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共焦点顕微鏡用のレーザーシステム

共焦点レーザー走査型顕微鏡に一般に使用されているレーザーは、高輝度の単色光源であり、光トラッピング、寿命イメージング研究、光退色回復、全反射照明蛍光観察法(TIRF)など各種の技法に役立ちます。また、レーザーは共焦点蛍光観察法の光源としても最もよく使用され、頻度は少ないながら従来の広視野蛍光観察でも使用されています。

レーザーはコヒーレント性のある強力な単色光のパケットを放出します。これはレーザー光が空間と時間で位相がそろっていることを意味し、拡がり率が非常に低く狭いビームを形成するように平行に(幅を狭く)することができます。タングステンハロゲンランプ、アーク放電ランプ、またはLED光エンジンと比べると、レーザーによる極度に純粋な波長範囲には、他の光源には例を見ない、帯域幅と位相の関係があります。その結果、レーザー光線(ビーム)は長距離を移動でき、開口いっぱいに広げることも、高度な明るさを持つ非常に小さなスポットに集光することも可能です。利得媒質(光源)、励振源(電源)、電気的共振器などすべてのレーザーに共通する類似点以外では、これらの光源はサイズ、費用、出力、ビーム品質、消費電力、動作寿命が根本的に異なります。

多くのレーザーシステムで作られる単色光のコヒーレンスは、従来の広視野顕微鏡の光源として用いると問題が生じます。光路のどの面でも、干渉による光の散乱と回折のパターンが発生します。視野絞りおよび開口絞り、そして埃でもアーチファクトが発生します。これらの望ましくない効果はさまざまな方法で最小化または排除できます。最もよく使用される方法としては、光源と顕微鏡との間の光路長を素早く変えることで、一時的にレーザー光をスクランブルさせたり、共焦点顕微鏡システムの場合のようにサンプルを1か所ずつ走査したりする方法があります。さらに、干渉やその他のアーチファクトは、この開口走査法で排除されることがほとんどです。レーザービームの光路長またはコヒーレンス状態が、検出器の積分時間(実質的にはビデオフレームレート)より速い間隔で変動する場合、スペックルや散乱アーチファクトが画像から消えます。

アルゴンイオンレーザー光源で作られた微分干渉観察(DIC)画像を改善するために、一部の研究者が取り入れたのは、1分あたり2500回転する円状のガラス製ウェッジを光路に配置する方法です。広がるレーザービームの前でウェッジが回転すると、ウェッジの厚さの差によって光路長の高速変動が生じます。現在、光路長の変動に一般的に用いられているのは、光源と顕微鏡の間で光の経路を決める光ファイバーです。ファイバーを振動させると光路長が継続的に変動するため、振動レベルより低い周波数で一時的にインコヒーレントになります。この振動は、圧電素子、スピーカー、レーザーヘッドに用いられる冷却ファンによって発生します。

図1は、自己モードロックチタンサファイアパルスレーザーを表しています。これは現在、多光子蛍光顕微鏡研究のほとんどで推奨されているレーザー励振源の1つです。チタンサファイアモードロックレーザーは、波長調節範囲が約690~1050 nm超と広く、パルス幅長は約100フェムト秒です。また、多くの蛍光色素において二光子励起を飽和させるのに十分な電力(調節範囲全体で100ミリワット以上)があります。レーザー結晶の冷却と湿度コントロールを適切にするには、外部冷却器で一定の温度に保たれた密封型レーザーヘッドに窒素ガスを注入します。

多くのレーザーシステムで作られる光は、垂直方向の偏極ベクトルで直線的に偏光されます。この性質は、微分干渉観察、偏光測定、蛍光偏光異方性の定量的研究など、偏光照明光源が必要なアプリケーションに利用できます。

レーザービームのコヒーレンスと偏光の特性は、レーザーの出口鏡からの距離の増加に伴って変化するビーム断面(形状)の光の分散によって測定します。以降で取り上げるレーザービームの特性は、顕微鏡イメージング、レーザートラッピング、その他のアプリケーションでレーザーの有用性が実証済みの対象の一般的な概要として示します。

