月9日
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