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光の反射の概論

光の反射は、光線が面にはね返って方向が変わるときに起こります。 「光の反射」の詳細な説明から、さまざまな種類の反射と画像例まで、概論では光の反射について知っておくべきあらゆることを取り上げます。

光の反射とは何か

光(および他の形態の電磁放射線)の反射が起こるのは、光の波が面や境界に当たり、放射線のエネルギーを吸収せずに波をはね返す場合です。

光の反射の例

可視光反射の最も単純な例は、水たまりの滑らかな水面です。入射光が規則正しく反射して、水たまりの周りの景色をくっきりと映し出します。 水に石を投げ入れると(図1を参照)、水がかき乱されて波ができ、反射光線をあらゆる方向に散乱させて反射を妨げます。

光の反射例を示す画像:水面で反射した光

光の反射の発見者

光の反射に関する最も古い記述の一部は、古代ギリシャの数学者ユークリッドによるものです。彼は紀元前300年前後に一連の実験を行っており、光の反射作用を深く理解していたと思われます。 約1500年後になって、アラブの科学者アルハゼンは、光線が滑らかな面に当たって空中にはね返る作用を正確に示す法則を発表しました。

入射する光の波は入射波、面からはね返る波は反射波といいます。 ある角度で鏡の表面に向かう可視白色光(入射)は、入射角に等しい角度で鏡の表面から空中にはね返ります(反射)。これは、滑らかで平坦な鏡に懐中電灯の光線が当たる作用として図2に示したとおりです。 このように、可視光やその他すべての電磁放射線スペクトル波長において、入射角は反射角に等しくなっています。 この概念は一般に、反射の法則と呼ばれます。 重要なのは、光はその構成色に分離されるのではないということです。「湾曲」や屈折ではなく、すべての波長が等しい角度で反射しているからです。 反射光に最適な面は、鏡やツルツルした金属などとても滑らかなものですが、ほぼすべてのものの表面は、ある程度の光を反射します。

光の反射

光の波が滑らかで平坦な面に入射すると、到達したときと同じ角度で面から反射します。 このチュートリアルでは、可視正弦波光の波における入射角と反射角の関係を検証します。

光は波としてふるまったり、粒子で構成されているようにふるまったりすることから、光の反射については複数の個別の理論が生まれてきました。 波に基づく理論によると、光の波は光源からあらゆる方向に広がり、鏡に当たると、光が到達した角度に応じた角度で反射します。 反射プロセスでは、すべての波が逆さまに反転します。そのため、反転した像が見られるのです。 光の波の形は、光源の大きさと、波が鏡に到達するまでの距離によって決まります。 鏡の近くから発せられた波面は大きく湾曲する一方で、遠くにある光源から発せられた波面はほぼ直線になります。これは、反射角に影響します。

反射の等しい角度を示した画像

波動説とはいくつか重要な部分で異なる粒子説によると、光は小さな粒子(光子)の流れで鏡に到達し、面に衝突するとはね返ります。 粒子はとても小さいため、互いに非常に近づいて(ほとんどくっつき合って)移動し、異なる場所ではね返ります。この反射プロセスによって順序が反転し、鏡像が生まれます。 光が粒子と波のどちらとしてふるまっているかに関係なく、反射の結果は同じです。 反射した光は鏡像を生みます。

物体で反射する光の量と、どのように反射するかは、表面の滑らかさや質感によって大きく異なります。 表面の不完全性が入射光の波長より小さい場合(鏡など)、ほぼすべての光が等しく反射します。 しかし、現実の世界にあるほとんどの物体は、乱反射を生む複雑な表面をしていて、入射光があらゆる方向に反射します。 普段何気なく目にする多くのもの(人、車、家、動物、木など)は、 それ自体が可視光を発するのではなく、入射する自然光や人工光を反射しています。 例えば、リンゴが赤くツヤツヤしているのは、比較的滑らかな表面が赤い光を反射し、赤以外(緑、青、黄色など)の光の波長を吸収しているからです。

光の反射の種類はいくつ?