レーザーが最も単純な横方向電磁モードTEM(00)モード)で動作する場合、放出ビームは平面波面とガウス強度(照度)分布を持ちます。レーザービーム径は、強度がピーク値のe(E-2)(13.5%)に低下する値として一般に定義されます。レーザービームのガウス分布は回折によって生じ、完全に平行なビームの伝播が阻害されて、光波が横方向に広がります。レーザー出力開口の近く(近距離音場)では、ビームの位相面が不規則になる場合があります。その結果、レーザーからの距離とともにビーム断面の形状、サイズ、照度分布が急激に変化します。大きく離れると(遠距離音場)、位相面はガウス分布に安定します。一部の参考文献では、近距離音場と遠距離音場はそれぞれ、フレネルゾーンフラウンホーファーゾーンとも呼ばれます。近距離音場はレイリー長ということもあります。遠距離音場は、以下で定義される距離zから始まります。

z = A02

ここで、A(0)は出口開口のビーム径、λはレーザーにより放出される光の波長です。この式を、波長488 nmでウエスト径0.6 mmのビームを放出するアルゴンレーザーに適用すると、遠距離音場は出口開口から約74 cmから始まります。

図2に示すのは、近距離および遠距離音場におけるレーザービーム形状と発散の模式図です。前述のように、ビームは基本的に近距離音場でやや広がる波面の平行な束と見なすことができます。近距離音場を越えると、ビーム発散角(θ)(ビーム中央から端(e(E-2))までを測定)は大きくなり、以下の式に従ってビーム径(D)を決定する重要なパラメーターになります。

ビーム径(D) = 2L • tan(θ)

ここで、Dはレーザービーム径を表す変数、Lはレーザー出口開口からビーム上の測定点までの距離を表します。実際には、照度分布などいくつかのレーザービーム特性は、多くの顕微鏡アプリケーションで重要な要素であり、遠距離音場までの距離を把握することがイメージングシステムを構成する上で必要になる場合があります。表1は、一般に使用されるいくつかのレーザーと輝線について、この距離の算出値(上記の式を使用)と、標準的なビームウエスト径を表しています。

遠距離音場までの距離

表1
化合物溶剤励起
波長
(nm)
放出
波長
(nm)
量子収率
アクリジンオレンジエタノール4935350.46
ベンゼンエタノール248300~3500.04
クロロフィルAエタノール4406850.23
エオシン5215440.16
フルオレセイン4375150.92
ローダミンBエタノール5556270.97

ビームはレンズやその他の光学コンポーネントにより集光、形成、あるいは変更する必要が多々あるため、ビームがガウス特性を示すかどうかは、ほとんどのレーザーアプリケーションで重要です。ガウスビームには特定の定義可能な変形特性があり、ビームが光学系をどのように伝播するかについて推定できます。

ガウスビームの遠距離音場の、θ(ラジアン単位)で指定される角半径(ビーム発散角。図2を参照)は、次の式で概算されます。

θ = λ /πa0

ここで、a(0)はレーザー出口開口のビームウエスト半径です。ビームウエスト径は、レーザー波長、キャビティ長、およびキャビティのその他の設計パラメーターの関数です。レーザーからの距離(z)が増すとともに、ビームウエスト半径は以下の式で求められます。

a(z) = θz

一般に、レーザービームはビーム伝播パラメーターで特徴づけられます。例えば、以下のように近距離音場と遠距離音場を組み合わせて決定される、Mの2乗、またはKMの2乗の逆数に等しい)などがあります。

M2= πA0θ/4λ

伝搬定数または伝搬係数と呼ばれるM2の値が小さいほど、特に直径と発散の小ささに関連してビーム品質が高いことを示します。この係数は、実際のビームと理想的なガウスビームの関係を表します。

