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実験成功に導くための定量的な細胞培養の重要性

著者  -
細胞培養の定量的解析

人間の目は定性的であって、定量的ではありません。その証拠として、以下に示す2つの四角形を見てください。どちらが大きく見えるでしょうか?

Optical illusion example

ほとんどの人は右の図を選ぶでしょう。しかし、この2つの四角形は同じ大きさです。これは目の錯覚の単純な例で、人間の目が何かを定量的に測定するのに、いかに不向きであるかを教えてくれます。

そうにもかかわらず、今日の細胞培養プロセスの多くは、未だ目視観察に頼っています。本ブログでは、細胞培養における目視観察の課題をあげ、定量的アプローチに移行することの重要性について説明していきます。

はじめに、標準的な細胞培養プロセスを見てみましょう。

標準的な細胞培養プロセス

標準的な細胞培養ワークフローでは、細胞計数の情報に基づいて規定数の細胞を播種することから開始します。次に、ディッシュまたはフラスコ上で細胞を培養し、インキュベータに入れて細胞を増殖させます。2~3日ごとに、細胞培養容器をインキュベータから取り出し、顕微鏡で細胞の状態を目視で検査します。

多くの場合、細胞の状態を知るうえで重要な形態と密度を確認します。

  • 細胞の形態は、細胞が全体的に正常かどうかを示します。
  • 密度は、継代ができているかの判断を可能にする鍵となる要素です。細胞が過剰に密集している場合、細胞は不活発となるか、または死滅します。従来は、顕微鏡下で目視にて細胞の密度を確認しています。
Cell culture workflow

図1:細胞培養プロセスの標準的なワークフロー

ここで、目の錯覚の例を思い出してください。私達は、自分たちが考えているほど人間の目が定量的ではないことを知りました。多くの場合、目視観察で70%と判断された密度は、実際には70%ではありません。80%の可能性も、60%の可能性もあります。

また、計測を行った人によっても数値が異なる場合があります。人間の目に基づく計測は不安定であるため、細胞培養の品質に影響し、一貫性のない結果の原因となる可能性があります。

Cell culture workflow

図2:細胞培養の適切なプロセス(上)と不規則なプロセス(下)

細胞培養後の標準的なワークフロー

細胞培養プロセスの終了後は、細胞の生物学的性質を調べるための顕微鏡によるイメージング作業、化合物を評価するための細胞ベースアッセイ、またはより大規模な細胞培養に移行します(図3)。しかし、定量的な細胞培養なしでは、課題にぶつかる可能性があります。

Cell culture workflow

図3:細胞培養後の標準的なワークフロー

例えば、細胞べースのアッセイでは、培養細胞を用いて薬剤の有効性を評価します。しかし、細胞培養の品質が一貫していない場合、薬剤候補に対して細胞が異なる反応を示す可能性があるため、試験の結果は信頼性の低いものになってしまいます。

定量的な細胞培養の重要性は、国立先進トランスレーショナル科学センター(National Center for Advancing Translational Sciences:NCATS)から発行されている試験ガイダンスマニュアルにも明確に記載されています。

このマニュアルでは、「細胞培養の条件の標準化は正確な試験結果にとって不可欠である。実験ごとに新しい細胞源(患者または動物)から得られた細胞が使用される実験群では、反応性が異なり、実験ごとに個別の正規化が必要である」と述べられています。

別のセクションでは、「試験の成功には細胞培養条件に特に注意を払うことが極めて重要である。試験が適切に機能するためには、細胞は密集する必要があるが、過剰に成長してはならない」とも述べられています。

このように、細胞培養の品質は、培養後のプロセスにも影響します。実験後に結果が信用できないものであると発覚すれば余分な手間とコストがかかることになります。

細胞培養に定量的アプローチを取り入れることがプロセスの向上に不可欠であることは明白です。ではどのようにして、より一貫性のある結果を得ることができるのでしょう?

定量的な細胞培養に役立つツール

定量的な細胞培養の結果を得るために人間の目が信頼できないとしても、高度な画像解析技術がで補うことができます。

人工知能を用いた画期的な画像解析技術により、下図に示す細胞の位相差画像(図4)などの無染色な画像の解析がさらに容易になりました。

Cell analysis using machine learning

図4:機械学習に基づいた細胞の解析の例

顕微鏡画像をAIの解析技術と組み合わせることにより、機械学習を用いて細胞密度を検出することが可能になります。機械学習は、一定の標準化されたパラメータを使用することができるため、顕微鏡による従来の目視検査よりも正確で定量的な手法です。

この技術は、オリンパスのCM20インキュベーションモニタリングシステム および細胞密度計測ソフトウェアCKX-CCSWに採用されており、実験成功のための再現可能で定量的なデータを提供します。
 

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プロジェクトマネージャー

今村尚平氏は、Olympus Corporation of the AmericasのScientific Solutions Groupで戦略製品のプロジェクトマネージャーを努めています。ライフサイエンス向け顕微鏡のセールスで4年、製品計画、特にソフトウェア、戦略的プロジェクトマネジメント、プロジェクト実行において7年の経験を積んでいます。日本の明治大学で商学士号を取得しています。

2020年7月30日
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