ホフマン変調コントラスト(レリーフコントラストともいう)は、プラスチック容器に入った非染色の生体サンプルのコントラストを大きくするように設計された光学顕微鏡観察法です。 光学的な勾配を検出し、さまざまな光の強度に変換して観察します。
このブログでは、ホフマン変調コントラストについて、基本的な顕微鏡構成から利点と制約事項に至るまで、詳細に説明します。
図1:ホフマン変調コントラストの基本的な顕微鏡構成
ホフマン変調コントラストの顕微鏡基本的な構成
図1は、ホフマン変調コントラストの基本的な顕微鏡構成を示しています。 ホフマンが考案した「モジュレータ」という光振幅空間フィルターが、対物レンズの後焦点面に組み込まれています。 このシステムを通る光の強度は、平均値より上と下に変化し、これが変調されます。 変調コントラストに適した対物レンズは、10X、20X、40Xの倍率範囲全体をカバーできます。
モジュレータには3つのゾーンがあります(図2に示します)。
- 小さな暗黒のゾーン:後焦点面の縁に近い部分。1%の光のみを通す(図2のDと記された領域)。
- 狭い灰色のゾーン:15%の光を通す(図2のGと示された領域)。
- 残りの透明なゾーン:対物レンズ後部のほとんどの領域を占め、100%の光を通す(図2のBと示された領域)。
ホフマン変調コントラスト観察法のモジュレータとスリット
位相差観察の位相板とは異なり、ホフマンモジュレータは、どのゾーンを通る光の位相も変えないように設計されています。 変調コントラスト観察では、通常の明視野観察では基本的に見ることのできない透明な物体が、位相勾配によって3次元(3D)の形状に見えるようになります。
ホフマンの設計では、コンデンサの前焦点面にスリットがあります(図1に示されています)。 光が軸外スリットを通ると、モジュレータが装備された対物レンズの後焦点面(フーリエ面ともいう)に撮像されます。 軸外スリット板が組み込まれたコンデンサの前焦点面は、対物レンズの後焦点面のモジュレータと光学的に共役関係にあります。 画像の強度はサンプルの光学密度の一次導関数に比例し、位相勾配回折パターンのゼロ次数によって制御されます。
向かい合った勾配は、スリット像をモジュレータの非常に暗い部分または明るい部分へと屈折させます。 次の例を考えてみましょう。ある仮想サンプルは、正と負の位相(厚さ)勾配の両方を持ち、平面(非勾配)領域は変調コントラスト用の光学部品を使用してイメージングされます。 正の勾配はモジュレータの透明な領域に光を屈折させます。この領域では減衰はなく、100%の光が中間像面へと通過します。 同様に、負の勾配によりモジュレータの暗い領域に屈折された光は、前の値の約1%に減衰します。
サンプルの勾配のない部分と背景は、モジュレータの灰色の部分に現れます。この領域では、15%の光が中間像面まで通ります。 この結果、一方の勾配からの像領域の強度が暗くなります。 勾配の反対側からの強度は明るい像領域を生み、勾配のない領域は像に灰色で現れ、背景も同様です。
ホフマン変調コントラストの4つの重要な利点
ホフマン変調コントラストにはたくさんの利点と少しの制限事項があります。 ホフマン変調コントラストの利点の一部をご紹介します。
1. 対物レンズの開口数を最大限に使用
ホフマン変調コントラスでは高い開口数を使用できるため、サンプルのコントラストと可視性がよくなるとともに、細部の優れた分解能が得られます。
2. プラスチック容器に対応
ホフマン変調コントラストでは、プラスチックディッシュなどの複屈折材料を使用した場合でも、画像のひずみなく観察できます。 複屈折とは、特定の材料を入射線(表面に当たる光線)が通過すると2本の線に分かれる現象です。
ホフマン変調コントラストは、複屈折材料ではよく観察できないコントラスト法の代わりとなります。 例えば、微分干渉観察(DIC)で複屈折材料を調べると、アーチファクト、コントラストの消失、その他の画質の問題が発生する可能性があります。
結果的に、プラスチック容器で細胞、組織、器官培養の観察やイメージングを行う方法として、ホフマン変調コントラストは最適です。
3. 光学切片を実行可能
この観察法では「光学切片」も実行可能です。 光学切片によって、焦点を合わせる面の上下の領域に紛らわしい画像によって干渉されることなく、サンプルの薄い単一面に焦点を合わせることができます。
サンプルの厚さは、顕微鏡の光軸に平行に測定されます。 焦点を合わせるとサンプル-画像間の正しい距離が確立されるため、接眼レンズから固定の距離にある所定の面(像面)に回折波の干渉を起こすことができます。 これにより、サンプルのさまざまな厚さレベルで発生した回折オブジェクトが個別に見られます(コントラストが十分な場合)。
サンプル全体の厚さの連続した各面に続けて焦点を合わせることで、光学的に切片を得ることができます。 このシステムにおいて、被写界深度は明確な細部のイメージングが得られる任意のレベルから次のレベルへの距離で、対物レンズの開口数により制御されます。 開口数の高い対物レンズほど、被写界深度はごく浅くなります。 開口数の低い対物レンズはその逆です。 サンプルの光学的均質性が低くなるにつれて、特定の光学切片に対して区分して焦点を合わせる対物レンズの能力は全体的に低下します。
4. 可視性の向上
ホフマン変調コントラストが持つもう一つの利点は、可視性の向上です。 画像には影が付き(疑似3次元化)、細部の両側でコントラストが異なるため、可視性が向上します。 また、位相差観察による画像と異なり、画像にハローは見られません。 ホフマン変調コントラストでは、位相勾配情報を振幅の差に変換します。これは位相差観察で生成される位相関係の相違(および光路差)とは大きく異なります。
モジュレータの暗黒ゾーンと灰色ゾーンを用いると、灰色の影の度合いが異なる、色のない画像が形成されます。 灰色と暗黒のゾーンを持つモジュレータを、透過率の等しい色付きのゾーンを持つものに変えれば、変調コントラスト画像に色を付けることは可能です。 この場合、位相勾配により得られる画像は、勾配が同じ部分に同じ色合いを付けたものになります。 現在、把握している限りでは、色の付いたゾーンを持つ変調フィルターは市販されていません。
ホフマン変調コントラストの制限事項
ホフマン変調コントラストには、デメリットと制限事項もいくつかあります。 まず、画像を慎重に観察する必要があります。 疑似3次元画像は接眼レンズを通して観察するため、観察する人によって画像の中の「山」の部分を「谷」として見る、またはその逆の可能性があります。 この観察法は、スリットの長さに垂直な勾配に対して、極めて敏感でもあります。 そのため、この観察法の効果を最大限に得るには、サンプルを配置するスキルがある程度必要です。