コヒーレントなガウスビームは、レンズとミラーによる伝播と変形について、インコヒーレントな光線とは異なる固有の特性を持ちます。回折限界のあるビームの場合、ビームがレンズ開口で欠けなければ、ガウスビームの強度分布はガウス分布そのものです。ガウスビーム径がレンズ開口径の半分の場合、発出ビームの強度分布はガウス分布のままです。ガウスビーム径がレンズ開口径と等しい場合、出力ビームの強度分布はガウス関数とエアリーディスクの強度分布を混合したものになります。最後に、ガウスビーム径がレンズ開口径よりだいぶ大きい場合、エアリーディスクの出力強度となります。このケースではレーザー出力の多くがレンズ開口からはみ出すため、失われます。

ガウスビーム光学の総合的なトピックについては、多くの書物で扱われていて、ここで取り上げない詳細な情報はより包括的な情報源から取得できます。レーザーを扱う顕微鏡使用者が特に興味を持つガウスビーム操作は、ビーム集中ビーム拡張の2つです。

レーザービームが無収差対物レンズによって非常に小さなスポットに集光されると(ビーム集中)、焦点のスポット半径(距離z地点)は以下の式で求められます。

a(z) = λf/πa0

ここで、fはレンズの焦点距離です。例として、開口数1.3の100倍対物レンズ(焦点距離は約1.6 mm)を使用して、半径0.3 mm、488 nmのアルゴンレーザービームを集束する場合、焦点スポット半径は(前述の式から)0.8マイクロメートルです。ビーム拡張(後述)によりビームウエストを5倍大きくすると、焦点スポット半径は約0.16マイクロメートルになります。

重要なのは、集中させたレーザービームの焦点は極度に高出力の密度になるということです。10ミリワットのビームを回折限界スポット0.22マイクロメートルに集束させると、1平方センチメートル当たり約3千万ワットの出力密度になります。このように高い電力レベルは、レンズやフィルターのコーティングを急速に劣化または破損させるおそれがあり、生物試料に相当の光化学損傷を及ぼす可能性があります。ただし、これだけ微細なスポットサイズでは水中の熱エネルギー拡散が効果的なので、試料によるエネルギー吸収が相当高くない限り、高エネルギーの近赤外ビームは生物試料をそれほど損傷しません。

光学顕微鏡で多く見られるレーザー利用では、はじめにケプラー式またはガリレオ式ビームエキスパンダーを使用してレーザービームを拡張します(標準的なレーザービームエキスパンダーの構造的特徴を図3に示します)。コヒーレントなガウスビームの発散を小さくでき、レーザービームが最初に拡張される場合は、より長い距離にわたって最適に平行になるように調整されます。前述の式で見たように、ビームの角半径(θ)は、レーザー出口開口でビームウエスト半径a(0)に反比例します。したがって、ビームウエスト半径を拡張すると、発散は比例的に小さくなります。

多くの顕微鏡観察で実用的なのは、柔軟な光ファイバーを使用して、レーザー出力を顕微鏡光路に直接つなげる方法です(図4を参照)。レーザーと顕微鏡を厳密に調整する方法では、大がかりな除振機能付きの光学テーブルと多くの固定ミラーやその他のコンポーネントを導入する必要がありますが、それに代わる望ましい方法です。

レーザービームをレンズで光ファイバーに集光する場合、ファイバーから放出されるビームの結合効率と特徴は、ファイバーの形状に大きく左右されます。レーザー光の送達に使用されるほとんどの光ファイバーは、溶融石英コアからできています。これらのファイバーは、高屈折率の石英を加工した中心のコアが、クラッドという低屈折率材でできたスリーブで覆われています。コアとクラッドの境界で全反射が起こることで、ファイバーの長さに沿って光が逃げないようになっています。クラッドの材質には、石英、ガラス、硬フッ素重合体、ソフトシリコンがあります。

光ファイバーは、内部コアの直径に応じてシングルモードマルチモードに分けられます。シングルモードファイバーでは、1つの特定の波長で最低次モードのみの伝播が可能です(図4)。伝播される波長と波長の偏光保持は、ファイバー径で決まります。他の波長を伝播することはできますが、効率が低くなります。標準的なシングルモードファイバー径は、可視光波長の場合3~6マイクロメートルの範囲で、シングルモードファイバーの出力照度分布はガウス分布です。

