Evident LogoOlympus Logo
アプリケーション

自動マクロミクロ撮影オプションを使用した3次元がんスフェロイドの薬効試験


はじめに

顕微鏡観察は、スフェロイドやオルガノイドへの抗がん剤の薬効を評価する効果的な方法の1つです。しかし、そのためのイメージングワークフローは、顕微鏡でサンプルを見つけてイメージングを行う必要があり、時間がかかる場合があります。

当社が開発した自動マクロミクロ撮影オプションは、この作業の効率を大幅に上げる画期的なイメージングモジュールです。自動マクロミクロ撮影オプションでは、手動の顕微鏡操作が自動のイメージングとオブジェクト検出によって代替されます。このアプリケーションノートでは、自動マクロミクロ撮影オプションを活用した3次元がんスフェロイドの薬効試験に関する事例をご紹介します。

材料と方法:サンプル調製

ヒト乳がん細胞株MCF-7細胞を、96ウェルUプレート(住友ベークライト社製 PrimeSurface)に2,000細胞/ウェルの割合で播種しました。培養3日目には、抗がん剤(パクリタキセル、5-FU、シスプラチン)をさまざまな濃度で添加しました。培養24時間後、Hoechst 33342、Propidium Iodide(PI)、Calcein-AMを添加し、1時間培養しました。すべての細胞核をHoechst33342で染色し、死細胞の核をPIで染色し、生細胞をCalcein-AMで染色しました。次に、FV3000共焦点レーザー走査型顕微鏡の自動マクロミクロ撮影オプションを使用して、観察を行いました。

自動マクロ~ミクロイメージングの仕組み

自動マクロ~ミクロイメージングでは、観察方法を事前に設定するだけで、以下の操作を自動的に実行できます。

まず、自動マクロミクロ撮影オプションにより、低倍率対物レンズ(1.25X~4X)を使用し、ウェル全体のオーバービュー画像(Z軸を含む)を取得します。取得した画像(マクロ画像)を基に、各ウェル内のサンプルの位置と厚さを自動検出します。次に、適切なイメージング位置(XYZ)を計算し、高倍率対物レンズを使用してサンプルの詳細な画像を取得します(ミクロ画像)。ミクロ画像で使用する対物レンズの視野よりサンプルが大きい場合は、複数の画像を自動貼り合わせします(図1)。

図1.マクロ~ミクロイメージングの概略図

図1.マクロ~ミクロイメージングの概略図
 

顕微鏡操作にかかる時間は15~20分ほどで、最初に観察方法を設定するときだけです。自動マクロミクロ撮影オプションの実行開始後は、イメージングが完了するまで顕微鏡システムから離れて別の作業を行うことができます。結果的に、顕微鏡の操作に費やす時間は大幅に減ります。さらに、ウェル間でサンプルの厚さや位置にばらつきがある場合でも、各サンプルに適したZ範囲でイメージングされます。これによりイメージング時間は速くなり、イメージングデータの量は削減されます。

マクロ~ミクロイメージングのステップ

マクロ~ミクロイメージングのステップ図

イメージング結果

各種抗がん剤を投与したMCF7スフェロイドは、Calcein-AMとPIで染色されて薬効が可視化されました。FV3000共焦点顕微鏡の自動マクロミクロ撮影オプションを使用することで、適切な位置でイメージングされた60ウェルの高解像度画像を迅速に取得できました。顕微鏡操作にかかった時間は15分だけでした(図2)。

図2.抗がん剤の薬効試験に対する自動マクロミクロ撮影オプションの適用事例

図2.抗がん剤の薬効試験に対する自動マクロミクロ撮影オプションの適用事例
 

従来の観察ワークフローでは、適切なイメージング条件を得るために、一度に1ウェルずつサンプルの位置を指定する必要がありますが、自動マクロミクロ撮影オプションを使用すれば、この作業が不要になります。さらに、イメージングにかけていた時間を別の作業に充てることで、作業効率を大幅に向上させることが可能です。

解析結果

自動マクロミクロ撮影オプションで取得した画像ファイルをNoviSight™ 3次元細胞解析ソフトウェアで開くと、マルチウェル画像を一度に3Dで解析できます。

ここでは、すべての核をMCF7 Hoechst33342の輝度で検出しました。薬効を評価するため、Calcein-AMとPIの輝度に従って、検出された核は生細胞または死細胞に分類できます。その結果、単一細胞レベルで各抗がん剤の薬効を評価することに成功し、既知のレポートとの一致が見られました(図3および図4)。

図3.Calcein-AM/PIの輝度を使用した生細胞/死細胞分類に対するNoviSightの解析

図3.Calcein-AM/PIの輝度を使用した生細胞/死細胞分類に対するNoviSightの解析
 

図4.NoviSight解析を使用したスフェロイド生存率の結果

図4.NoviSight解析を使用したスフェロイド生存率の結果
 

まとめ

自動マクロミクロ撮影オプションを使用すると、顕微鏡システムを約15分操作後に、マイクロプレートの60ウェルを適切な画像位置でイメージングできました。

一度に1ウェルずつの手動イメージングでは、顕微鏡システムの前で断続的に(イメージング時間を含めて)6時間以上作業する必要があると見込まれます。それに対し、自動マクロミクロ撮影オプションは顕微鏡システムを約15分操作するだけで、イメージング完了まで別の作業を行えるということになります。

さらに、自動マクロミクロ撮影オプションをNoviSightソフトウェアと組み合わせれば、マルチウェル画像をまとめて解析できます。この設定によって、マルチウェルでのスフェロイドサンプルの画像取得から解析まで、シームレスなワークフローが実現します。

著者

Mayu Ogawa
R&D、オリンパス株式会社
 

このアプリケーションノートに関連する製品

共焦点レーザー走査型顕微鏡

FV4000

  • 革新的なダイナミックレンジで個体/組織レベルから細胞内微小構造のレベルまでマルチスケールのイメージング
  • TruSpectral分光検出器による、最大6CHのマルチプレックスイメージング
  • 固定細胞/生細胞のイメージングのために改良された高速・高解像スキャナー
  • より深部まで、高感度でイメージングが可能な先駆的NIR蛍光イメージング
  • SilVIRディテクター™により信頼性が高く、再現性が高い画像データを安心して取得
  • 405nmから785nmにわたり業界最大*の最大10本のレーザーを搭載可能

*2023年10月時点、当社調べによる。

3次元細胞解析ソフトウェア

NoviSight

NoviSight 3D細胞解析ソフトウェアは、マイクロプレートベースの実験において、スフェロイドや3Dオブジェクトの統計データを提供します。3Dで細胞活性を定量化でき、まれな細胞事象の取得が容易になり、正確な細胞数の取得、検出感度の向上が実現します。NoviSightソフトウェアで処理可能なイメージング法は多岐にわたり、ポイントスキャン共焦点イメージング、2光子イメージング、スピニングディスク共焦点イメージング、超解像ライブセルイメージングなどがあります。

  • 構造体全体から細胞内機能まで高速に3D画像識別
  • 正確な統計解析
  • すぐに使用できる各種デフォルトアッセイが付属しているほか、独自設計も簡単

をブックマークしました。

ブックマークを表示閉じる

Maximum Compare Limit of 5 Items

Please adjust your selection to be no more than 5 items to compare at once

このページはお住まいの地域ではご覧いただくことはできません。

このページはお住まいの地域ではご覧いただくことはできません。