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アプリケーション

FV3000RS 高速画像取得用レゾナントスキャナーを用いたColletotrichum graminicola胞子におけるアクチン動態の4次元観察


Colletotrichum graminicola(イネ科植物由来Colletotrichum属菌種)は、広い地域に分布している病原性真菌であり、小麦やトウモロコシ等の穀類にとっては炭疽(たんそ)病の原因となる主な病原体です。特にトウモロコシでは、C. graminicolaに感染すると炭疽病による葉枯を引き起こし、大きな作物被害をもたらすことが知られています。この病害の予防のためには、C. graminicola胞子の発芽における細胞骨格の動態を理解する必要があります。今回の実験では、共焦点レーザー走査型顕微鏡FV3000RSと真菌観察に適した100倍高NA対物レンズを使用して、胞子内の細胞骨格における局在の動的な変化を観察しました。

発芽前のアクチン線維束構造の形成を確認

本実験では、発芽前のC. graminicola胞子のアクチン線維の早い動態変化をタイムラグなく画像取得することが必要とされますが、FV3000RSのレゾナントスキャナーと100倍高NA対物レンズを使用して3次元観察を試みました。その結果、取得された3次元画像から三日月形をした発芽前の胞子内でアクチン線維束を鮮明に観察することができました。また、画像を3次元的に観察することで、ケーブルが表面近くで胞子を縦に横切るように存在していることを確認、さらに中心部から胞子の両端に向かってアクチン線維束が引き込まれることもわかりました。(図1)このようにレゾナントスキャナーを用いた高速3次元観察によって、胞子内のスピードの速い現象も逃がさず鮮明に捉えることができました。

図1:C. graminicola胞子における発芽前のアクチン動態の観察

撮影条件
対物レンズ:100X oil 1.49NA TIRF objective (UAPON100XOTIRF)
顕微鏡:FLUOVIEW FV3000RS
使用スキャナー:Resonant scanner
レーザー:488 nm (GFP, green), 561 nm (DIC, gray)
スキャンスピード: 0.272 sec/frame
Z シリーズ: 22枚
Interval:Freerun

発芽中における2段階の細胞骨格の変化を観察

アクチン線維束が構成された後、C. graminicola胞子は、アクチン線維の断片化と線維束化を伴う2段階の細胞骨格の変化が見られる発芽過程に進みます。この現象をFV3000RSのレゾナントスキャナーと100倍高NA対物レンズ、タイムラプス観察でのフォーカスを自動補正するTruFocus Zドリフトコンペンセーターを用いて、アクチン線維の動態を経時的に観察しました。得られた画像より、最初の過程では細胞骨格が再構成され、胞子を2つの細胞に分ける隔壁が形成される様子が確認できました(胞子中間部を横断する隔壁が現れます)。その後、発芽部位にアクチン線維束が形成され、伸長中の発芽管の先端に向けて延びていることが画像より確認できました(図2および図3)。FV3000RSのレゾナントスキャナーと、TruFocus Zドリフト補正機能により、胞子内の素早い動態も逃さず、フォーカスずれのない4次元(XYZT)画像を取得することができたのです。

図2: C.graminicola胞子の発芽中における隔壁と発芽管形成の4次元観察

撮影条件
対物レンズ:100X oil 1.49NA TIRF objective (UAPON100XOTIRF)
顕微鏡:FLUOVIEW FV3000RS
使用スキャナー:Resonant scanner
レーザー:488 nm (GFP, green), 561 nm (DIC, gray)
スキャンスピード: 0.470 sec/frame 
Zシリーズ: 31 枚 (5.35 sec/stack)
Interval: 1 min

図3: 発芽中のC. graminicola胞子内のアクチン細胞骨格の3次元画像
発芽中の発芽管が確認できます。

撮影条件
対物レンズ:100X oil 1.49NA TIRF objective (UAPON100XOTIRF)
顕微鏡:FLUOVIEW FV3000RS
使用スキャナー:Galvano scanner
レーザー:488 nm (GFP, green), 561 nm (DIC, gray)
Zシリーズ: 17 枚


実験を可能にしたFV3000の技術

TruFocus Zドリフトコンペンセーターで4次元タイムラプス中のフォーカスを維持

オリンパスのTruFocus Zドリフトコンペンセーターは、自動フォーカス補正機能により、周囲環境の温度変化などで生じるフォーカスずれを自動で補正し、タイムラプス実験の確実性を向上させることができます。例えば今回の実験のようなZスタック画像の経時変化を見る4次元観察では、ドリフトのないシャープな画像取得が可能になり、サンプル内のタンパク質動態をより正確に観察できます。

レゾナントスキャナーで4次元画像を高速取得

FV3000RS顕微鏡は、高精細画像取得用のガルバノスキャナーと高速画像取得用のレゾナントスキャナーを搭載しています。レゾナントスキャナーはFN18の最大視野を30fpsのビデオレートで撮影ができ、ライブセル観察において高速で高精度なタイムラプスイメージングが実現可能です。 数秒でZスタック画像の取得ができるので、生細胞で発生する急速な現象も逃すことなく立体的に観察、解析することが可能です。

TruSpectral GaAsP検出器で、高感度な生細胞イメージングを提供

FV3000は、分光システム「TruSpectral」を各検出チャネルに標準搭載。高効率の透過型回折格子に高反射率ダイクロイックミラーや高透過率レンズを組み合わせ、これまでにない高い分光検出効率を実現。高S/Nのマルチカラー共焦点イメージングが可能です。また、2基のGaAsPフォトマルチプライヤー(GaAsP PMT)を搭載した高感度分光検出器(HSD)を使うことで、従来では検出できなかった微弱な蛍光シグナルを捉えることが可能です。特に生細胞イメージングでは、最小限のレーザー出力で細胞毒性を抑えた高S/Nな画像を得ることができます。


ジョセフ・ヴァセリ先生とブライアン・ショー先生からのコメント

私たちの研究の目的は、糸状菌の成長と発達における細胞骨格とエンドサイトーシス関連タンパク質の役割を理解することです。極性生長における、これらのタンパク質の時空間局在を追跡することは、私たちの実験にきわめて重要です。 本研究では、FV3000の優れたZドリフト補正機能、高感度検出器、高速共振スキャナーによって、生細胞内のタンパク質動態を4次元的に高解像に観察することができました。

Vasselli at microscope


アプリケーションノート制作にご協力賜りました先生:

Dr. Brian D. Shaw

Dr. Brian D. Shaw, Professor, Fungal Biology, Department of Plant Pathology and Microbiology, Texas A&M University

Joseph Vasselli

Joseph Vasselli, Graduate Student, Department of Plant Pathology and Microbiology, Texas A&M University

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