マルチモード光ファイバーでは複数モードの伝播が可能で、単一波長に制限されません。マルチモード光ファイバーの中心コアはシングルモードファイバーより大きく、直径約100マイクロメートル~1.2 mmの範囲です。マルチモードファイバーの出力照度分布は、シルクハット形と呼ばれる平らな形状で、開口数はコアとクラッドの屈折率によって決まります。

ファイバーコアの許容円すい角θは、以下のようにファイバーの開口数NAに相関しています。

NA = sin θ/(n2core - n2cladding)1/2

ここで、nは屈折率を表します。レーザー光が効率的に結合するのは、ファイバーコアの開口数と集光レンズの屈折率が一致する場合です。光ファイバーを通る光伝送効率は、通常約90%と高くなっていますが、極小半径(3 cm未満)で曲げると急激に(60~70%まで)低下します。

レーザーを使用する際には、直接または鏡面的に反射したレーザー光が観察者の目に入るのを防ぐだけでなく、光学系部品からのビーム反射がレーザーシステムに戻るのも防ぐ必要があります。前者は明らかに安全対策のためである一方で、後者は余計な反射源によってレーザーシステムにコヒーレントなビームが戻り、損傷するのを防ぐために重要です。

レーザー光源の安定性は多くのアプリケーションで重要視されますが、照明強度の変動が実験結果に悪影響を及ぼす可能性がある、定量的観察では特に重要です。誘導放出やキャビティ長の変動に関連する多くの要因では、出力ビームに周波数ノイズが発生することがありますが、振幅変動を引き起こすその他の摂動では、高周波 強度ノイズと光出力の緩やかな変動(ドリフト)の両方が発生する場合があります。これらの強度変動の発生源のいくつかは、レーザーヘッド自体の機能や電源が関係しています。各種レーザーカテゴリー別の出力ビームにおけるノイズに最も共通する発生源を以下に示します。

  • ガスレーザー - 共振器振動によるミラーのずれ、光学励振源からのノイズ、イオン放出プロセスのプラズマ振動および不安定性、供給電流の変動、冷却水乱流によるマイクロフォニックノイズ、強制空冷システムのファン誘導ノイズは、すべて考えられるノイズ発生源です。
  • 固体レーザー - ノイズ発生源としては、マイクロフォニックノイズ、ランプとダイオードポンプの両方による励振源振動、キャビティアライメントエラー、レーザー媒質の熱変動に関連するランダムな周波数関連ノイズ(1/fノイズ)があります。
  • 色素レーザー - ノイズ(高周波)とドリフトはどちらも、色素溶液の濃度不均一と気泡、色素ポンプおよびレーザーポンプ光源の不安定さによるものです。
  • 半導体(ダイオード)レーザー - ノイズの原因には駆動(バイアス)電流または温度の変動があり、1/fノイズは、接合点でのキャリアの捕獲およびその他のタイプのキャリア(正孔)の再結合作用によるものです。

すべてのレーザーは電源からのノイズを受けやすくなっています。効率性と小型さから普及するようになったスイッチング電源は、特に数十キロヘルツまでの周波数範囲でレーザーシステムにリップルが生じやすくなっています。このような干渉が光学顕微鏡システムの光線に影響を及ぼすと、特に診断や排除が厄介になる場合があります。主な難点は、研究室環境の電磁場など、その他の発生源からシステムに取り込まれるノイズと似ている点です。半導体レーザーの出力安定性を最適にするには、最高の電気的安全性と最低限のノイズによるダイオード電流供給と、正確な温度管理の下で作動させる必要があります。研究室内の埃、交通や建築設備から発生する振動など、その他の外部ノイズ源も制御が必要です。

