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暗視野観察とは?

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クモノスケイソウの暗視野画像

暗視野観察は、偏斜照明を利用して、通常の照明条件下では良好なイメージングが難しい標本のコントラストを強調する手法です。

直接光がコンデンサーの不透明な絞りで遮断されると、斜角から標本を通過した光が回折、屈折、反射して顕微鏡の対物レンズに入射し、暗い背景の中に標本の明るい画像を形成します。

暗視野観察では高いコントラストが得られるので、明視野観察では背景と区別しづらい標本単に際立たせることができます。以下に暗視野観察の作例を紹介します。
 

蝶カイコ幼虫の呼吸孔と気管

右:カイコ幼虫の呼吸孔と気管。透過型顕微鏡を使って暗視野条件下で観察すると、木目状の小さな断片が美しい様相を呈します。
左:蝶。蝶が属する鱗翅目の羽の鱗片パターンは幅広い種類に及ぶことから、蝶は昆虫界で最もカラフルな種のひとつであると言えます。この画像は、蝶の羽の大部分を覆う多数の微細な鱗粉を示しています。この羽の鱗粉画像は暗視野観察の低倍率(50倍)で取得しました。
 

暗視野観察の仕組みについて

暗視野照明には、通常は標本を通過したり取り囲んだりする光のほとんどを遮断し、斜光線だけを標本にあてることが必要です。

アッベ暗視野コンデンサーのトップレンズは球面状に凹んでいるので、トップレンズから入射した光線に、標本面上の中心に焦点を合わせたまま倒立した中空光錐を形成させることができます。標本がなく、コンデンサーの開口数が対物レンズの開口数より大きい場合には、斜光線は交差して対象物に届かなくなるため、これらの領域は暗いまま残されます。

標本(特に非染色、非吸光性のもの)をスライドガラス上に置くと、斜光線が標本にあたり、標本の構成要素(細胞膜、核、細胞小器官など)による回折、反射、屈折のいずれか、またはこれらすべてが生じます。これにより、かすかな光線が対象物に入射できるようになり、暗い背景に浮かび上がる明るい標本画像が取得できます。
 

暗視野観察に必要な機器

実験用の明視野顕微鏡のほとんどは、簡単な切り替えで暗視野観察を行えます。もっとも手軽な方法は、現在お使いのコンデンサーを暗視野照明用に設計されたものに交換することです(図1)。

これらのコンデンサーは比較的単純な構造でありながら、暗視野観察に必要な照明光の光錐形成に要求される高い開口数(NA)を備えています。しかし、顕微鏡を日常的に使用している場合、照明の種類に応じてコンデンサーを交換するのは現実的ではありません。

多くのコンデンサーは、照明の円錐を形成できるインサートを収容することができます。これらのインサートは、専用の暗視野コンデンサーほど高いNAを提供できないため、一部の組み合わせての仕様ができない対物レンズもありますが、同一のコンデンサーで複数の観察方法を選択することが可能になります。
 

暗視野観察用に設計されたコンデンサー

図1. 暗視野観察用に設計されたコンデンサー
 

優れたイメージング技術である暗視野観察

暗視野観察の適切な条件下でイメージングされた標本は華やかに見えます。多くの場合、明視野観察ではコントラストが非常に低い標本も、暗視野観察ではキラキラと輝いて見えます。

暗視野照明は、輪郭、端部、境界、および屈折率勾配の観察に最も適した照明です。暗視野観察に適した標本としては、微小な、生きている水生生物、ケイ藻、小さな昆虫、骨、繊維、毛、未染色の細菌、酵母、組織培養細胞、プロトゾアなどが挙げられます。

非生物学的な標本としては、鉱物結晶や化学物質の結晶、コロイド性粒子、粉塵カウント標本、さらには小さな混在物を含んでいる、多孔性に違いがある、屈折率勾配があるといったポリマーやセラミックの薄切片が挙げられます。

以下は暗視野観察で取得した作例です。

クモノスケイソウ画像アメリカボダイ樹液晶DNA

左:この美しいクモノスケイソウ画像は、Mortimer Abramowitz氏がオリンパス顕微鏡を使用し撮影しました。顕微鏡スライドガラスと対象物の間、対象物とコンデンサーのフロントレンズの間にそれぞれイマージョンオイルを使用し、高開口数の暗視野コンデンサーを使って取得されました。

中央:アメリカボダイ樹。染色標本は暗視野観察と相性がよく、暗い背景にカラーで描写された美しい画像が得られます。この顕微鏡写真は、暗視野照明下のアメリカボダイ樹の染色された薄切片を示しています。

右:液晶DNA。この非常に濃縮されたDNA溶液は、一連の液晶相転移を受けて高密度に圧縮された六方相を形成しています。この顕微鏡写真は、10倍対物レンズを装着した複式顕微鏡を使って暗視野照明で撮影されています。

暗視野観察は標本の内部構造の詳細観察にはあまり適しませんが、暗視野観察を最大限に生かしたいときに考慮すべき条件が他にもあります。
 

暗視野顕微鏡を使用する際の課題

焦点面の上下にあるものが光を散乱させて画質の劣化の原因になる場合があるため、暗視野顕微鏡用の標本を準備する際には注意が必要です。スライドガラスをきれいに保つことはイメージングにおける大切な要素ですが、暗視野観察では異物のひとつひとつが照明され、目的のものが見えにくくなることがあるため、特に重要となります。

このほか暗視野観察では以下の問題が発生する場合があります。

  • 照明が不十分で標本を可視化できない、または標本をかすかにしか可視化できない

    光錐を形成するために光のほとんどが遮断されるので、暗視野観察では適切にイメージングするために多量の光を利用しています。そのため、光量を上げる必要がありますが、標本によっては、多くの光を長時間照射することが適さないため注意が必要です。
  • スライドの視野の中央に暗点があるが、周辺にある対象物は良好に照明されて正常に見える

    これは一般に、コンデンサーの位置合わせが不適切、または焦点がずれている場合に起こります。コンデンサーの心出しと焦準を行うことで、この問題に対処することができます。照明にムラがあるようにみえるが、標本には焦点が合っているというときは、ほとんどの場合にこの方法で改善できます。
  • 背景に色がつく、または背景灰色っぽくなり不規則に照明される

    多くの場合、これは標本が薄過ぎるか、スライドが汚れていることが原因と考えられます。標本を設置しなおすことで解消できます。
     

暗視野観察の利点

暗視野観察には多くの利点があります。高いコントラストが得られるので、明視野では背景と区別しづらい標本が見やすくなります。多くの明視野顕微鏡は暗視野照明用に構成することができるので、容易に切り替えることができます。顕微鏡に関する利点のほかにも、暗視野画像では標本が美しく照明されるので芸術作品のようにさえ見えることがあります。
 

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プロダクトマネージャー

Alec De Grand氏は、Evidentのライフサイエンス用バーチャルスライドスキャンおよび正立顕微鏡のプロダクトマネージャーです。10年以上Evidentに勤務し、その間、臨床製品、マーケティングイニシアチブ、イメージングコース、展示会などに携わりました。

2020年12月17日
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