光の反射は、大きく2種類があります。 鏡面反射は、一定の角度で滑らかな面から反射した光であるのに対して、乱反射は、粗い面で生じるあらゆる方向に反射する光です(図3を参照)。 普段の環境では、鏡面反射より乱反射の方がはるかに多く見られます。

鏡面反射と乱反射

物体で反射する光の量と、どのように反射するかは、表面の滑らかさや質感によって大きく異なります。 この対話式チュートリアルでは、面が滑らかな鏡のような質感から粗く不規則になるにつれて、反射が変化する様子を調べます。

鏡面反射と乱反射の違いを視覚化するため、滑らかな鏡と、粗く赤みを帯びた面という大きく異なる2つの面を考えます。 鏡は白色光のすべての構成色(赤、緑、青色などの波長)をほぼ等しく反射し、反射光は入射光と同じ角度の軌道を進みます。 しかし、粗く赤みを帯びた面はすべての波長を反射するわけではありません。青と緑の構成色をほとんど吸収し、赤い光を反射するからです。 また、粗い面で反射した散光はあらゆる方向に散乱します。

鏡面反射と乱反射を示した画像

鏡はどのように光を反射するか

日常的に目にする鏡面反射の例としておそらく最もわかりやすいのは、日に何度も自分の姿を見るために使う家庭用の鏡に写し出された鏡像です。 鏡が持つ滑らかな反射ガラス面は、見る人の虚像を光から映し出し、それを目に直接反射させます。 「虚」像と呼ぶのは、この像が実際には存在せず(光が作られない)、脳が自然に作り出す想定によって鏡面の後ろに見えるためです。 この作用が最も簡単に見られるのは、見る人の片側に物体を置き、その物体からの反射光が鏡に当たるようにして観察する場合です。

鏡で見られる反射の種類は鏡の形によって異なり、場合によっては、反射される物体が鏡からどれくらいの位置に置かれているかによっても異なります。 鏡は平坦とは限らず、おもしろく役に立つ性質の反射を生み出す、さまざまな構成で作ることができます。 大型の光学望遠鏡でよく見られる凹面鏡は、はるか彼方の星から発せられたかすかな光を集めるために使われます。 曲面で非常に遠くからの平行光線を一点に集めて、強度を強めます。 この設計は髭剃り用や化粧用の鏡でもよく見られ、反射光が顔の拡大像を作り出します。 光沢のあるスプーンの内側は凹面鏡面の性質を示す好例で、この種類の鏡の説明によく用いられます。 スプーンの内側を目に近づけると、目が拡大した正立像が見られます(この場合、目は鏡の焦点より近くなっています)。 スプーンを遠くに動かすと、顔全体を縮小した倒立像が見られます。 像が反転するのは、反射光が鏡面の焦点を通過した後に像が作られるためです。

光の反射の例を示した画像:スプーンの内側と外側に写し出された凸面反射と凹面反射

曲面を持つ他の一般的な鏡は、自動車のバックミラーによく使用されます。鏡の外側の曲面が、車の背後で起きていることを小さいパノラマビューに映し出します。 平行光線が凸面鏡に当たると、光波は外側に反射して分散します。 脳が光線を辿ると、光線が集まる鏡の背後から現れ、小さい正立像が映し出されます(この像が正立なのは、光線が焦点を通る前に虚像が作られるからです)。 凸面鏡は、安全のために廊下や企業内に設置される広角鏡にも使用されます。 曲面鏡の最もおもしろい用途は、ステートフェアやカーニバル、びっくりハウスなどで見られる変わった鏡です。 こうした鏡は、凹面と凸面が混在した作りになっているか、表面の曲率が緩やかに変化しているものが多く、人々が自分を映したときに奇妙な歪んだ反射が作り出されます。

凸面鏡と凹面鏡のシミュレーションとしてスプーンを例にとると、図4に示す木のフェンスのそばに立つ若い女性の反射のようになります。 女性とフェンスの像がスプーンの外側の面(凸面)からの反射の場合、像は正立ですが、スプーンの曲率が変わる端では歪んでいます。 反対に、スプーンの裏側(内側の凹面)に反射させると、女性とフェンスの像は反転します。

凹面鏡

凹面鏡の曲率中心の外側にある物体は、焦点と曲率中心の間に反転した実像を作り出します。 この対話式チュートリアルでは、物体を曲率中心から遠くに動かすと、鏡によって作られる実像の大きさにどのように作用するかを探ります。

凹面鏡と凸面鏡で得られる反射パターンを図5に示します。 凹面鏡の反射面は内側に湾曲し、球体の内側の一部のようになっています。 主軸または光軸に平行な光線が凹面鏡の表面から反射する場合(この例ではフクロウの足からの光線)、鏡の前にある焦点(赤い点)に集まります。 反射面から焦点までの距離は、鏡の焦点距離といいます。 像の大きさは、鏡から物体までの距離と、鏡面に対する位置によって決まります。 この例では、フクロウは曲率中心から遠くにあり、反射した像は上下逆さまになって、鏡の曲率中心と焦点の間にあります。