連続波 (cw)レーザーのビーム強度を安定化するには、管電流を電気的に制御するか、輝度を調節する外部コンポーネントを使用します。管駆動電流の制御には、主に2つの方法が用いられます。定電流モードでは、電子的フィードバックループによって管電流を直接制御して変動を最小化します。レーザー出力には温度依存性もあるため、このタイプの制御回路は適度に温度管理されている場合に最も効果的です。定電力安定化システムは、ビームスプリッターとフォトダイオードモニターにより出力ビームをサンプリングする回路からの信号に応答して、駆動電流を制御することで作動します。この物理的配置はガスレーザーやその他のいくつかの形態に応用できますが、より小さなダイオードレーザーを、不可欠なフォトダイオードが既に組み込まれたパッケージにまとめるのが一般的です。モニターフォトダイオードはレーザーウエハーのリアファセットからの放出をサンプリングし、出力ビームのフィードバック制御を可能にする信号を生成します。

レーザー強度の安定化に使用される外部コンポーネントでは一般に、ビーム出力の変動を最小化する電気光学変調器を制御するために、高速フィードバックシステムを導入しています。外部ポッケルスセル変調器(図5を参照)はさまざまなメーカーから入手可能で、原理上はあらゆる連続波レーザーの出力安定化に使用できます。この手法では大きな強度変動(約50%まで)を修正できますが、それに比例して全体の出力も低下します。多くのシステムでは広い範囲の修正能力が重要とされます。例えばヘリウムカドミウムレーザーは、特定のビーム周波数間でプラズマ振動が強いこともあり、出力に約20%の変動が見られる場合があります。システムの中には、cwおよびモードロックレーザーを出力の100分の数%以内に制御し、直流からの周波数範囲全体を数百メガヘルツに制御し、ノイズ減衰を500:1以上にするのに最適とされるものが存在します。

ポッケルスセル変調器の基本コンポーネントを図5に示します。図5に示すような、レーザー出力強度を制御する外部機器は、ノイズイーターという用語で分類または販売されることがあります。ポッケルス効果を利用する電気光学変調器の背後にある基本概念は、セルの偏光特性を非常に急速に変えて、レーザー強度の制御のために可変ビーム減衰器を提供するメカニズムに基づいています。レーザー出力の偏光状態は変調器の全減衰を決定しますが、80%までの伝送は可能です。レーザーヘッドからの放出後、ビームの一部はビームスプリッターによってフォトダイオードに向かいます。フォトダイオードは強度を事前設定(選択可能)の基準強度と比較し、差信号を増幅して電気光学ポッケルスセル変調器を駆動できるようにします。増幅された信号は、偏光面を回転させるセルの屈折率を変えるので、適用される差分電圧に比例してビーム減衰が変化します。電場の変化とともに偏光特性の変化を見せる(ポッケルス効果)物質には、リン酸二水素カリウムとニオブ酸リチウムがあり、一般にこれらの材料の結晶をビーム変調器に使用しています。

ポッケルスシステムによって偏光が不規則に安定する場合、交差偏光板の間に変調器を配置する必要があります。ビームの安定性に対するこれらの追加コンポーネントの影響を最小限にするため、さらなる考慮が必要です。埃、振動、その他の干渉によって、光路内のどの位置でもビームの安定性が変化する可能性があるため、光学顕微鏡システムの試料位置のできる限り近くに外部安定装置を配置することが重要です。これによって、ほぼ安定したビームが試料まで確実に届きます。

ダイオードレーザーは、数十年にわたり開発され続けている半導体機器で、顕微鏡使用者の興味を引くのに十分な出力を持つものが手に入るようになりました。ダイオードレーザーを利用可能な波長範囲は、紫外から近赤外にわたり、出力は共焦点顕微鏡観察に十分な強さです。ビーム形状と安定性も改良され、実質的にすべてのアプリケーションでガスレーザーに代えて使用できます。通常、ダイオードレーザーの寿命は10,000~50,000時間ですが、静電気ショックに極度に敏感なので、慎重に取り扱う必要があります。

光学顕微鏡使用者の最大の関心は調節可能なダイオードレーザーの開発であり、これは調節可能な色素レーザーやチタンサファイアレーザー(後述。図1を参照)と、出力と多用途性に関して匹敵します。調節可能な色素レーザーの波長範囲は600~1800 nmで、5~25ミリワットの出力を実現します。比較的低コストで小型、長寿命、低い熱発生という利点があり、外部冷却システムを必要としません。

