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アプリケーション

この魚は何歳?—SLIDEVIEW™ VS200リサーチスライドスキャナーで魚の耳石の検査に関する課題を克服


はじめに

ニシン属のニシンは北大西洋の漁業の歴史において極めて重要な役割を果たし、20世紀初めには、その研究が水産科学の発展の基礎となりました(図1)。 この脂肪分の多い魚には、重要な食料としての長い歴史もあります。

ニシンは漁礁や沿岸周辺を大群で移動し、特に見られるのは北太平洋や北大西洋(バルト海を含む)の浅い温帯海域と、南米の西海岸沖です。 ニシンは3種が認められており、これが漁業で捕獲されるニシン全体の約90%を占めます。

ニシン

図1: ニシン

魚の年齢と成長の研究は重要であり、産卵のタイミングと規模、加入量、生息場所の使用、幼生および稚魚の期間、魚量の年齢構成の理解に役立ちます。 このような知識は、適切な漁業管理方針を定める上で重要です。 魚の年齢は耳石の輪を数えることで判定できます。

ニシンの耳石

図2: ニシンの耳石

魚の耳石は、その生涯を通じて炭酸カルシウムとゼラチン基質の層を増大させます。 増大率は魚の成長とともに変わり、通常、冬は緩やかに、夏はより大きく増大します。その結果、木の年輪に似た輪状の外観になります。 この輪を数えれば、魚の年齢を年単位で判定できます。 また、ほとんどの種では炭酸カルシウムとゼラチン基質の増大率が日々変わるので、年齢を日数単位で判定することも可能です。 この情報の取得には顕微鏡を使用する必要があり、幼生期の研究にとって重要なデータが得られます。

実験

研究者たちは耳石を取り出し、アクリル樹脂に埋め込んで、約50 μmの厚さに削りました。

従来は、偏光機能付きのマニュアル式正立顕微鏡を使用して、耳石の観察と日周輪のカウントが行われていました。

個々の層(輪)の見え方は焦点によって変わるため、この方法では観察者が何度も耳石に焦点を合わせ直さねばならず、時間がかかります。

オリンパスSLIDEVIEW VS200スライドスキャナーを使用すれば、耳石画像を自動取得でき、作業時間が大幅に短縮します(図3)。 さまざまな倍率で最大31面のZスタックを偏光または明視野で取得するように構成できます。 透過明視野観察では、電動の開口絞りによって、対物レンズの開口数に合わせて開口が絞られ、コントラストを調整できます。 (図4A)

オリンパスSLIDEVIEW VS200システム

図3: オリンパスSLIDEVIEW VS200リサーチスライドスキャナー

結果

VS200スキャナーを使用して40xで取得されたニシンの稚魚の耳石画像

図4A: VS200スキャナーを使用して、40x(0.95 NA)で開口絞り50%、18面のZスタックとして取得されたニシンの稚魚の耳石画像。

40xで取得されたニシンの成魚の耳石

図4B: 偏光を使用し、40x(0.95 NA)で30面のZスタックとして取得されたニシンの成魚の耳石画像。

画像提供: Bastian Huwer博士(National Institute of Aquatic Resources、Section for Marine Living Resources、リュンビュー(デンマーク))

稚魚の耳石は直径約75 μmです。 成魚の耳石は直径約1180 μmです。 画像4bは偏光観察で取得されました。主に、異方性の標本で、見やすく観察することを意図したものです。 スキャナーには、標本の前の光路にポラライザを、対物レンズ後方開口部とカメラポートの間の光路にアナライザ(第二ポラライザ)を装着する必要があります。 画像コントラストが生じるのは、複屈折性のある標本と平面偏光の相互作用によるもので、互いに直交する面でそれぞれ偏光する2つの光波が生成されます。

耳石の中心部に注目すると、輪は外側の部分より密度がだいぶ高くなっています。 この現象は、図5Aと5Bではっきりと見ることができます。 これらの画像では、輪の見え具合がレベルごとに変わっていることから、複数のZ面(Zスタック)での画像取得が重要であることも示しています。

VS200システムでは耳石の画像取得が自動化されるため、ユーザーは手動の焦点合わせや画像取得といった面倒な作業から解放されます。 画像はデジタル処理されるので、耳石層のカウントや年齢の測定を行う、全自動のデジタル画像解析プログラムを作成できます。

稚魚の耳石のZスタック中心部を切り取ったもの

図5A: 稚魚の耳石のZスタック中心部を切り取ったもの。 各Z面は、μm単位でZ位置に従って表示されています(左上から右下の順)。 各Z面間の距離は1.17 μm。 Zスタックは20 μmの大きさに広がり、中心部の耳石層間の距離は約600 nmしかありません。

成魚の耳石のZスタック中心部を切り取ったもの

図5B: 成魚の耳石のZスタック中心部を切り取ったもの。 各Z面は、μm単位でZ位置に従って表示されています。 各Z面間の距離は1.17 μm。 Zスタックは34 μmの大きさに広がり、中心部の耳石層間の距離は約740 nmです。

結論

SLIDEVIEW VS200リサーチスライドスキャナーを使用すると、樹脂に埋め込んだ魚の耳石の画像をたやすく便利に取得できます。 稚魚の場合、耳石層間の距離は600 nmほどしかなく、イメージングシステムには高倍率・高分解能の性能が求められます。 VS200システムでは、40x UPlanXApo対物レンズを0.95のNAで使用すると、この画像の取得に必要な倍率と分解能が得られます。

また成魚の耳石標本の場合、厚みがある(最大34 μm)上、炭酸カルシウムでできているため透過性がよくありません。 VS200システムには、これらの課題を克服して高品質画像を取得できる高度な機能があります。 厚みのあるサンプルの場合、偏光を使用した複数のZ面でスキャンできます。 耳石標本のコントラストを上げるには、開口絞りを絞って輪紋がはっきり見えるようにします。これで簡単にカウントできます。

謝辞

このアプリケーションノートは、 Bastian Huwer博士(National Institute of Aquatic Resources、Section for Marine Living Resources、リュンビュー(デンマーク))の協力を得て作成されました。

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