凸面鏡の反射面は外側に湾曲し、球体の外側の一部のようになっています。 光軸に平行な光線は、鏡の後ろの焦点から分岐した方向の面から反射します(図5)。 凸面鏡で作られた像は常に正立で、サイズは小さくなります。 こういった像は虚像とも呼ばれます。反射した光線が鏡の後ろの焦点から分岐する位置に像が見られるためです。

宝石に見る光の反射

宝石のカット方法は、光の反射の原理を、美的に重要で魅力的に応用したものの1つです。 特にダイヤモンドの場合、個々の石の美的価値と経済的価値は、主に宝石の外面(ファセット)の幾何学的関係によって決まります。 ダイヤモンドに施されるファセットは、石の正面に当たる光のほとんどが、見る人に反射するように意図されています(図6)。 光の一部は外側の上部ファセットから直接反射しますが、かなりの光はダイヤモンドに入って内部反射し、下方のファセットの内面から石の外側へと反射します。 内部の光路と複数の反射がダイヤモンドの輝きを担っており、一般に「ファイア」と呼ばれます。 完璧にカットされた宝石の興味深い結果として、正面から見るとキラキラと反射して見えますが、裏からは暗く光沢がないように見えます(図6)。

ファセットが施されたダイヤモンドの反射を示した画像

光線は、到達したあらゆる角度で鏡から反射します。 ただし特定の状況では、ある角度から来た光のみが反射して、その他の角度は反射しない場合があり、全反射という現象が起こります。 これは、完全に静かな状態の水面下にいるダイバーが、明るい懐中電灯を水面に向かって照らす状況で説明できます。 光が直角に当たると、垂直な光線が空中に照射されるように水中からそのまま進み続けます。 光線が少し角度を付けて斜めから水面に当たる場合、光線は水中から出ようとしますが、屈折によって表面の方向に曲がります。 外へ向かう光線と水面が作る角度は、光線と水面下の面が作る角度より小さくなります。

ダイバーが水面に向かって視射角より大きい角度に光を傾け続ける場合、水中から出る光線は、水面に平行になる時点まで水面に近くなっていきます。 光は屈折によって曲がるため、水中から出る光線は、水面下の光が平行になるより前に水面に平行になります。 水中から出る光線が水面に平行になる時点は、水の臨界角で生じます。 光をさらに傾けると、水中からまったく出なくなります。 屈折に代わって、すべての光は水面で反射し、鏡面で見られるのと同じように水中にはね返ります。

凸面鏡

凸面鏡に反射する物体の位置に関係なく、作られる像は常に正立の虚像で、サイズが小さくなります。 この対話式チュートリアルでは、物体を鏡面から遠くに動かすと、鏡の後ろに作られる虚像の大きさにどのように作用するかを探ります。

光の全反射

全反射の原理は光ファイバーによる光の伝送の基になっています。この技術によって可能になるのは、内視鏡検査などの医療処置、光パルスとして符号化される電話音声伝送や、顕微鏡などの精密な照明効果が必要な作業に広く使用される光ファイバー照明などの装置があります。 双眼鏡や一眼レフカメラに組み込まれているプリズムも、全反射を活用して90度の角度で画像を数回方向づけ、ユーザーの目まで届けています。 光ファイバー伝送の場合、ファイバーの一方の端から入った光が、ファイバーの壁内で何度も反射し、もう一方の端に向かってジグザグに進みます。このとき、薄いファイバー壁から漏れる光はまったくありません。 この光の「配管」法は長距離にわたり維持でき、ファイバーの経路に沿って、光は無数に方向転換します。

全反射は、ある一定の条件下でしか起こりません。 光が通る媒体は、屈折率が比較的高い必要があり、周囲の媒体よりもこの値が高くなければなりません。 したがって空気中の環境では、水、ガラス、多くのプラスチックが使用に適しています。 適切な材料を選べば、ファイバーやライトパイプ内の光の反射は内面に対して浅い角度で起こり(図7を参照)、すべての光は遠くの端から出るまで完全にパイプ内に留まります。 ただし、光ファイバーの入り口では、光が境界を横切ってファイバー内を進むために、高い入射角で光が当たる必要があります。