ダイオード励起固体(DPSS)レーザーは、希ガス、アークランプ、フラッシュランプの代わりにダイオードレーザーを使用して、固体レーザー発振材料を励起します。ダイオード励起レーザーの出力、ビーム品質、安定性はガス(ヘリウムネオン)レーザーと同等ですが、効率とサイズはダイオードレーザーに匹敵します。ダイオード励起レーザーの標準的な運用コストと維持コストはガスレーザーより低く、大半のシステムは対流または強制空気により冷却しています。

ダイオード励起ネオジムイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーは、1064 nm光をミリワット出力範囲で生成します。周波数倍増によって、532 nmの連続波を出力する小型機器が実現し、周波数三倍化では355 nmのパルス出力の生成が可能になっています。Tightly Folded Resonator(TFR)はネオジムイットリウムリチウムフルオライド(Nd:YLF)の結晶を高い出力と効率性で励起するために開発され、多数のダイオードレーザーを使用して、1047 nmで数ワットの出力を生成します。このタイプのレーザーで周波数倍増、三倍化、四倍化を行うと、最大数百ミリワットのコヒーレント光が523、349、および262 nm(第二、第三、第四高調波)で生成されます。励振源としてのダイオードレーザーのその他の利点は、寿命の拡張(ランプが数百時間なのに対して、通常5000時間超)と、固定レーザーの小さなレーザーボリュームと同等に平行化および集光が容易で、ハロゲンアークランプをポンプとして使用すると水冷が必要な、レーザーロッドの熱負荷が大幅に低減する点も挙げられます。

ダイオード励起固体レーザーの開発を推し進めているのは、グリーン(532または523 nm)および紫外(355または349 nm、266 nmで第四高調波)波長範囲で高出力(通常数ワット)を必要とする、産業・商用アプリケーションです。紫外スペクトル領域の出力は、100マイクロジュール~10ミリジュールのエネルギー範囲で、パルス持続時間はナノ秒範囲、パルス繰り返し率は10 kHzと高くなっています。これらのレーザーは、ケージド化合物放出のトリガーを観察する際にとても便利です。ただしパルス繰り返し率は、ほとんどの共焦点顕微鏡アプリケーションで照明光源として使用するには依然として遅すぎます。

開発の進展により、ダイオード励起固体レーザーと光パラメトリック発振器OPO、図8を参照)を組み合わせて、205 nm~2000 nmまで連続可変の調節可能なパルス出力を生成できるようになりました。当初に利用可能だったシステムは高価で操作が複雑でしたが、顕微鏡観察により最適な小型版が導入されています。

チタンドープサファイアレーザーチタンサファイアレーザー、図1を参照)は、固体の信頼性や、調節可能なパルスと連続光の送達という利点があります。このレーザーは、高い繰り返し率(100 MHz)で非常に短い光パルス(約80~100フェムト秒)を送達可能です。調節可能な波長範囲は、遠赤外から近赤外スペクトル領域(700~1000 nm)まで広がります。このレーザーのほとんどは、高出力アルゴンレーザーによる光学励起とともに作動し、水冷が必要です。チタンサファイアレーザーの操作と維持に伴う費用と複雑さから、このレーザーは主に多光子顕微鏡での使用に限られています。

まとめ

多光子および共焦点レーザー蛍光顕微鏡の主な違いは、補完的技法として使用されるレーザーの種類にあります。多光子顕微鏡のレーザーは、共焦点顕微鏡に導入されている小型の空冷式レーザーよりも高価で操作が困難です。

現在、顕微鏡のレーザー使用が急速に拡大している領域は、共焦点顕微鏡、光トラッピング、ケージド化合物および蛍光色素の放出です。輝線のスペクトル範囲が広い小型の固体レーザーの開発によって、これらの機器がさらに顕微鏡に利用されていくことでしょう。

寄稿者

Kenneth R. Spring - Scientific Consultant, Lusby, Maryland, 20657.

Thomas J. Fellers and Michael W. Davidson - National High Magnetic Field Laboratory, 1800 East Paul Dirac Dr., The Florida State University, Tallahassee, Florida, 32310.

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