光ファイバーの全反射を示した画像

反射の原理は数多くの光学機器・装置で活用され、大いに役立っています。結像に関与する表面からの反射を低減するための各種メカニズムの応用も多く含まれます。 反射防止技術の背後にある概念は、光学装置で使用する光をコントロールすることです。つまり、意図的かつ有益な場合は光線を面から反射させ、観察される像に悪影響がある場合は面から反射させないようにします。 顕微鏡、カメラ、光学装置のいずれにおいても、現在のレンズ設計で実現した最も大きな進歩の1つは、反射防止コーティング技術の向上です。

反射防止の表面コーティング

反射防止コーティングのさまざまな組み合わせによって、レンズ表面内を透過または反射する光のパーセンテージにどのように影響するかを調べてみましょう。 このチュートリアルでは、入射角に応じた反射についても考えます。

不要な反射を低減するための反射防止コーティングの使用

レンズ表面に特定の材料を薄くコーティングすると、光がレンズ系を通るときに生じる、面からの不要な反射を低減できます。 光学収差が大きく補正されている現在のレンズでは、一般に複数のレンズ(レンズ素子)がバレル内や鏡筒内に機械的に収められ、より正確にはレンズ系または光学系と呼ばれます。 反射を低減するコーティングが施されていない場合、このようなレンズ系の空気とガラスの各界面で、表面に当たる垂直入射光線の4~5%が反射するため、透過率は垂直入射で95~96%となります。 屈折率を明確に指定して4分の1波長厚さの反射防止コーティングを施すと、透過率を3~4%上げることができます。

顕微鏡の現在の対物レンズをはじめ、カメラなどの光学装置用に設計されたレンズは高度で複雑になっているため、空気とガラスの界面を複数持つ15個以上のレンズ素子が組み込まれている場合があります。 これらの素子をまったくコーティングしない場合、レンズ内の光軸からの反射損失だけで、透過率は約50%低減します。 かつては、単層コーティングでギラつきを抑え光の透過を高めましたが、その多くは、可視光の99.9%超の透過率を実現する多層コーティングに取って代わられています。

反射防止コーティングの形状を示した画像

図8に示したのは、2層の反射防止層でコーティングされたレンズ素子で反射または透過している光波の模式図です。 入射波が、ある角度で最初の層(図8のA層)に当たった結果、光の一部は反射し(R0)、残りは最初の層を通り抜けています。 2番目の反射防止層(B層)に当たると、光の別の一部(R1)が同じ角度で反射し、最初の層から反射した光に干渉します。 残りの光波の一部はそのままガラス表面に進み、もう一度一部は反射し、一部は透過します。 ガラス表面から反射した光(R2)は、反射防止層から反射した光に干渉します(強め合いと弱め合いの両方)。 反射防止層の屈折率は、ガラスや周辺媒体(空気)の屈折率とは異なり、目的の屈折角を生むため、特定のレンズ素子に使用されるガラスの成分に応じて慎重に選択されています。 光波が反射防止コーティングとガラスレンズ表面を通り抜けると、ほぼすべての光(入射角による)がレンズ素子を最後まで透過して、像を作ります。

薄い層の光学反射防止コーティングに使用される多くの材料の1つにフッ化マグネシウムがありますが、現在ほとんどの顕微鏡やレンズの製造業者は、独自のコーティング材を製造しています。 こうした反射防止材によって、可視波長の透過率の向上、不要な反射からのギラツキ低減、可視光スペクトル域外にある不要な波長からの干渉排除が可能になるため、光学装置の画質は概して大幅に向上します。

可視光の反射は、現在のあらゆる顕微鏡が持つ機能の根本をなす、光のふるまいの特性です。 通常、光は顕微鏡内にある1つ以上の平面の(または平らな)鏡によって反射し、レンズを通り抜ける光路に方向づけられて虚像を作り出します。私たちはこの像を接眼レンズで見ています。 また、顕微鏡ではビームスプリッターを利用して、一部の光を反射させると同時に、別の一部を光学系の別の部分に透過させています。 顕微鏡に使用されているその他の光学部品(特殊設計のプリズム、フィルター、レンズコーティングなど)でも、光の反射現象に大いに依存して、結像に関する機能を果たしています。

寄稿者

Thomas J. FellersおよびMichael W. Davidson - National High Magnetic Field Laboratory, 1800 East Paul Dirac Dr., The Florida State University, Tallahassee, Florida, 32310.

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